「開発」が剥奪を生み出すとき:コロンビアにおける鉱業を考える

スザンヌ・マクニール
2007年8月13日
ColombiaJournal原文


2年前、「貧困を過去のものに(Make Poverty History)」キャンペーンが世界に広まったとき、グローバル・サウスの債務免除と貧困救済、開発というメッセージにはたくさんの有名人の署名が添えられていたが、これら一連のメッセージの信憑性を支えていたのは、著名な経済学者ジェフリー・ザックスの見解だった。彼の著書「The End of Poverty: Economic Possibilities for Our Time」は国際社会が注目を払うよう、時流に乗って問題を再構成していた。確かに、この領域で活動している人々の多くは、開発と援助のキャンペーンに新風を吹き込むためにこの機会を利用したが、インドの物理学者で哲学者でもあるヴァンダナ・シヴァはザックスの分析を支持することの危険性を警告していた。

貧困に苦しむ人々は単に産業革命が生み出した富から取り残された人々であるというザックスの見解に言及しながらシヴァが行なった反証は、富と貧困について、単純だがそれとはまったくことなる見解を提示するもので、経済発展の信者たちの基盤をゆるがすものだった。「ザックスは貧困がどこから来るのかわかっていない」と彼女は言う。「貧しい人々は、『取り残された』人々ではない。略奪された人々である。北を富ませ、南を貧しくしたのは、第三世界の資源と市場に対するこの暴力的な略奪なのだ」。

コロンビア北部のギアヒラでは、貧困の起源と永続化に関するシヴァの指摘が恐ろしいまであからさまな現実となっている。世界最大の露天掘り石炭鉱山であるセレホン鉱山では、操業が開始されてから現在までずっと一貫して、遙か昔から生活を土地と川に依存していたアフリカ系コロンビア人とワユウ先住民の生活と軋轢を引き起こしてきた。鉱山の採掘操業範囲が拡大しているため、彼らの生きる糧は今や脅かされている。

こうした状況でお馴染みのように、セレホンで操業している多国籍企業は、地元住民のコミュニティに対して有利な立場を享受しており、アフリカ系コロンビア人の暮らすタバコの町を破壊しながら、家を失った人々が集団で再定住できるような状況を誠実に実現しようともしていない。この地域に残るコミュニティにとって、浸食してくる露天掘り鉱山に直面する困難は、タバコと同じように町を破壊されて家を追放されることへの恐怖だけではない。炭鉱がもたらす息を詰まらせる砂ぼこり、かつては村々の生命線だった川の汚染、地下水面の低下、農地の劣化、炭鉱会社が雇い入れた治安部隊が人々に加える嫌がらせなどが、人々の安寧よりも炭鉱操業のような環境を破壊する活動を重視し、そこから利益を得る政治家たちやビジネス界の指導者たちの存在を日々思い起こさせている。

政治家と経済開発テクノクラートたちは、セレホン鉱山のようなプロジェクトを正当化する理屈として、鉱山がギアヒラにもたらす「進歩」は、GDPや海外投資の増大、炭鉱労働の雇用創成、セレホン財団による社会消費のPR的増大などといった指標にもとづき眼に見えるものであることをあげる。実際には、仕事は外部の人々が請け負い、セレホン財団が行う保健医療や教育プログラムへの投資はリオアチャやバランカスといったギアヒラの都市部に限られていて、炭鉱近くの農村部コミュニティにはまったく届いていない。炭鉱に近いために起きる皮膚や呼吸器の疾患に対してまともな医療を受けることのできる人はほとんどいない。

既にひどい状況にさらに追い打ちをかけるかのように、セレホン財団は、国際社会の目にはっきりわかるような文化的プロジェクトにだけ投資している。同社はワユウ先住民の代表を雇い入れ、ワユウナイキ語の辞書の印刷を補助するといったワユウ文化の強化に貢献する活動に従事していると主張する。けれども、炭鉱の利益と対立するような文化的側面については、地元の文化とその重要性をただ無視し、その存在すら否定するのである。

同社の環境影響宣言では、言語という道具を使って、「調査対象地域における人々の生活は十分発達していない・・・・・・鉄道に沿った地域に唯一住むウリビア族は、小さな先住民コミュニティで原始的なインフラしか持っていない」と主張し、あらゆる手段でワユウとアフリカ系コロンビア人の文化を軽視しその品位を貶めようとしている。これらのコミュニティを、小さい、孤立した、取るに足らないものとして追い払うことで、会社は地域とコミュニティの破壊を、炭鉱操業のためには十分容認できる程度の犠牲として正当化する。

