もう一つの「対テロ戦争」とお馴染みのプロパガンダ

ギャリー・リーチ
2004年7月5日
コロンビア・ジャーナル原文


米国の特殊作戦・低強度紛争担当国防次官トマス・W・オッコーネルが最近発表した論説記事は、ブッシュ政権が米国市民と議会に「対テロ戦争」を売りつけるために事実を歪曲するさらなる事例となっている。今回は、イラクに「民主主義」---当然のことながら米国が発明したネオリベラル「民主主義」のことだが---をむりやり押しつけることを正当化するためでなく、米国のコロンビアへの軍事介入の「成功」という古き良き独善的スタンスを推進するためである。ブッシュ政権がコロンビア駐留を許された米軍兵士と契約員の増員を求めたことにつき、議会が論議しているさなかでのことである。理想的な民主主義ならば、米国政府は全面的かつ正確に政策に関する情報を人々に提供し、市民が民主的プロセスに実効的に参加できるようにするであろう。選挙の年であれば、なおさら。けれども、オッコーネルがそうしていないのは明らかである。実際、ブッシュ政権がコロンビアで採っている「対テロ戦争」政策の現実を歪曲することで、オッコーネルは米国市民と議会とに大きく誤った情報を提供し誤誘導している。これは、米国の民主主義を劣化されることにもなっている。

7月1日、ワシントン・ポスト紙の論説として掲載された「もう一つの対テロ戦争」という記事の最初の段落で、オッコーネルはさっそくコロンビア内戦の実際を歪曲している。彼は次のように書いている:「50年近くにわたって、テロ組織は、西半球で二番目に古い民主主義国コロンビアを攻撃してきた。麻薬貿易、強請、誘拐により活動資金を得ながら」。しかしながら、実際の所は、米国がコロンビアの不法武装グループに「テロリスト」というレッテルを張り始めたのは20年前であり、使われた場合でも、この言葉は控えめに用いられていたのである。2001年9月11日までは。

コロンビアの専門家はほぼ全員が、一致して、1950年代から1990年代初頭まで、コロンビアの左派ゲリラは、政治的・社会的・経済的な不正に対抗するイデオロギー的なゲリラ運動であったとみなしている。コロンビアのゲリラの一部は、今でもこうした不公正に対して闘っていると見なす人々もいる。国連のコロンビア特使ジェームズ・ルモアーヌが、不公平な富の分配により人口の64%が貧困層にさせられている国において、「FARCのメンバーが単なる麻薬商人やテロリストであると考えるのは誤りである」と述べたのは、わずか1年前のことであった。さらに、コロンビアの武装グループが不法な麻薬取引から利益を手にし出したのは1970年代のことであった。オッコーネルの言葉遣いでは、まるでコロンビアの不法武装グループが50年前から麻薬商人兼テロリストであったかのような印象を与える。

「コロンビアは西半球で二番目に古い民主主義国である」という、米国政府官僚や主流派メディアでしょっちゅう繰り返される言葉は、コロンビアが200年近くにわたって民主主義国であり続けてきたということを示唆しているが、それは真実ではない。コロンビアの歴史の中で、最も最近では、1953年から1957年までは非民主的であり、グスタボ・ロハス・ピニージャ将軍の軍事独裁体制によってコロンビアは支配されていた。さらに、1958年から1974年までの間、コロンビアは国民戦線の「制限民主主義」のもとにあった。この期間には、二つのエリート政党が4年の年期で交互に大統領を出し、それ以外のあらゆる野党/政治的反対派を除外していた。コロンビアでは、1980年代になるまで地方自治体の政治家は選挙で選ばれるのではなかった。さらに、政府は過去40年間、繰り返し「戒厳令」を発布してきた。これを考えると、少なくとも米国とカナダ、コスタリカは、コロンビアよりも古くから民主主義が続いている国であるということができる。

ブッシュ政権の過去のレトリックに合わせ、オッコーネルはコロンビアの不法武装グループとして左派のコロンビア革命軍(FARC)だけを名指している。彼は、米国が支援するコロンビア軍と緊密な同盟関係にある右派のコロンビア自警軍連合(AUC)については言及していない。また、人権団体や米国国務省年次人権報告では、コロンビアにおける人権侵害の大多数を犯しているのは右派準軍組織である。オッコーネルは論説記事の中でFARCを三回名指しており、それ以外のところでは、コロンビアの複雑な内戦を雑駁に「対テロ戦争」の枠組みに収めるために単にコロンビアの不法武装グループを「テロリスト」とか「麻薬テロリスト」と述べているだけである。FARCに繰り返し言及しているので、記事の中で言われている麻薬テロリストはFARCであると仄めかされることになる。実際、コロンビアのことを知らない読者は、右派準軍組織が存在することさえ気付かないだろう。

