コロンビアにおける米国の傭兵たち

2000年7月16日
イグナシオ・ゴメス (コロンビア・ジャーナル


1998年8月に行われたFARC(コロンビア革命軍)によるミラフロレスの攻撃に関する詳細が最初に現れたとき、コロンビア軍と政府の心配は増大した。というのも、この攻撃の第一の標的は、米国企業ディンコープ(DynCorp)が、サン・ホセ・デル・グアヴィアレの反麻薬基地における飛行機のパイロットと地上職員として雇った20名から30名の退役米軍人だったからである。ディンコープのパイロットたちが燃料補給のためにミラフロレスに着陸することは広くしられている。けれども、ボゴタの米国大使館によると、パイロットたちがミラフロレスに着陸することは公認されておらず、また、FARCによる攻撃時にパイロットたちがミラフロレスにいたという理由はまったくないという。

攻撃後、サン・ホセ基地での人数確認により、2名の米国パイロットが行方不明であるという恐れが出てきた。この2名がしばらくして姿を現したとき、2名が、ベトナム時代のOV−10ブロンコ攻撃機でジャングル上空を飛行していたことが確認された。このブロンコは、ディンコープがコロンビアに持ち込んだ5台のOV−10の一大である。OV−10の利用は、米国オブザーバからすら、コロンビアにおける不法作物栽培を阻止するための薬剤空中散布作戦には実際に有効でないという批判が出ているものである。

1975年12月、フォードとキッシンジャーの全面的ゴーサインのもとでポルトガル領チモール(東チモール)を侵略したインドネシア軍は、東チモールの人々の抵抗に苦戦を強いられた。このとき米国がインドネシアに供給したのがこのブロンコOV−10。これにより、インドネシアは大規模な殺害をさらに拡大し、東チモールの不法占領を成し遂げた。なお、ディンコープは、現在、東チモールにおける米軍の「訪問人道支援」活動と契約し、そうした「支援」が行われるときに、東チモールで人材やロジスティクスの提供を行っている。テキサスに本社を置く企業。

米国国務省は、コロンビアでディンコープの米国人パイロットと技術者の役割については、曖昧な態度をとっていた。けれども、ディンコープの6億ドルにのぼる契約については、強力な支援者がいる。一人は下院国際関係委員会委員長でニューヨーク選出議員ベンジャミン・ジルマンである。彼は退役軍事であり、同時に、国際麻薬取締官組合のメンバーでもある。

ディンコープは1946年、トルーマン大統領の命令により、第二次世界大戦時の余剰兵器・機器を利用し、また、元兵士に仕事を与えるために創られた会社である。今日、ディンコープはワシントンDC地域でのトップ雇用者であると同時に非雇用者所有ビジネスとして米国第3位であり、また、フォーチュン500のメンバーでもある。カリフォルニア東部エアウェイとして開始されて以来、ディンコープは米国ミサイルプログラムに関与するなど航空研究の主要な役割を担う組織の一つであり、また、米国の戦闘機のパイロット訓練と維持の主要な基地であるバージニアのフォート・ロッカーで重要な役割を果たすなど航空サービスにも従事している。

ディンコープがアンデス地帯の麻薬戦争について得ている契約は、同社の活動のほんの一部分に過ぎないが、それに要する強硬な6億ドルを得るためには、政府の最も戦略的な地位についているディンコープの関連者(そのほとんどはベトナム戦争のベテランである)の積極的な支持が必要となる。ディンコープは、色々な活動に加え、現在コロンビアで50名から80名の退役米軍兵士を雇用している。

1998年7月、傭兵業界の雑誌Soldier of Fortune(『財産家の戦士たち』)は、ディンコープのパイロットについてトップ記事で扱った。そのタイトルは、「Pray and Spray」(祈りとスプレー)という示唆的なものだった。この記事は、パイロットたちのグアヴィアレ地域における活動についてのものであった。パイロットたちは、この活動を、FARCの主要な標的になることを十分承知で行っているのである。この記事は、ジルマンの話と同様、繰り返しFARCを「麻薬ゲリラ」と呼んでいる。

Soldier of Fortune誌主任外交担当であるスティーブ・セリスベリーが書いたこの記事は、ディンコープのチームに対するコロンビア兵士の質問をカバーしており、また、(グアヴィアレの)第7対麻薬部隊とこの地域で働く米国退役軍人との関係は良好であるとしている。Soldier of Fortune誌によると、OV−10の操縦方法を知っているコロンビア人は1名だけであり、一方OV−10は2名の飛行士を必要とし、また、ディンコープが雇用する米国人は50名から80名の間を動いているという。このうち半分から3分の1がパイロットであり、残りは技術者である。また、15日のローテーションで30名以上がサン・ホセ・デル・グアヴィアレに駐屯する。

Soldier of Fortune誌はさらに、ディンコープはマリキタとサンタ・マルタの対麻薬基地にも飛行機を所有しており、そして少なくとも何度か個別に、FARCがほとんどを支配している南部コロンビアのプツマヨにあるプエルト・アシス基地に自社の飛行機を飛ばした。

