コロンビア国民投票:民主的参加か独裁擁護か?

パブロ・エミリオ・アルバレス
2003年6月30日
コロンビア・ジャーナル原文


アレバロ・ウリベ大統領政府が提案しコロンビア議会が承認した国民投票が、現在、これまで以上に、白熱した議論の対象となっている。最近、Procurador General(立法府議員)が国民投票に挙げられた19項目のうち15項目が違憲であるとしたことは、法務相フェルナンド・ロンドニョがその発表の影響を最小限に抑えようとしてはいるものの、政府を追い詰めている。最近の調査によると、この国民投票が何に関するものであるかきちんと理解していると述べたのは、3.7%に過ぎない。研究者は、平均的な人は、19項目をきちんと読むために、27分を要するとしている。こうした事実を、投票実施における制限(投票者は、一部の項目に対してのみ投票したり政府提案のいくつかについてだけ同意して他の部分には同意しないなどとすることはできない)とともに考えるならば、この国民投票が、厳密な意味で民主的な行為であると言うことは難しい。

ウリベ政権が企業メディアを通して発しているプロパガンダの波のレンズを通してみるならば、この国民投票は、コロンビアの現状を考え現在コロンビアで権力を握っている者たちの私的利害を考えるならば守ることが不可能な約束を支持するための転向キャンペーンということができるであろう。

実際、国民投票のいくつかの点には、特に公共部門で働く人々に影響を与えるいくつかの点がある。その一つは、州と市の財政査察官(Contralorias)を廃止する提案であり、これが承認されるならば、文字通り数千人の公務員が路頭に迷うことになる。家族を養うための収入を得る道を閉ざされるであろうこうした人々は、不可避的に、コロンビア貧困層に加わることになる。同様に、人口10万人以下の市で書記官(personerias)を廃止する提案も、長引く失業と貧困という混沌とした状況をさらに悪化させることになるだろう。

むろん、国家の暴走を最も良く監視してきたこれらの職を廃止することは、汚職との戦いにおいて大きな後退である。これらの提案が承認されるならば、コロンビア公共部門と公務員管理の会計検査を完全に私営化することを意味する。米国では、エンロンのスキャンダルが、外部の私営会計管理会社を用いることの危険を剥き出しに暴いた。コロンビア国民投票に含まれている提案では、これと同様の私営会計管理企業に、公共部門の監視を任せることが含まれている。取引の会計検査と実施とが、最低の低価格で公共サービス部門を買い取りたがっているまさにその多国籍企業に関係する多国籍企業によりなされるときに、人々は、その何百万ドルもにのぼる公共部門の私営化売却が、汚職と利益対立無しに行われるなどということを、どうすれば信じることができるだろうか?

さらに状況を悪化させているのは、政府が公務員給与を2年間据え置く提案をしていることである。この提案は、コロンビアのテクノクラート階級の見解から生まれたものであり、このテクノクラートたちは、現在の金融危機は、官僚エリート及び政府最高官の汚職によるものではなく、労働者のせいであるとしている。ここでもまた、高位の金になる地位についている、過大で水増しされた給与を受け取っているために賃金据え置きの痛みを感じない者たちの、腐敗した非効率的な管理のツケを、労働者が支払うよう求められている。

Procurador Generalによると、この国民投票には多くの手続き的問題がある。その一つは、議員が準備した立法提案を、無制限に編集したり拒否したりする権限を、政府行政に与えてしまうことである。このような変更がなされるならば、三権分立の相互チェックと均衡に重大な問題が起き、強大な権力を、とりわけ法務相ロンドニョその人の手に譲り渡すことになる。ロンドニョにそうした大権を与える新たな変更は、少なくとも2006年まで実効力を持つことになる。偶然にも、ロンドニョが引退する予定の時である。

嘆かわしいことに、既に準軍組織集団が、人々に対して、賛成票を投ずるよう圧力をかけているため、この国民投票が、コロンビアの人々の自由な意思表明とはならないことは明らかである。こうした障害にもかかわらず、労働組合やコミュニティ組織、市民社会のグループといった反対グループは、国民投票に棄権するキャンペーンを開始している。三大労働組合連合は、統一して「積極的棄権」キャンペーンを開始した。このキャンペーンは、この国民投票は民主的な行為ではなく、貧困層と労働者コミュニティに対する攻撃行為であり、独裁への隠された一歩であるとしている。

不幸なことに、コロンビアの人々は、すでに、表現の自由と情報へのアクセスの権利に対する侵害に慣れている。ちょうど、人々が、最も基本的な人権である生存権への継続的な侵害にも慣れてしまったように。こうした諸権利を主張して国民投票に反対している人々は、ゲリラ運動の「付属部隊」とレッテルを貼られ迫害される。こうした人々の唯一の罪は、政府に反対していることだけである。

こうした状況の中でも、直接参加型民主主義の装いを利用して実際には政治階級が自らの利益と海外資本の利益のために人々の意志を従わせるような気味の悪い計画を継続しているに過ぎない国民投票の強制に対して、抵抗は続いている。政府と極右部隊の圧力と脅迫が、コロンビアの人々による現政権が強制しようとしている、独裁への降下を拒絶する民主的権利の行使を阻止することに成功しないことが望まれる。


パブロ・エミリオ・アルバレスは、殺害脅迫を受け現在亡命生活を送っているコロンビア人労動組合活動家のペンネーム。



益岡賢 2003年7月1日

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