オッコーネルは内戦の環境破壊について、「麻薬テロリストは致命的な作物を育てるために生い茂った森林を裸にした」と述べ、「2億400万エーカー近いジャングル---イエローストーン国立公園の約1・5倍の地域---が過去15年のうちに、コカ作物を育てるために伐採された」と指摘している。けれども、コロンビアの熱帯雨林が伐採されたのは「麻薬テロリスト」によるものではなく、麻薬商人によるものでさえない。破壊の大部分は、利益をあげることのできる唯一の作物を育てようとする貧しい農民たちにより奥地でもたらされたものである。それというのも、コロンビア政府も米国政府も、農民たちに何一つ継続可能な経済的代替策を提供してこなかったからである。

オッコーネルが言及している15年という期間の始点は、1989年、ジョージ・ブッシュ父大統領がコロンビアに「市場指向経済」に基づく経済「改革」をさせるかわりに米軍の軍事援助を劇的に増大させた時期である。この結果、1990年代にコロンビア経済を破滅させる新自由主義「改革」がもたらされ、都市部の失業した住民の多くが地方へ流出し、コカを栽培するために熱帯雨林を切り倒した。オッコーネルがこうした事態について述べていないことは言うまでもない。ただたんに、愚かにも、貧困に追いやられた農民たちを「麻薬テロリスト」と言っているだけである。さらに、民間人を武装グループと無責任に関係付けるレトリックにより、コロンビア軍をはじめとする武装グループは、罪のないコロンビア人に大規模な人権侵害を加えることになっている。

オッコーネルはまた、環境破壊の原因についても指摘していない。米国が資金提供している空中からの毒薬散布キャンペーンが川や森を汚染し、さらに、コカ農民は、作物を植えるためにさらにジャングルの奥深くへと移動することになる。また、彼が、コカイン精製に使われる「2億5000万ガロン・2億4000万ポンドの毒性化学物質」がコロンビアの傷つきやすいエコシステムに打撃を与えていると述べるときそれは正しいが、これらの化学物質の多くが米国企業から購入されているという事実については隠蔽する。麻薬生産が引き起こした環境破壊に部分的に言及しながら、オッコーネルは、「こうしたテロリスト行為に対するコロンビアの戦いはますます前進している」と述べる。けれども、彼はこれら「テロリスト行為」のおかげで何十億ドルもの利益を上げている米国の化学企業を対象としたブッシュ政権の政策(が何もないこと)については論じていない。

オッコーネルが米国政策の成功について最も無茶苦茶な誇張した下りでは、米国の軍事援助と訓練のおかげで、ここ数十年来はじめて、「コルンビア(ママ)の町のほぼ100%に軍や警察が駐留し治安を維持し法を適用している」と断言する。コロンビア政府は、ついに、昨年末、あらゆる年に警察を置くことができたが、それはあらゆる町に政府のプレゼンスを「再達成する」こととはかけ離れている。多くの行政市部では、最も大きな町に数人の警察官がいるだけであり、また、オッコーネルが言うように「この数十年で最初」ではなく、そもそもコロンビア始まって以来はじめてなのである。コロンビアの歴史を通して、中央から離れた町の多くは中央政府から単に無視され、数千という町は今も中央政府の手が届いていない状況で、実質上の政府として昨日する不法武装グループの確固たる統制下にあるのである。

人権について、オッコーネルは、「コロンビア軍は人権記録を大規模に改善し、改善を今も続けている」と主張している。この発言は、人権団体によるウリベ政権批判と全く逆である。人権団体は、コロンビア軍が労働組合指導者や人権活動家を大量拘束し、また、記録的な数の人々を「失踪」させていると批判しているのである。また、昨年公開された国連報告は、アレヴァロ・ウリベ大統領のもとでコロンビア軍が人権侵害に直接関与する数は増大していると述べている。興味深いことに、オッコーネルは、「人権尊重を新たに強調することは、ウリベとウリベ政権の国防省の実践的な指導力のおかげで成り立っている」と述べている。

オッコーネルは、「米国がスポンサーとなっているコロンビアの反麻薬プログラムは、この2年間で不法コカ栽培を33パーセント減少させた」と指摘している。けれども、かれはこの信じがたいほどの「成功」が、米国の都市におけるコカインの価格、純度、入手可能性に影響を与えていないことを無視することを選んだ。そもそも、米国がコロンビアで「対麻薬戦争」を行なっているのは、それが目的だったはずであるのに。「これらのプログラム継続はコロンビアの治安にとって必要不可欠である」とオッコーネルは述べる。「というのも、麻薬取引の収入がFARCのようなグループのテロリスト行為に資金を提供しているからだ」と。ここでもまた、左派FARCだけが言及される唯一の不法武装グループであるが、右派AUCは長いこと麻薬取引に関与してきたのである。