公式には、コロンビア警察はディンコープの活動を評価しているとされているが、実際にはこの米国傭兵の活動に対して態度を保留している。匿名という条件で話をしたあるコロンビア警察官によると、米国のパイロットは、ゲリラによる攻撃があったときに被害を最小に留めるための飛行機の分散といった基本的な基準にすら従わないという。さらに、ディンコープのパイロットたちは好きなときに飛行し、飛行記録をつけもせず、事前計画の飛行ルートを守らないという。

対麻薬パトロールに従事するあるコロンビア人兵士は、制服から自分の名前をはずしてからようやく話し始めたのだが、「[ディンコープの兵士たちは]短パンで飛行機を操縦士、好きなところでたばこを吸い、ほとんど毎日ウィスキーを飲んでいる」という。サン・ホセ・デル・グアヴィアレ基地には、衛星テレビを含むあらゆる娯楽施設があるバラックをディンコープの職員は持っているとその兵士は言う。基地のそばの、あるコロンビア国家警備隊は、「ベトナム退役兵はコロンビア警察に従わない。そのため、問題があった」と述べる。

米国国務省との契約(契約書本文は、国家安全保障上の理由ということでワシントン・ポスト紙の求めに対し公開を拒絶された)を通して、ディンコープは、ペルー、ボリビア、コロンビアで「麻薬をその源で」根絶するために使われるヘリコプター及びコロンビアでの不法作物栽培に対する薬剤空中散布に使われる航空機を提供維持する役割を担っている。

最初に使われた一群の航空機は、機動性と対応範囲で知られるアイレス・ターボ=トラッシュ11機であった。ターボ=トラッシュは、地上からの銃撃に対して先端部のみが装甲されておらず、きわめて可能性は低いが、そこを狙撃された場合、墜落する可能性がある。薬剤散布において、ターボ=トラッシュは300フィート(約100メートル)の高さを飛ぶ必要があり、この高度ではゲリラからの銃撃に晒されることになるため、各使命遂行の前にディンコープのヘリコプターが「地上安全を確保する」ために動員されなくてはならなかった。

1998年、共和党議員のジルマンは、ブラックホーク攻撃ヘリの輸出を周旋した。ブラックホークは、航空機が毒薬を散布している間に停止飛行してマシンガンを発射できるヘリである。コロンビア側の訓練をディンコープが終えるまで、ブラックホークの操縦と維持はディンコープのパイロットにより行われた。ジルマンがヘリ輸出正当化に使ったのは、米国のバードウォッチャーがコロンビアで誘拐されたことであった。ジルマンは、「コロンビア国家警察は、こうした高機能ヘリが必要なのだ。米国市民を救うために現地に十分武装して行くために」と述べている。

ジルマンほど頻繁にコロンビアを訪問した米国議員はいない。そしてジルマンはコロンビアを訪れるたびに、グアヴィアレ基地の米国人パイロットと話をする時間を取っている。彼は繰り返しディンコープの契約延長を提唱し、成功してきた。そして、また、クリントン大統領の13億ドルに及ぶ「援助」パッケージの中心的支持者の一人でもある。この「援助」により、ブラックホークヘリコプターがさらに18機コロンビアに提供されることが予定されている。これは、ヘリを維持しパイロットを訓練するために、ディンコープにはさらなる収入があることを意味する。

ジルマンが議会で引用したところによると、米国南方司令部のチャールズ・ウィルヘルム将軍は、コロンビアにおける対麻薬警察の作戦の9割にヘリコプターが使われており、そのうち40%の作戦時に敵からの銃撃を受けるという。コロンビア警察によると、1994年1月から1997年11月の間に、警察の飛行機3機とヘリコプター5機が撃ち落とされたという。飛行機は67回銃弾を受け、ヘリコプターは74回受け、その結果、対麻薬警察官44名が死亡し72名がけがをした。恐らく最も驚くべき数字は、これまで3人のディンコープ社の「文民」が犠牲となっており、ターボ=トラッシュ2機を完全に失っていることである。しかも、これらの事件について、警察はゲリラが容疑者である可能性を否定しているのだ。

それにも関わらず、ディンコープは5機の2モーターOV−10ブロンコを利用し続けている。ブロンコはベトナムで偵察機として使われ、ときにはナパーム弾投下にも使われた。(焼夷粉によりベトナムとカンボジアの村々を焼き尽くした)ナパームとは違い、コカとケシに対して使われ「ラウンドアップ」というニックネームを持つ化学除草剤であるグリフォサートは液体で、速やかに蒸発する。OV−10が高速飛行機である一方、毒薬空中散布に必要なのは低空飛行であることを考えたとき、OV−10とディンコープの言うことを聞かないパイロットたちを派遣することの本当の意味はまさにこの辺にある。

イグナシオ・ゴメスはボゴタの日刊紙『エル・エスペクタドル』に寄稿する調査レポータ。彼は現在、殺害の脅迫を受け、亡命している。本記事の別バージョンは『エル・エスペクタドル』に発表された。

 益岡賢 2002年4月26日

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