コロンビアはベネズエラの社会政策に学ぶことができる

ギャリー・リーチ
2006年6月26日
コロンビア・ジャーナル原文


米国が支援するプラン・コロンビアが5年以上実施され、アレバロ・ウリベ大統領の「民主的治安」政策が4年間実施されたのちのコロンビアでは、依然として大多数の人々が貧困の泥沼にとどまったままである。これらの壮大な政策はいずれも、何よりもまず軍事的な性格を持っており、わずかな社会投資は、ほとんど表面を取り繕うためのごまかしに過ぎない。両プランともに、経済的側面の骨子は新自由主義的構造調整プログラムで、これによりもたらされためざましい経済成長は、コロンビア人のほんのわずかを潤しただけである。一方、64%----地方部では85%----のコロンビア人は、貧困に追いやられたままである。それと鋭い対比をなすのが、ベネズエラで、ウーゴ・チャベス大統領は、貧しいベネズエラ人の生活水準を改善するだけでなく、ベネズエラに暮らすコロンビア人移民の生活水準をも改善するような社会投資を強調してきた。

ベネズエラと違ってコロンビア政府は武装ゲリラと戦わなくてはならないことはあるものの、軍事的な側面に力を注いでいるので効果的な社会プロジェクトを実施することができないというのは説明にならない。米国はこの5年間に47億ドルという多額の資金をプラン・コロンビアにつぎ込んできたが、その80%は軍事援助だった。その結果、コロンビアは、イラクとアフガニスタンという占領下に置かれた国を除けば、イスラエルとエジプトに次ぎ米国援助の第三の受け取り手となった。

プラン・コロンビアを計画立案した者たちは、意図的に、コカ栽培を意味のあるまでに減らしてそれを持続するためには、遠隔のコカ栽培地域での社会開発と代替生活手段の開発の強化が不可欠であるという証拠が増えていることを無視し、軍事的な農薬散布キャンペーンに力点を置いたが、結局それは失敗した。プラン・コロンビアの経済部門は、単にいMFの貸付と、それに対応する新自由主義的政策の適用とからなり、その結果、コロンビアでも他のラテンアメリカ諸国と同様の社会的・経済的帰結がもたらされた。つまり、その政策は貧困を軽減できず、貧富の差がさらに広がっただけであった。

プラン・コロンビアに社会的投資が欠けいること、また新自由主義を強調していることは、コロンビア政府が武装ゲリラと闘争を続けているという事実からくるものではなく、ブッシュ政権とウリベ政権のイデオロギー的仕立てによるものである。結局のところ、活動的な武装ゲリラが存在しない他のラテンアメリカ諸国でも、新自由主義のもとで社会投資はほとんどなされてこなかったのだから。

ウリベ大統領の「民主的治安」政策は、社会投資を犠牲にして軍事作戦を強調しているプラン・コロンビアをそのまま写しとったものである。政府の統制下にない地域に社会的・経済的政策を適用するのは難しいが、ウリベ政権は、政府が完全に掌握している地域でも、社会問題を重視することに後ろ向きだった。その結果、政府は、明らかに政府が統制しているコロンビアの少し大きな町や都市でも、貧困を軽減してこなかった。

同時に、コロンビア軍のプラン・パトリオタ攻撃によりこの2年間は政府の統制下に入ったコロンビア南部の町や村でも、目に着くような社会投資はなされていない。ワシントンを拠点とする国際政策センターのアダム・イサクソンは、「コロンビアの治安状況を改善するために最も大切な社会投資を増やすことを、ウリベはほとんどまったくしていない」と述べる。

ウリベ政権がコロンビアで最も不利な状況にある市民を支援するための社会投資に後ろ向きであることは、政府2005年予算で、解隊した準軍組織に割り当てられた予算と、国内避難民向けの予算とを比べてみるとはっきりとわかる。国家計画庁によると、解隊した準軍組織に割り当てられた予算は、一人あたり2800ドルにのぼるが、コロンビアの国内避難民----その多くは現在政府に雇われているまさに準軍組織の犠牲となった人たちである----は一人あたりわずか250ドルにすぎない。

国内で家を追われた人々は、貧しい生活に追いやられた市民と同様、コロンビアの新自由主義的経済成長により創り出された富が「トリクルダウン」するのを待たされることになるのは明らかである。けれども、進展はあまりよろしくない。ラテンアメリカの大多数の地域が、その「トリクルダウン」効果を20年近くも待ち続けたが、結局何も起きなかった。

対照的に、ベネズエラ大統領ウーゴ・チャベスは社会投資を政策の柱とした。これらの政策は、貧しいベネズエラ人だけでなく、国境を越えてベネズエラに逃げてきた300万人ものコロンビア人移民の多くに恩恵を与えてきた。「ここでは、失業中のシングル・マザーが助けを求めに行く場所があります。コロンビアには何もありませんでした」と、コロンビア北部海岸から移住してきたある女性は語る。ベネズエラの政治アナリストであるアルフレド・アンソラによると、「これらの移民は、チャベスが提供する医療・栄養プログラムなどを享受している」という。こうした社会投資を芽にしたために、コロンビア北部のスクレ出身の移民で42歳いんあるフレディ・ベリオは、「社会的・政治的排除を終わらせるために、コロンビアにはチャベスのような指導者が必要だ」と断言する。