過去30年間の炭鉱開発を通して、ギアヒラの状況については、地域の人々もコミュニティも取るに足らないもので保存に値しないという会社側の主張が支配的な言説を構成していた。セレホンにはPRも通信の資金もなかったため、地元コミュニティは地元以外のところ----コロンビア社会の主流派や国際社会----に広く見解を知らしめるために遙かにがんばらなくてはならなかった。それでも、タマキトスのワユウ・コミュニティの村人たちは、チャンクレタ、ロチェ、パティージャ、そして既に破壊されてしまったタバコのアフリカ系コロンビア人とともに、炭鉱の拡大に抵抗するため自分たちの組織化を進めてきた。

以前タバコに暮らしていたエミリオ・ペレスは、土地が炭鉱に飲み込まれ、人々が強制移住させられる前の生活について語った。「生活は豊かでした。私たちは分け合い、持っているものを分け合ったので、誰も苦しむことはありませんでした」と彼は説明する。「町のそばを川が流れていました。土地もあり、自由に地域を歩き回りました。けれども、この9年間は、私たちには耕す土地がありませんでした。家を追われ、住むところを失ったのです」。

チャンクレタ地区委員会の代表ウィルマン・パルメサノもペレスと同じ気持ちで自らのコミュニティについて語っている。チャンクレタもまた、タバコと同じ運命をたどる脅威にさらされている。「私たちの歴史について知ってもらいたいのです。鉱山がダメージをもたらし始める前、私たちはここでとても生産的なコミュニティを営み、平和に暮らしていました」と彼は言う。「1980年代に、鉱山企業が土地を買い占め始め、今では、私たちには作物の種を植える場所も動物を育てる場所も残されていません。生産的なコミュニティだったのが、赤貧のコミュニティになってしまいました」。

彼らが語る話は、聞き届けられれば、セレホンの「世界に石炭を、コロンビアに進歩を」というプロパガンダ・キャッチフレーズに対抗する力強い証言であり、反論である。チャンクレタのコミュニティ行動委員会の代表エデル・アレゴセスは、「世界に石炭を、コロンビアに進歩を、というキャッチフレーズが語られてきました。そうだとすると、私たちの町チャンクレタとロチェ、タバコは一体どの国にあるのでしょうか? セレホンはラテンアメリカ最大の炭鉱の一つですが、ここに住む家族のほとんどは、一日一食しか口にできないのです」。

コロンビアを見ても第三世界全体を見ても、残念ながら、グアヒラが、たまたまある企業が非倫理的に操業しているという孤立した事例であるわけではない。実際、グアヒラは、国際通貨基金や世銀、WTO、さらに数え切れない国際組織やシンクタンク、有力な政府が、グローバル・サウスに対して、しばしばサウスの政府が抱える巨大な債務を道具に使いながら押しつけてきた、いわゆる「開発」と呼ばれるもののモデルを集約している。

これらの組織が主張する「解決」は貧困を悪化させている。これは驚くべきことではない。というのも、これらの組織が押しつける処方箋は、人々の実際の福祉よりも企業の利益規模を反映する経済指標を増大させるためのものだからである。そこにモデルの致命的なイカサマがある。海外投資家の利益を増やすためには、政府の規制を弱め、それによってしっかり確立されたコミュニティや持続可能な文化を破壊する企業の略奪的な行為に対する防衛を剥奪しなくてはならないからである。

グローバル・ノースの国に住む私たちが、「貧困を過去のものに」キャンペーンの背後にある善意に本当に誠実であるならば、そもそも貧困を生み出す体制の中で私たち自身が果たしている役割についてもっと率直に考える必要がある。グアヒラのコミュニティに暮らす人々の苦しみが示すように、短期的にしか雇用を創成しない、エコロジカルには破滅的な産業に利益をもたらすために、持続可能な文化を破壊し尽くすことは受け容れられない。最も基本的なレベルで、経済開発政策は人々に損害を与えないものであるべきである。そして、シヴァが、南の貧困を軽減しようとする北の「慈善的」行為について指摘しているように、「それは我々がさらにどれだけ多くを南に提供できるかではなくて、南からの略奪をどれだけ減らせるかである」。

スザンヌ・マクニールはコロンビア・ジャーナルの編集委員。


■World Peace Now Tokyo 2007

日時:2007年9月15日(土)11:00〜17:00
場所:芝公園4号地(JR「浜松町」徒歩12分、
   地下鉄三田線「御成門」徒歩2分、
   地下鉄大江戸線「赤羽橋」徒歩2分)
主催:World Peace Now

■辺野古・東村 高江(ひがしそん たかえ)

