ついにワシントンはウリベの真実に目を向け始めた

ギャリー・リーチ
2003年9月29日
コロンビア・ジャーナル原文


ついに、米国議員の一部はこの1年間、コロンビア大統領アレバロ・ウリベを分析する際、自ら進んで身につけていた目隠しを取り去った。先週、米国議会の56人の議員がコロンビア大統領に手紙を書き、投獄するかわりに罰金を払えば右派準軍組織の司法的裁きをしないですまそうというウリベの計画に憂慮を表明した。さらに、国務省官僚が、ブッシュ政権と今や色あせたウリベとの間に距離を取りたがっているという報道すらある。ウリベが準軍組織に恩赦を与える計画を発表し、また最近非政府組織(NGO)を演説の中で攻撃したために、米国の議員たちはラテンアメリカのゴールデンボーイであり西半球で最も強くブッシュ政権のイラク侵略を支持したウリベへの支持を疑問視し始めた。一方、ウリベを批判する人々は、昨年ウリベが大統領選で勝利する前からの抑圧的右派としての記録に注意を向けようとしてきたが、米国政府はそれを聞き入れなかった。

投票者の53%を獲得してウリベがコロンビア大統領選第一回で大統領に選出されたため、ワシントンの政治家のほとんどは、コロンビアの左派ゲリラに対して強硬な立場を取るという選挙キャンペーンの約束を果たすためにウリベが用いた戦略から目をそらしていた。ウリベがこの12カ月間、民間人情報提供者ネットワークを創生し新たに創設した農民兵に地方の住人を徴用することにより、民間人を内戦に引き込んでいたことから、米国政府は目を逸らしていた。このプログラムの主要な標的はゲリラであったため、プログラムに引き込まれた民間人はゲリラにとって軍事標的となった。結局のところ、コロンビア軍は、既に、自分たちの仲間である準軍組織が誰でありどこにいるか知っていた。ウリベは地方住民を農民へ意図して徴用した。これらの農民兵は軍の兵舎にではなく自宅に住んで自らの村を防衛することになっている。農民兵の使命は、その地域のゲリラ活動を知るために家族や友人を情報提供者として使うことにある。その自然な結果として、まもなく、ゲリラは農民兵の家族や友人を標的とするようになった。

ウリベはまた、コロンビアに存在するわずかな民主主義を大きく崩壊させる政策を導入した。大統領の職に就いてからまもなく、ウリベはコロンビア北部の2地域に「社会復帰統合地域」を指定し、軍司令官に選挙で選ばれた文民官吏よりも上位の権限を与えた。これら地域に住んでいるコロンビア人にとって幸運だったことに、コロンビア憲法裁判所が、これら地域で軍が適用した治安方策の多くは違憲であると判決した。違憲と判断されたことの中には、アラウカ州サラベナで約1000人を一斉検挙したことも含まれる。これらの「転覆的であると疑われた者たち」は、地域のスポーツスタジアムに拘留され、尋問を受けた。憲法裁判所は、軍と警察が行なった人口調査も違憲であると判断したが、サラベナの人々には遅すぎた。当局は、既に、サラベナの全員の写真と指紋を採っていたのである。

憲法裁判所がウリベの抑圧的政策を違憲と判決したにもかかわらず、コロンビア軍は「転覆的分子」とした人々の一斉検挙を続けた。2003年8月21日、当時サラベナにいた米軍特殊部隊から対ゲリラ訓練を受けていたサラベナのコロンビア軍第18旅団兵士が、家々に押し入り、42人の労働組合員、社会活動家、人権活動家を拘留した。サラベナでの「狩り出し」の3日後の8月24日、コロンビア中部のカハマルカで600人の軍人と警察官が家々に押し入り、56人を逮捕した。このときには34人の逮捕状しか持っていなかったにもかかわらずである。拘留された人々の中には年老いて体の麻痺した人やその地の司祭もいた。サラベナとカハマルカでの一斉逮捕は、ウリベ政権が続けている社会グループへの攻撃の最も最近の例である。コロンビアの人権団体ホセ・アルベアル・レストレポ法律家組合によると、ウリベ政権発足後最初の8カ月で拘留された人々のほとんどは、「社会活動のため、あるいは単に当局が「疑わしい」と見なす地域に住んでいたために」逮捕されたものである。

ウリベ大統領の治安政策と新自由主義経済政策に批判的な人々はすべて転覆分子であると非難することがウリベ政権の政策であることは明らかである。ゲリラと政治的なイデオロギーが一致する人々をあたかもそれだけで武装ゲリラの一員であるかのように政府は扱う。このため、ゲリラと同様に、コロンビアで新自由主義的経済政策を適用することに批判的なコロンビア労働組合員が直面する危機にも、このことは現れている。ゲリラとは異なり、労働組合員は政府に対して武器を取って戦ってはおらず、爆弾をしかけも人々を暗殺しもせず、平和的な手段で政治的・社会的・経済的改革を推進しようとしている。つまり、南米「最古の民主主義」政府は、自らの政治的見解を表明したという、ただそれだけで、人々を迫害しているのである。

大量逮捕から2週間後、ウリベは人権団体を口で攻撃した。ボゴタの軍事セレモニーで行ない全国に放映された演説の中で、人権団体のことをテロリストとして非難したのである。この非難は、NGO約80団体が大統領の治安政策を批判し、また政府が「社会統制を求め人々の間に恐怖を植えつけようとしている」ためにウリベ政権では人権状況が悪化したという172頁の報告を発表したことに対抗するものであるようである。

