コカコーラからコカインへ:偽善の季節

ギャリー・リーチ
2005年12月19日
コロンビア・ジャーナル原文


2005年も押し迫った中で起きたいくつかの出来事が、ブッシュ政権とウリベ政権が実施している治安/経済政策にはっきりと見られる偽善を凝縮して示している。コロンビア自警軍連合(AUC)の中央ボリバル・ブロックが最近解散したが、その解散は、コロンビア軍と右翼準軍組織集団との癒着をいっそうはっきりと示すものだった。また、最近アレヴァロ・ウリベ大統領は、民主的に選ばれた隣国ベネズエラの指導者を転覆する陰謀にコロンビア軍が関わっていたことを認めたが、それもまた同様に不穏なものであった。一方、米国政府が推進する「自由貿易」政策の不公平も、今一度明らかになった。コロンビア先住民の創意と起業家精神に対して、コカコーラ社のように米国に本社を置く多国籍企業と同じ権利は与えられない。

コロンビア大統領アレヴァロ・ウリベは、左派ゲリラに対する戦争を激化させる一方で、右派準軍組織とのあいだで茶番の解隊プロセスを進めている。AUCの中央ボリバル・ブロックに属する約2000人の兵士が12月12日に除隊したが、これは、コロンビア軍と右派準軍組織の癒着を示す最新の証拠であった。ほとんど話題にならなかったが、解隊式典の際に、準軍組織が重機関銃で武装したヘリコプター二機を手渡したのである。

準軍組織が軍事作戦の際、ヘリコプターを使っているという噂は数年前からあった。中央ボリバル・ブロックがヘリコプター二機を手渡したことは、この主張の正しさを示しているようである。しかしながら、問うべき疑問は、コロンビア軍がプラン・コロンビアで提供された航空機及び追跡技術により制空権を握っている中で、AUCは政府に知られずにヘリコプターを使うことができただろうか、というものである。

中央ボリバル・ブロックが活動する主要二地域----コカを栽培するプツマヨ州とボリバル州南部----を考えると、コロンビア軍に知られずに、準軍組織がヘリコプターを使うことができたとは考えられない。これら二地域は、プラン・コロンビアのもとで大きく軍事化され、空中からの農薬散布作戦のために政府がすべての制空権を握っているのである。コロンビア軍の空軍力は、結局のところ、コロンビアの左派ゲリラ二つがいずれもヘリコプターを所有していない大きな理由の一つなのである。つまり、軍は、視覚的にあるいは追跡装置により、極めて容易にヘリコプターを見つけ出すことができる。それにもかかわらず、準軍組織は何の問題もなくヘリコプターを使っているようである。

さらに、中央ボリバル・ブロックは、麻薬取引に深く関与している。2002年、AUCの指導者サルバトーレ・マンクソは、ウリベ政権と解隊交渉を行う準備としてAUCのイメージ改善をはかった。同年9月、マンクソは中央ボリバル・ブロックに対して、「麻薬取引活動を続けるならば[AUCの]名前を使うのをやめなくてはならない」と警告した。コロンビアの重度に軍事化された地方で中央ボリバル・ブロックがヘリコプターを使うために必要となる軍と準軍組織の明らかな癒着が存在し、また、同ブロックが麻薬取引に関与していることが明らかなことを考えると、プラン・コロンビアの対麻薬部門が腐敗していることははっきりしている。

解隊のお芝居におけるもう一つの問題もまた、12月12日の式典で明らかになった。1924人のAUC兵士が除隊したにもかかわらず、提出されたライフルはたった1254丁で、多くが使用不能なものだったのである。中央ボリバル・ブロックの兵士の一人は、式典の場で、AP通信の記者に、提出した古い銃は実は自分のものではないと認めた。彼は、2日前に、使える武器を司令官に手渡したと述べた。除隊プロセスを監視している米州機構の監視団によると、AUCの兵士たちが提出した武器の約3割は、使えないか劣悪な状態のものだったという。

2005年9月に発表されたアムネスティ・インターナショナルの報告書は、メデジンで除隊した準軍組織兵士たちが、AUCに所属していた頃パトロールしていた地域で治安要員や情報要因として汚い戦争行為を続けていることを明らかにしている。除隊した準軍組織兵士の多くが活動を続けながら政府から月180ドルの給付金をもらっていることを考えると、準軍組織の兵士たちが、除隊式典でよりよい武器を手渡さないことは驚きではない。

過去2年間で1万3000人以上のAUC兵士たちが「除隊」したという事実にもかかわらず、ボゴタにある紛争分析資源センター(CERAC)は、最近、2005年の上半期に準軍組織は658人の民間人を殺したと報じている。これは、その前2年の同じ時期と比べて、2倍以上である。ここから疑問が起こる。この除隊プロセスによってウリベ政権はどのような平和を実現しようとしているのだろうか?

