FARCの訴追

ポール・ウルフ
2006年5月3日
コロンビア・ジャーナル原文


米国国務省は、コロンビアの戦争に関与している武装グループを解体する秘密の方策を導入した。少なくとも、国務省はそう信じている。準軍組織コロンビア自警軍連合(AUC)の2万8000人の解隊は、指導者たち----とくにサルバドーレ・マンクソとドン・ベルナ----を米国に身柄引き渡しすると脅した結果であると考えられている。身柄を引き渡されることへの恐れが、恩赦の約束とあいまって、多数の準軍組織兵士に武器を置かせ、自分たちの犯罪を告白させ、コロンビアの秩序を回復するために政府を信頼するようし向けたとされる。現在、同じ戦略が、コロンビア内戦(ラ・ビオレンシア)の中で生まれ、キューバ革命に大きく影響されたゲリラであるコロンビア革命軍(FARC)にも適用されている。

この数十年のあいだにFARCは大きくなった。コロンビア政府と米国政府が協力して、死の部隊を使ったり、支持者たちを強制追放したり、監視と対テロ向けの最新技術を使って、FARCを破壊しようとしたにもかかわらず、である。3月29日、米国司法長官アルベルト・ゴンザレスは、FARCの指導者たちトップ50人を麻薬に関する罪で米国で訴追すると発表した。この訴追によると、FARCはコロンビアのコカ栽培者から税金を徴収しているだけではなく、コカイン精製施設を運営し、支配地域における麻薬購入を独占しているという。この訴追は、米国の歴史の中で最大のものであると言われている。

ゴンザレスおよび司法省の記者会見によると、FARCは世界のコカインの50%を扱っており、これは250億ドル以上に相当するという。しかしながら、この膨大な数値は、FARCの実際の収入に合致しない。FARCの兵士数は1万8000人と推定されている----そうならば、ゲリラ一人あたり100万ドル以上の収入ということになる。ジャングルに住み、ハンモックに暮らし、ユッカとコメ、チチャロン(豚の脂)を食べて暮らす人々にとっては巨額の金である。

コロンビア政府国土省の情報財政分析局は、異なる推定をしている。この推定によると、FARCは、収入の30%を麻薬から得ているという:年間850万ドルをコカ農家の「貢献」によっており、約300万ドルをコカイン売却から得ている。この数値を、FARCがコカイン・ビジネスに関わっていたと米国が主張する10年を考慮して10倍したとしても、米国の推定は、コロンビア政府の推定よりも200倍も大きい。米国政府は、FARC指導者たちの逮捕につながる情報に7500万ドルの償金を提供すると述べている。

今回のFARCの訴追は、2002年に行われたFARCメンバーネグロ・アカシオ訴追に取って代わるものである。後者は、この4年間、米国ワシントンDCの地方裁判所でそのままになっている。FARCのエスタド・マヨール(中央司令部)が関与していることを示すと言われる新たな証拠は、欧州された文書、目撃証言、傍受されたラジオ通信からなっており、それらは、FARC指導陣が大量のコカ・ペーストとコカインの生産および輸送に関与していることを示すとされる。しかしながら、物的証拠は、2002年の訴追と同じで、探知できる量のコカインを含む5キロないしそれ以上の物質である。

ネグロ・アカシオのほかにも、麻薬とテロリズムにより、米国ではFARCメンバー数人がすでに裁判を受けている。カルロス・ボラス、シモン・トリニダード、オマイラ・ロハス(「ソニア」)である。米国麻薬取締局(DEA)によると、ほかに3名が、コロンビアの刑務所からの身柄引き渡しを待っている状態にあるという。すなわち、ホルヘ・エンリケ・ロドリゲス・メンディエタ(「イバン・バルガス」、エルミンソ・クエバス・カブレラ(「ミンチョ」)、フアン・ホセ・マルチネス・ベガ(「ヘンティル・アルビス・パティノ」)である。この3名は、数千キロのコカインの生産と取引に個人的に大きく関わったとして告発されている。

コロンビアが彼らの身柄引き渡しに同意すると考えられるかも知れないが、コロンビアは1982年の米国との身柄引き渡し条約を承認しておらず、身柄引き渡しを行うか否かについては裁量権を持っている。コロンビアは、身柄引き渡しの脅威を使って、FARCに解散のプレッシャーを賭けるかも知れない。3月のゴンザレスによる記者会見では、コロンビア大使アンドレス・パストラナが最初に述べたのは、「FARCゲリラの指導者50人を訴追するという決定は、米国司法省により行われた」というものであった。これは、FARCが関心を示せば、コロンビア政府は身柄引き渡しをネタに交渉の準備があることを示唆しているように見える。