チャベス政府の社会投資の結果、貧困生活を送るベネズエラ人の比率は、1998年の50%から2005年には42%に減った。さらに、政府補助を受けた食料品店や保健医療、低所得者向け住宅プロジェクト、マイクロクレジットなどの、政府予算による社会プログラムのおかげで、貧困層の人々の生活も劇的に改善された。ワシントンに本部を置く経済政策研究センター(CEPR)が指摘するように、「1999年以来の貧困軽減率は、現金収入だけを測定したものである。けれども、それは、ベネズエラの貧しい人々の生活水準がどれだけ変わったかを本当に反映したものではない。というのも、この数年のうちに、現金収入のかたちをとらない福利とサービスが大きく変わったからだ」。

ベネズエラの事例は、貧困を軽減するために社会政策がどれだけ有効かを示すだけでなく、そうした政策が貧しい人々をエンパワできることを示している。貧困地域出身で以前は失業していたあるベネズエラ人女性は、政府のローンにより設置された女性だけの、労働者が所有する織物協同組合で働いている。彼女は昨年、私に、「私たちはもう家に籠もって這いません。私たちはビジネスウーマンになりました」と述べた。対照的に、プラン・パトリオタのもとでコロンビア軍が「解放」したコロンビア南部の町の住人は、繰り返し、自分たちの町に政府は軍を常駐させているにもかかわらず、何の社会投資もなされないと不満を語った。その結果、これまで永いあいだ政府から無視されてきた地方の紛争地域に住むコロンビア人たちの心をつかむことに政府が困難を感じていることは驚くことではない。

ブッシュ政権とウリベ政権がともに強調する軍事主義と新自由主義は、貧しい暮らしを送るコロンビア人の大多数の状況を改善してこなかった。コロンビア政府の石油収入はベネズエラの収入と比べるとかなり少ない----とはいえこれは新自由主義的構造調整の結果適用された安い採掘権料が一因である----が、過去6年間に、米国とIMFから100億ドル以上を受け取っている。しかしながら、米国政府は、この援助が、確実に、コロンビアで軍の力を使って新自由主義的政策を適用するための資金に使われるようにしたのである。

それに対してベネズエラは、予算を、社会的・経済的政策に割り当て、貧しい人々に力を与え、社会のより広範な民主化を促そうとしてきた。ブッシュとウリベは、ベネズエラの事例が示す教訓を学びたいとは思っていない。結局のところ、新自由主義は、周辺化された人々の力を付け、民主主義を促すこととはまったく無関係である。新自由主義最大の目的は、少数の人が恩恵を被るような経済成長を達成することにあるのだから。


コロンビアの情報に目を通し、日本の状況を見るにつれ、最近ますます、コロンビアの現状に日本のこれからの姿が映されている感じを強くしています。

■チェチェン関係イベント

7月半ば、チェチェン人医師ハッサン・バイエフ氏が来日し、各地で連続講演を行う予定です。詳しくは、ハッサン・バイエフを呼ぶ会のサイトをご覧下さい。バイエフ氏は酷なチェチェンの戦場で、敵味方、民族、性別、宗教の違いにかかわらず、すべての傷ついた人を救った人で、日本語では『誓い』(アスペクト)でその活動を読むことができます。ぜひみなさんご参加下さい。

■イラク関係署名ページ

ハディーサでの虐殺、最近では米兵が女性を強姦したのち一家を惨殺した事件への調査が開始されるなど、イラクを侵略し不法な占領を進める米軍の非人道的犯罪は恐るべき状況になっています。こうした状況を受け、ブッシュ大統領に署名を付けて申し入れを送る計画が立ち上がりました。主張はただ一つ「殺すなかれ」とのこと。

申し入れの日本語は、イラク・ホープ・ダイアリー申し入れ日本語版にあります。

これをご確認の上、署名のサイトに行って、署名をお願いいたします。署名サイトにアクセスしましたら、

(1) 「Step 1. Enter your name:」にお名前を(ローマ字で)入れます。匿名希望の方は、その下の「Display in public list as 'Anonymous'にチェックを入れます。そして「Sign Now」をクリック。

(2) 情報を入力するページに移動します。左上の「Select」で「Mr, Ms, Mrs, Dr」のいずれかを選び、最低限、e-mailとState(米国外の方は「(non-USA)」を選びます)、Postal Code(郵便番号)、Country(日本の方は「Japan」を選びます)を選びます。これだけでOKですが、Please add your comments here:の欄に「No more killings!」とか入れてもよいでしょう。そしたら「Preview」を押します。

(3) ページが変わります。よろしければ、「Add My Signature!」を押します。これで、署名がおしまいです。

■平和への結集シンポジウム

7月7日(金)午後6時30分より(開場は6時)、日本教育会館大ホールで、「平和への結集をめざす市民のシンポジウム」があります。詳細は、平和への結集をめざす市民HPをご覧下さい。
益岡賢 2006年7月3日

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