コロンビア政府がAUCとの間で和平を達成しテロリズムから民主主義を防衛していると主張していると同じときに、隣国で民主的に選ばれた指導者を転覆する陰謀をたくらんでいたようでもある。ウリベは、最近になって、ベネズエラのウーゴ・チャベス大統領に反対する元ベネズエラ軍士官たちが、ボゴタの政府建物でコロンビア軍士官たちと会っていたことを認めた。ウリベはまた、会議が行われた建物は、コロンビアの対ベネズエラ諜報作戦の本部だったと認めた。

米軍が支援しているコロンビア軍は、コロンビアにおける人権侵害の大部分を行っている右派準軍組織と同盟しているだけでなく、ベネズエラの民主的に選ばれた大統領を転覆しようとすることでアンデス地域を不安定化しようと活動している。ここから疑問がわきおこる。ブッシュ政権が関与している対テロ戦争と民主化の促進とはどのような種類のものなのだろうか?

偽善的・冷笑的な政策があからさまに進められているのは治安の領域だけではない。この3年のあいだに、ウリベ政権は、コロンビアを新自由主義のモデルに仕立て上げた。しかしながら、自由貿易政策と呼ばれるところのものを適用したことで創生された富は平等に配分されてはいない。実際には、コロンビア人の64%が貧困の泥沼に足をとられている。これは、ウリベが2002年8月に政権についたときと変わらない。

コロンビア南部のある地方部で、貧困と経済機会の不在を緩和する試みとして、先住民ナサの小さなコミュニティが最近、コカの葉からの抽出物によるソフトドリンクの製造を始めた。ナサの指導者ダビッド・クルティドルは、自分たちのコミュニティが作る金色の炭酸飲料----地元先住民の言語で太陽のコカを意味するコカ・セクと呼ばれる----は、重要な経済的努力以上のものであると述べる。それはまた、政治的宣言を意図したものでもある。コカ・セクはコロンビアでコカコーラに代わるものとして販売されている。クルティドルによると、コカコーラ社は、コロンビアのソフトドリンク市場を支配しているにもかかわらず、原料を地元で買おうとしない。だから、この巨大ソフトドリンク企業は「帝国主義支配を象徴しているのだ」とクルティドルは言う。

コカ・セクを製造する先住民が実感したように、ワシントンが推進する、自由貿易政策と言われるものは、基本的に多国籍企業を利するためのものである。コカコーラ社が、コロンビア市場の支配に有益な新自由主義政策から利益を得ている一方、米国政府は合州国内で、この巨大ソフトドリンク企業を競争から保護している。コカの葉はコカイン精製のための基本成分を提供するため、コカの葉やコカから得られた産物を米国に輸入することは法律違反である。そのため、コカ・セクは米国のソフトドリンク市場でコカコーラと競争できない。

しかしながら、コカコーラの秘密レシピには、危険だとされるコカの葉からの抽出物の使用も含まれている。1世紀以上にわたり、米国政府は、コカコーラ社に対し、その有名なソフトドリンクのためにコカの葉の輸入と使用とを例外扱いとして認めてきた。その結果、ニュージャージーにある化学製造企業ステパン社は、コカの葉をペルーから合法的に輸入することを許可され、それをコカコーラ社のために加工している。

これにより、世界最大の多国籍企業の一つが、米国内でコカを使ったソフトドリンク市場の独占権を与える政府の政策により利を得、あらゆる競争から守られている。そして、コカコーラ社は第三世界の市場にアクセスすることで2005年の第三四半期に12億8000万ドル----昨年の同じ時期と比べて37%の増加である----を稼ぎ出すことができたのに対し、世界最大のソフトドリンク市場は、人口の85%が貧困状態にあるコロンビア地方部の小さな先住民コミュニティが作る製品に対して門戸を閉ざし続けている。

クリスマスの季節は、解隊されたことになっている準軍組織の麻薬商人および大もうけをしているコカコーラ社にとってとてもよい季節となるだろうことは言うまでもない。その一方で、貧困に追いやられたコロンビア先住民と農民たちは、ふたたび、クリスマスの靴下に石炭のひとかたまり程度しか得ることができないことになる。


■今、イラクでは----イラク人医師モハメッドさんを囲んで

日時:2006年1月4日(水)18:30から20:30
場所:アジア女性資料センター
連絡先:E-mail: ajwrc(atmarkhere)ajwrc.org  TEL: 03-3780-5245
詳細:アジア女性資料センター

■パレスチナ−イスラエルを辿る問題のロードムービー上映会

京都 2006年1月28日(土) ひと・まち交流館 京都
大阪 2006年1月29日(日) 阿倍野区民センター

『ルート181:パレスチナ−イスラエル 旅の断章』
(Route181 : Fragments of a Journey in Palestine-Israel)

監督:ミシェル・クレイフィ、エイアル・シヴァン
(2003年/270分/アラビア語、ヘブライ語/ビデオ)
日本語・英語両字幕 English Subtitles

詳細は、ルート181:関西上映 京都・大阪をご覧下さい。

■チェチェン関係絶対お勧めビデオ

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『レイラ・ザーナ ――クルド人女性国会議員の闘い』

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中川喜与志、大倉幸宏、武田歩/編
(ファイサル・ダール、イスマイル・ベシクチ/寄稿)
A5判並製・368頁・定価2800円+税 ISBN4-7877-0500-8C1036
発行:新泉社
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■サンドラ母子を支える会

ぜんぜんフォローできていませんが、サンドラ母子を支える会HPおよびサンドラ母子を支える会ブログがあります。

なお、今年、いくつか大きな仕事が入っているため、更新のペースがすこし落ちるかも知れません。
益岡賢 2006年1月2日

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