ウリベは、演説の中で、明らかに人権報告を発表した80団体を指して、「テロリズムのために政治を論ずる」NGO団体があると主張した。ウリベはさらに続けて、「臆病者が自らの身を人権のバナーの陰に隠しながら、治安部隊と市民がテロリズムから奪い去った空間をテロリズムに返してやろうとしている」と言った。それから、ウリベは、次のように言って、人権団体とゲリラとを直接結びつけた。「治安政策がコロンビアでテロリズムを打倒しようと実施されるときはいつも、テロリストたちが弱っていると感じているときには、ただちにテロリストは報道官を送って人権を語らせる」。さらにウリベ大統領は、政府はNGOの活動を調査し始めると発表した。

ウリベの非難---彼はその中でわざわざ「ゲリラ」ではなく「テロリスト」という言葉を使ったのだが---は、人権に対する彼の態度を示しているだけではなく、人権活動家の命を危険に晒すものでもある。準軍組織もまた、人権活動家をゲリラのシンパと見なしており、ウリベのメッセージをNGO活動家を標的としてよいという青信号と理解する可能性は大いにある。NGOに対するウリベと準軍組織の態度の相同性は、プツマヨの準軍組織司令官のコメントにはっきりと現れている:「NGOがゲリラに操作されているのは秘密ではない。NGOは軍の将軍たちを批判する主張をさせるために一部の人に金を渡している・・・・・・NGOは転覆分子である」。

国際NGO、EU、国連は、ウリベの口頭攻撃を厳しく非難したが、ワシントンは沈黙していた。ブッシュ政権はウリベによる市民社会のグループの貶めについてコメントを出さなかった。市民社会の諸グループは、民主主義が機能するためには不可欠なものであるにもかかわらず。けれども、ウリベが行なったNGO攻撃演説は、ゴールデン・ボーイというイメージを曇らせることとなった。国際社会でこれまでウリベを支持していた人々も、ついに、この2年間批判者が語っていたウリベの本当の姿をかいま見ることとなったのである。

この1年間、ウリベの治安政策の抑圧的性格と人権侵害にもかかわらず、米国政府はこの同盟国政府を無条件で支持してきた。けれども、米国国務省のテロリスト・リストに挙げられており、コロンビアにおける人権侵害---とりわけ民間人の虐殺---の大部分を犯している準軍組織に恩赦を与えようとするウリベの計画は、ついに、ワシントンの議員の目を開かせることとなった。コロンビア大統領は準軍組織との和平交渉を開始し、2005年までに1万2000人の準軍組織兵士を完全に解散することを求め、そのための武装解除プロセスは今年の末に始まることとなっている。ウリベは、この和平交渉を「平和及び人権の回復への第一歩」と呼んでいた。

恩赦プロセスは、すぐさま、政府の和平コミッショナールイス・カルロス・レストレポが「人道に対する罪を犯した者たちのために、我々は、投獄ではなく、自らがなしたダメージを修復できるような処罰を求めている」と発表したときに始まった。刑務所に入るかわりに犠牲者の家族に人権侵害者が賠償を支払ったり、土地を政府に提出したり、コミュニティー・サービスを行うという、この不処罰プロセスが、準軍組織指導者カルロス・カスタニョとサルバトレ・マンクソが合法的な政治関係者となることへの道を開くものであることは明らかである。カスタニョは、準軍組織兵士たちへの恩赦がなければ、和平交渉は重大な危機に晒されるだろうと警告していた。コロンビア検察庁は、いまだに、虐殺をはじめとする人道に対する罪を命じた罪でカスタニョへの逮捕状を維持している。

一部の米国議員は、批判者たちがこれまで繰り返しウリベが準軍組織とつながっていたことを指摘していたが、とうとう、ウリベがコロンビアの右派準軍組織に共感を抱いていることを認識し出した。それとは対照的に、ブッシュ政権は、ウリベの和平交渉を全面的に祝福し、準軍組織解体の初期段階向けに今年300万ドルの資金を提供するとさえ述べた。56人の米国議員がウリベに送った手紙が、ブッシュとウリベの両政府を制御する第一歩となり、長らく望まれてきたコロンビアでの司法的裁きを実現する助けとなることを期待しよう。


10月1日、米国政府の主導的「ハト派」コリン・パウエルは、ウリベの人権に対する姿勢を賞賛しました。エルサルバドルでも、グアテマラでも、ニカラグアでも、インドネシアでも、最悪の人権侵害を犯してきた政府を米国政府が、「民主主義に向けて尽力」とか「人権侵害を阻止するために努力している」とか「穏健派」とか「心の底では善意の」とか褒め称えて来たことは歴史上の記録に残っています。ウリベは、準軍組織に対する「恩赦」は重要であると述べました。

「この1年間、ウリベの治安政策の抑圧的性格と人権侵害にもかかわらず、米国政府はこの同盟国政府を無条件で支持してきた」とありますが、現実的行動の記録を見ると、米国政府の支援と支援された政府が行なっている弾圧や人権侵害との間には大きな正の相関がありますから、むしろ「ウリベの治安政策の抑圧的性格と人権侵害のゆえに、米国政府はこの同盟国政府を無条件で支持してきた」という方が妥当かも知れません。邪魔な住民を追放すれば大農場も作れるし地下資源も開発できるため、準軍組織が住民を虐殺したり脅迫して追放するのは、「経済的」にも「好ましい」ことと勘定されているはずですので。
益岡賢 2003年10月2日

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