米軍再編ってどうよ?のページに東村 高江の紹介があります。また、基地建設阻止 おおかな通信やん>ばる東村 高江の現状もご覧下さい。

辺野古・高江とも状況は緊迫しています。時間を作って現地へ来てくださいとの要請が回っています。

カンパ振込先
振込先 郵便振替口座 01700-7-66142
加入者名  ヘリ基地反対協議会

■あの戦場体験を語り継ぐ集い

日時:2007年9月21日(金)午後1時〜4時
場所:東京都千代田区・日比谷公会堂
交通:地下鉄・日比谷駅
入場料:無料
連絡先:戦場体験放映保存の会
    〒150-0047 東京都渋谷区神山町17‐1
    TEL:03-3465-6066 FAX:03-3465-1671

■どがんすっとね? 日本ば! パレスチナば! 佐賀/唐津

ジャーナリストの土井敏邦さんを囲んでパレスチナと日本を考える集いが全国で開催されています。佐賀では9月16日、唐津では17日。詳しいことは、チラシをご覧下さい。

■「どうなる9条改憲? どうする9条実現!」集会

日時:2007年10月6日(土)
   午後1時30分〜4時30分(開場午後1時)
場所:豊島区民センター(コア・いけぶくろ)6階文化ホール
   東京都豊島区東池袋1-20-10
   電話  03-3984-7601
   交通機関 JR山手線池袋駅東口下車 徒歩約5分
講師:澤地久枝(作家、9条の会呼びかけ人)
   鈴木一誌(グラフィックデザイナー)
発言:川田龍平・北原博子
資料代:800円
主催:市民意見広告運動/市民の意見30の会・東京

■チェチェン・イベント「アンナ・ポリトコフスカヤ追悼集会」

日時:9月22日(土)13時30分〜16時30分
  (開場13時00分)3時間(休憩1回)
会場:東京都・文京区民センター2A (210名収容可)
参加費:500円(予定)
共催:チェチェン連絡会議 市民平和基金
   チェチェンニュース編集室
   ハッサン・バイエフを呼ぶ会
   社団法人アムネスティ・インターナショナル日本

関連して、チェチェンをフォローしてきたジャーナリストの林克明さんが『プーチン政権の闇』(高文研・1200円)という本を出版しました。改めて詳しく紹介したいと思いますが、チェチェン/ロシアについて知るだけでなく、「対テロ戦争」をはじめとする現代の世界的な状況を知るために、小さいながら、とても重要な本です。是非皆様、お読みください。

■パレスチナ映画『シャティーラキャンプの子どもたち』上映と講演

日時:9月30日(日)午後1時45分〜(開場1時30分)  午後1時45分〜2時35分 『シャティーラキャンプの子どもたち』上映
 午後2時40分〜3時40分 岡真理さんの講演
 『大地がぼくらに閉じてゆく 国民ならざる者たちの60年』
 質疑応答など
 (午後4時10分頃 終了予定)
会場:ひと・まち交流館 京都 大会議室(2階)
   (河原町五条下がる東側)
案内:http://www.hitomachi-kyoto.jp/access.html
 京阪「五条」駅下車徒歩8分/地下鉄烏丸線「五条」駅下車徒歩10分
 会場TEL:075-354-8711
参加費:一般1000円・学生500円
主催:ピースムービーメント実行委員会
問い合わせ:
 TEL:075-751-0704(山崎)夜間21:30〜22:30
 E-mail:ANC49871@nifty.com

■パレスチナ「パラダイス・ナウ」自主上映会

日時:2007年10月20日(土)
   13時20分開場・13時40分上映開始
   18時00分開場・18時20分上映開始
場所:千葉県千葉市生涯学習センター・ホール
料金:一般1500円(前売1200円)
   学生1000円(前売800円)
主催:「パレスチナへのまなざし」実行委員会


   (事務局・シビックアクション千葉)

■柏崎刈羽原発の運転再開に反対する署名サイト

おやすみなさい、柏崎刈羽原発をご覧下さい。

■アジアフォーカス福岡国際映画祭2007

9月14日から24日、福岡でアジアフォーカス福岡国際映画祭2007が開催されます。
,br> 東ティモール独立闘争を指揮したシャナナ・グスマンの姿をとらえた「ここに陽はのぼる」、イランに住むアフガン難民の男を描いた「地の果てまでも」、フセイン政権崩壊直後のイラクをさまよう少年を描いた「砂塵を越えて」、ベリーダンスに夢中になる3人の主婦を描いた「マイ・マザー・イズ・ア・ベリーダンサー」、そして新藤兼人が自らの戦争体験を証言した「陸に上がった軍艦」、ある殺人事件を取材する内にハンセン病患者差別にたどり着いた「新・あつい壁」などの力作が目白押しだそうです。
益岡賢 2007年9月15日

一つ上] [トップ・ページ