FARCの指導者たちが身柄引き渡しを恐れており、解散を説得できるという考えを抱いているのは米国であるが、コロンビア政府はそう考えてはいない。これは明らかに米国政府の政策であり、コロンビア政府の政策ではない。それにもかかわらず、コロンビアはその線で行く可能性がある。というのも、コロンビア政府自身の政策は、圧力と武力行使によってゲリラを打倒するというものだからである。

米国でのこの訴追は、FARCを、コロンビアにおけるコカイン生産のほとんどを実質的に支配していると述べている。永年にわたり、FARCがコカ取引に課税していることは認められており、コロンビアの地方部の支配権をめぐってAUCと戦ってきはしたが、訴追では、FARCがコカイン精製工場を運営し、FARCゲリラ以外にコカを売る栽培者を殺しているとされている。しかしながら、この訴追は、コロンビア=ブラジル国境で銃と麻薬の取引が行われているとの主張があるにもかかわらず、FARCをコロンビアの外で麻薬を取り引きしていると告発はしていない。

これらの起訴については、すべて、大きな障害がある。すなわち、身柄引き渡しが妥当なものであるためには、犯罪と米国とのあいだに何らかの関係がなくてはならないのである。麻薬取引の場合、被告は、麻薬が米国に運ばれる意図を持っていなくてはならない。仮に訴追が主張するように、被告が何十万キロものコカインを生産していたというのが本当だったとしても、被告が麻薬の行き先を知らなかったり行き先がどこでもよいとみなしているならば、米国に麻薬を送る意図はなかったことになり、身柄の引き渡しはできない。

米国とのあいだに意図的な関係がなければ、米国の法律に違反したことにはならない。この点で、身柄引き渡しの脅しは、空虚なものかも知れない。その一方で、何年ものあいだ独房に入れられ、起訴のためには際限なく財源を用いるような政府を前に不十分な法的援助しかないという脅しは、とても現実的である。名の通ったFARCゲリラシモン・トリニダードとソニアさえ、限られた資源で公選弁護人が弁護にあたっている。たとえばソニアのケースでは、被告は自分の弁護の準備として自ら刑務所内でチェックするために傍受された通信を記録したCD100枚以上、そして検察が裁判で使うかも知れない1万点以上の文書を手渡される。トリニダードのケースでは、麻薬取引の裁判だけで、20人から25人の証人がコロンビアから飛行機で裁判に出席する。

パストラナ政権時代の和平交渉でFARCの交渉担当としてよく知られているシモン・トリニダードは、2年前にエクアドルで捕まり、麻薬取引と誘拐、テロ組織への物的支援の罪で米国に身柄を引き渡された。ラテンアメリカのメディアはこのケースに注目したが、米国のメディアは、これが「対テロ戦争」という新たなパラダイムで伝統的な法的原則の多くが試されることになるという事実にもかかわらず、注目しなかった。また、FARC訴追のどこにもトリニダードの名はFARC組織の指導陣として出ていないにもかかわらず、トリニダードはゴンザレスが発表した新たなプログラムで起訴される最初の人物となるようである。

トリニダードに対する第一の起訴内容は、米国軍事契約企業カリフォルニア・マイクロウェーブ社が操縦する監視機の墜落あるいは撃墜に関係している。墜落現場での戦闘ののち、3人の米国契約軍事要員はFARCに拘束され、今も拘束されたままである。現在まで、起訴では、シモン・トリニダードが飛行機を撃墜するよう命じたことを示そうとはしていない。トリニダードが契約軍事要員を捕虜にすると決定したという証拠もまったくない。トリンダードがこの出来事に関与しているとすると、それは、3人の釈放をアレンジしようと、どうやら国連の協力のもとで、エクアドルに旅したことだけである。

これらの事実をもってトリニダードを有罪とするのは難しいだろう。いかなる犯罪でも、陰謀にかかわるものでさえ、被告が犯罪を犯すために必要な精神状態にあることが求められる。政府に対する反逆といった一つの犯罪を犯そうとする意図を、別の犯罪を犯そうとする意図で置き換えることはできないし、その犯罪から害が出たからというだけで、ある犯罪を犯したことをもって、異なる意図を要する別の犯罪における有罪性の根拠とするわけにもいかない。すなわち、シモン・トリニダードが米国軍事契約要員の拘束に関係していないならば、彼が解放の交渉を行おうとしたからといって、拘束をめぐり彼を有罪とすることはできない。