オッコーネルの論説記事がコロンビア現地の現実を描き出そうとしているものでないことははっきりしている。このプロパガンダ記事は、そうではなく、米国市民と議会を、ブッシュ政権の政権は無条件の成功であり支持継続に価すると説得するためのものである。世界で起きている事態を考えるならば、コロンビアは米国市民にとっても議会にとっても優先リストの上位には置かれていない。それゆえ、政府職員が、状況を知るために調査する時間を取れない市民に正確な情報を与えることがなおさら重要である。もちろん、政府の目的が自らのアジェンダを進めることにあるのではなく、投票などでインフォームド・ディシジョンを市民ができるよう政府が市民を助けると市民が信頼できるような民主プロセスを促すことにあるのであれば、であるが。


コロンビアの記事です。コロンビア軍・準軍組織とFARCが軍事的に対立する中、双方とも、一般の人々への人権侵害を加えています。軍・準軍組織が7割から8割の人権侵害を、FARC等の左派ゲリラが2割から3割の人権侵害を犯しているという状況です。

今、コロンビアで取材中の若手ジャーナリスト岡原功祐さんの記事がU-Pressに継続的にアップされています。

一方、コロンビアでの問題の根は巨大な社会的不平等と大多数の人々の貧困、そして公正と民主主義、人権を求める人々に対する弾圧にあります。米国は「対テロ戦争」の名のもとで、コロンビアの強権政府を強く後押ししており、それは武力紛争を悪化させるだけでなく、農民や人権活動家、労働組合員、ジャーナリストなど、よりよい方向への社会変革を求める人々を、十把一絡げに「ゲリラシンパ」とか「テロリスト・シンパ」と呼ぶことで、さらなる弾圧を促しています。

そのような中、何が一体起きていて、何が問題で、その中で誰が何をしていて、それはどのような意味をもっているのか、を判断できるような情報は、主流派メディアではほとんど伝わりません(日本ではコロンビアの情報自体がほとんどありませんが)。

このこと自体は、イラクで米英の占領軍が何をしているのか、日本の自衛隊は実際にどのような位置づけなのか、ひとくくりに「自爆テロ」等といわれるイラク人が行う武力行為は、実際には何を背景にどのように起きているのか、が主流メディアで流れる情報からはほとんど伝わらないことと同様です。

たとえば、ファルージャで米軍が進めていた、そして現在も散発的に進めている空爆や虐殺。その実態については、(その規模を考えると)ほとんど伝えられていないといってよいほどです。

しばらく前、正体不明のグループに斬首されて殺されたニック・バーグ氏の父親マイケル・バーグ氏は、次のように書いていました(TUP速報さんより):
ジョージ・ブッシュは、一度も私の息子の目を見たことがありません。ジョージ・ブッシュは、私の息子を知りません。それが、彼をことさらに冷酷にしているのです。ジョージ・ブッシュは、彼自身人の親でありながら、私の苦しみや私の家族の苦しみを感じることはできず、ニックのために嘆く世界の苦しみを感じることができません。たんなる政策立案者であって、自分の行為の結果を担わなくてもよいからです。ジョージ・ブッシュは、ニックの心も、アメリカ民衆の心も、見ることはできず、まして、彼の政策が日夜死なせているイラクの人々の心など、見えはしないのです。

ドナルド・ラムズフェルドは、イラクの捕虜に対する性的虐待の責任は取ると言いました。しかし、行為の結果が自分の身に返ってこないのに、どうして責任がとれるというのでしょうか。ニックが、その結果を引き受けたのです。

息子の命を奪った殺人者たちにもまして私にとって耐えがたいのは、多くの人の命を絶ち、なお生き続ける人たちの生活を破壊する政策を、安閑と坐って立てている者たちです。

〔・・・・・・〕

ジョージ・ブッシュの役に立たない指導性は、ひとつの大量破壊兵器であり、それがいくつもの出来事の連鎖反応を可能にした結果、私の息子は不法に拘束され、エスカレートする暴力の世界に沈められてしまったのです。
本当に暴力を止めたいのか、「対テロ戦争」を叫んで自分の目的を暴力的に果たすのではなく、真面目にテロリズムを止めたいのか。それならば、症状を通して原因を見つめなくてはならない。マイケル・バーグ氏のメッセージは、そのような正論を訴えています。

小泉首相は、自民党を破壊し利権を解体し構造改革を行うと言いましたが、国内の利権は温存されているだけでなく、米国の利権にべったりと寄り添っています。一方で、この1年、上野公園だけでホームレスの自殺者は17人(うち4組の夫婦/カップル)。イラク不法占領に加担する自衛隊派遣を含め、人々の生活と平和が破壊されただけです。そして、未だに何もしていない「改革」を進めると言っています

あるいは、コロンビアで1990年代に行われたような「ネオリベラル『改革』」ならば、進められたようです。

フィリピン人「捕虜」が解放されました。このことは、フィリピン人を「捕虜」にとった武装勢力が「聞く耳を持たない」「交渉の相手とはならない」テロリストである、というプロパガンダが誤りであること、多くの「人質」事件がイラク侵略と不法占領への加担と結びついていることを示しています。
益岡賢 2004年7月25日

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