第二の論点は、すでにトリニダードの公選弁護人もしているものだが、この出来事が武力紛争の文脈で起きたということである。戦争の際、捕虜をとることは、戦争犯罪ではない。皮肉なことに、検察側は、FARCのメンバーであることの証拠として、トリニダードが様々な写真でFARCの制服を着ていることを強調している。米国の軍事契約要員たち----コラムニストのロバート・ノバックは、彼らが米国中央情報局(CIA)のために活動していたと批判している----は、制服を着ておらず、彼らのFARC監視活動はスパイ活動と見なすことができる。軍服を着た法的に認められた戦闘員として、トリニダードはジュネーブ条約の保護を受ける権利をもつが、スパイである米国の軍事契約要員はその権利をもたないかも知れない。

しかしながら、ホーガン判事は、アメリカ合州国はFARCと戦闘状態にないため、トリニダードは戦闘員としての免責権の資格がないと裁定した。この見解に従うならば、第三国に移送された戦争捕虜もその資格を失うことになる。これは、拷問を禁止する米国の法律を避けて尋問のためにエジプトやポーランドの秘密監獄に中東のテロ容疑者を「引き渡し」と称して運んだことと、パラレルである。

このケースをめぐり興味深いことの一つは、法廷が命じた米国政府文書の提供により、弁護側が、軍事契約要員たちがコロンビアのジャングル上空を飛行機で飛んで実際には何をしようとしていたか知ることができるか否かにある。この監視機は、コカ作物を探していたのだろうか、FARCの無線通信を傍受してFARCの位置を報告していたのだろうか? もし後者が事実だとすると、弁護側は、裁判で、米国がコロンビア政府とFARCとの戦争に参加していたことを証明する機会を手にすることになる。もちろん、これらの議論は、トリニダードに対する麻薬取引の起訴には適用されない。麻薬取引は、戦争中であっても犯罪である。トリニダードの麻薬取引をめぐる裁判は、誘拐についての裁判が終わってからすぐ、2007年1月前後にはじまる予定である。

シモン・トリニダードは、ワシントンDCで独房に監禁され、弁護士にアクセスできない状態で拘束されている。審理が進んでいるあいだに、コロンビアではトリニダードに対する他の様々な起訴が進められており、欠席裁判が行われている。これは、国際的人権の基本的基盤となっている、市民的および政治的権利に関する国際規約(ICCPR)が保証する、彼の基本的権利に対するあからさまな違反行為である。同条約の第14条3(d)は、「自ら出席して裁判を受け及び、直接に又は自ら選任する弁護人を通じて、防御する」権利を保障している。それにもかかわらず、このケースを担当するトマス・ホーガン判事は、合州国憲法のもとでは、刑事裁判で自ら出席することおよび弁護士を付ける権利は、合州国外部での裁判には適用されないと述べた。しかしながら、ホーガン判事は、ICCPRをはじめとする国際条約が、合州国憲法が適用されるかどうかにかかわらず米国の法廷で法的拘束力を持つことを考慮していない。

トリニダードのケースを担当する公選弁護人は、米国政府とのあいだで「特別行政規則」という契約に署名しなくてはならない。これは、被告人と外部とのあいだで情報を伝達しないことを誓うものである。こうした契約は、弁護士----そうした契約に署名する義務はない----を付ける権利にあからさまに違反するものである。こうした条件に同意する弁護士は問題の一部を構成しているのではないかという疑問も起きる。とりわけ、トリニダードが選んだ弁護士オスカー・シルバは、FBIのエージェントが臨席しない場でトリニダードとの面会を許されないような状況では。

このケースは、証拠についても、法廷の管轄についても、告訴の政治的性格についても、問題だらけである。けれども、最も重要なのは、被告の基本的な権利である。トリニダードは、コロンビアで彼に対してなされている裁判に出席する権利を持っており、また、自分の裁判で自ら選んだ弁護士をつける権利を持っている。

FARCはコロンビアの選挙をボイコットしたり、労働組合ストにあわせて武装封鎖を行ったりすることで、地歩を固めることができるかも知れないが、メンバーの裁判を無視するとするとそれは誤りであろう。FARCはメンバーを法廷で弁護しなくてはならない。裁判の公平さや政治的性格にかかわらず、裁判は、FARCに、自らの政策を説明し単なる麻薬取引組織ではなくゲリラ・グループとしての主張を行う場を提供する。FARC以外には誰もそれを行うものはいない。FARCが参加しようとしまいと裁判は続くだろうし、その場合、米国政府から金を受け取った働き過ぎの弁護士がFARCのメンバーをわずかばかり弁護したとしても、最もリベラルなオブザーバさえほとんど何も言えないだろう。

今回新たに導入された身柄引き渡しプログラムにFARCが恐れることはなさそうであるし、解隊がこれから起こることもなさそうであるが、それは、身柄を引き渡されたメンバーに対してFARCが何もしなくて良いということを意味しはしない。

ポール・ウルフはワシントンの弁護士で、連絡先はpaulwolf(atmark)icdc.com.


■教育基本法の改悪をとめよう!6・2全国集会&国会デモ

日 時:06年6月2日(金)18時から(開場17時30分)
場 所:東京・日比谷野外音楽堂 ※参加費無料
発 言:国会議員の皆さん、全国連絡会呼びかけ人、全国各地から
呼びかけ人:大内裕和、小森陽一、高橋哲哉、三宅晶子
【連絡先・主催】 教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会
URL: http://www.kyokiren.net/
メール: info@kyokiren.net
TEL&FAX:03-3812-5510(平日午後2時~5時半以外は留守電の場合あり)
〒113-0033 東京都文京区本郷5-19-6 坪井法律事務所内

■~戦火のイラクから~
綿井 健陽さんイラク報告会

日時:5月14日(日) 13:30~16:00
場所:名古屋市博物館 講堂
 (地下鉄桜通線「桜山」4番出口から徒歩5分)
資料代 700円

自衛隊のイラク派遣は海外派遣恒久法案の成立へ向けての活動の既成事実と隊員の実績・経験を作り出しそして「新憲法」での「自衛軍」体制への道筋をつけたことが最大の「派遣成果」かもしれない。
~『DAYS JAPAN』2006年4月号 綿井健陽~

*綿井健陽(わたい たけはる)*
1971年大阪府出身。ジャーナリスト(アジアプレス)
これまでにスリランカ民族紛争、パプアニューギニア津波被害、スーダン飢餓、東ティモール・アチェ独立紛争、マルク諸島(インドネシア)宗教抗争などを取材。01年には、米国同時多発テロ事件後のアフガニスタンを3ヶ月に渡り取材し、各局ニュース番組で現地から中継リポート。03年3月~4月にかけては、空爆下のバグダッドから、映像報告・中継リポートを行い、広く映像が流れた。雑誌掲載記事では「週刊金曜日」「AERA」「中央公論」「創」など。共著に「アジアの傷、アジアの癒し」(風媒社)、単著『リトルバーズー戦火のバクダットから』(晶文社)。「イラク戦争報道」で、2003年度ボーン・上田記念国際記者賞(ボーン・上田賞)特別賞を受賞。監督作品「Little Birds~イラク戦火の家族たち」は各地で庄撚餝催中。2005年7月イラクサマワと、2006年3月にバグダッドで取材を行った。

共 催
有事法制反対ピースアクション TEL:052-881-3573
名古屋YWCA TEL:052-961-7707
自衛隊イラク派兵差止訴訟の会 TEL:052-781-0165

■東ティモール講演会
ダン・マーフィ医師の講演会

*医師として、人間としてー東ティモールの医療に捧げる後半生

東ティモール独立以前から10年間にわたって地域医療を支えてきたダン医師がこの度来日します。シェアが準緊急支援として最初に同国に入った1999年10月から2000年3月までの間、シェアと協力関係にあったダン医師は、今なお地域に根付いた臨床に携わっていらっしゃいます。講演会では東ティモールの医療再建の姿について、また歴史的・社会的側面も交えながら、今後の課題についてお話しいただきます。東ティモールの医療現場に興味がある方、将来開発途上国で医療に携わりたい方をはじめ、東ティモールに関心のある方は是非ご参加ください。

【スピーカー】ダン・マーフィ医師 <通訳付き>
  東ティモールの首都ディリにてバイロピテクリニック医師として活躍
【日時】 5月19日(金)19:00〜(開場 18:30)
【場所】文京シビックセンター 区民会議室5階研修室AB
http://www.city.bunkyo.lg.jp/shisetsu/civic/index.html
【参加費】 500円
【定員】60名

【申込方法】
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件名  Dr.ダン講演会申込み
本文 氏名(ふりがな) ・住所・ 電話番号・Mail・職業 ・シェアの会員 / 非会員
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TEL:03-5807-7581 FAX:03-3837-2151
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益岡賢 2006年5月13日

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