麻薬作物撲滅はペルーでの対立をもたらすか?

セシリア・レモン
2002年11月4日
コロンビア・ジャーナル原文


来年にも、ペルーは、対麻薬戦争のお墨付きを失い、米国アンデス地域貿易振興・麻薬撲滅法(ATPDEA)のもとでの関税免除権限を失うかもしれない。もしも、今年末までに3500から7000ヘクタールのコカ作物の撲滅という米国の要求をペルーが満たすことができないならば。ATPDEAへの参加は米州自由貿易地域(FTAA)交渉への参加と米国の「対テロ戦争」への支援次第なのであるが、ペルー政府の「開発と麻薬の無い生活のための全国委員会」(DEVIDA)委員長ニルス・レイクソンによると、ペルーは麻薬作物、特にコカの「きちんとした撲滅」という要求に従わなくてはならないという。「それが、米国にとっても最も重要な要因なのだ」と彼は述べる。

米国政府によると、昨年ペルーでは34200ヘクタールにわたってコカが栽培されていた。独立系の分析では、栽培面積は6万ヘクタールに及ぶかも知れないという。エリクソンは、禁止強化とよりよい代替開発プログラムがないと、ペルーのコカ栽培は12万ヘクタールにまで広がるだろうと述べる。DEVIDAは自発的コカ根絶計画を開始した。これは、カンペシノたちの協力のもとで、地方開発計画を実施し、市場あ安定している作物のための緊急貸付を行うことにより、雇用と収入を創生しようというものである。この計画にともなって、警察が、陸路・空路、川、海を通した麻薬輸送の禁止を強化する。

2002年6月から8月に、上部ウアヤガ、モンソン、アプリマク、アマゾン流域のエネ川渓谷でコカを栽培するカンペシノたちが、コカ栽培の強制撲滅を一時的に停止し、また、特に米国国際開発局(USAID)をはじめとする国際機関に撤退するよう求める抗議の行進を行った。

これに対し、ペルー当局は、コカ栽培者と協定を結び、「コカ作物を共同で段階的にかつ持続可能なかたちで削減すると同時に、麻薬取引と転覆的行為に対して戦う」ことで合意した。当局はまた、援助機関に対する苦情を調査するとともに、公共事業プロジェクトを行うことを約束した。この新たなプログラムのもとで、カンペシノたちは、自発的にコカを破棄することに対してお金を支給されることとなり、それから、代替農業体制が整うまで6ヶ月から12ヶ月のあいだ、公共事業プロジェクトに雇用されることになる。カンペシノたちは、これまでのコカ根絶計画が、有効な代替開発計画を伴っておらず、また、資金が、地方政府ともカンペシノの組織とも調整されていない活動に不当に費やされていたと苦情を述べている。

米国当局筋は、ペルー政府の計画に懐疑的である。米国は、強制根絶の停止に「憂慮」を表明し、それはコカ栽培を増加させる可能性があると述べている。また、米国当局筋は、ペルーが根絶目標を実現できない場合には、ATPDEAのもとでの関税免除資格を失う可能性があると警告している。

アルベルト・フジモリ元大統領(1990年〜2000年)のもとで、ペルーのコカ栽培は6割減少した。それに対応するかたちで、コロンビアでのコカ栽培が増加した。このことは、全体として麻薬作物栽培が減少したのではなく、単に栽培地域が移動したことを示している。1998年以来進められているコロンビアでの集中的な麻薬撲滅作戦により、麻薬生産者は、コカ栽培のために再びペルーに移動し、コカの価格は上昇した。1991年以来、ボリビア、コロンビア、ペルーの地域でコカを栽培している地域は約20万ヘクタールと、変化していない。

コカは、他の作物と較べて、少なくとも3倍の利益をもたらす。コカの葉11.5キロ袋は30ドルであり、4年前の13ドルから上昇している。コカの葉を、噛みコカやコカ茶、香り付けや薬品の原料といった合法的利用のために購入しているペルー国営コカ会社(ENACO)は、一袋17ドルしか支払わない。これに対し、コカ栽培地となっている警告で長い間代替作物とされてきたコーヒーの価格は、11.5キロで8ドルであり、カカオは14ドル、豆は4ドル、米は3.8ドル、トウモロコシは2.6ドルである。アマゾン地域の専門化であるロジャー・ラムリルは、「代替モデルは失敗した」と言う。「カンペシノが関心を持つかもしれない商業農作物は十分な利益をもたらさない。さらに、アマゾンでは開発計画が一つもなかった。」

エリクソンは、ペルー政府の目的は、段階的に、コカ栽培を、伝統的消費に必要なだけの量に減らすことであると述べる。彼はまた、合法的なコカ利用のために必要なコカ栽培面積がどのくらいかを決定するために調査が必要であると言う。コカ消費が合法なのは、ペルーとボリビアだけである。「我々は、強制撲滅によりもたらされる社会的不満を避ける新たな方法で、少しずつことを進めている」と彼は述べる。

コカ撲滅が強制的なものであろうと自発的なものであろうと、アマゾン流域で統合的な開発プログラムが不在であることには変わりがない。約6200品目の関税を免除する米国の法律ATPDEAは、コカ栽培諸国で別の雇用機会提供を刺激することを意図している。けれども、ペルーでは、ATPDEAを最も熱狂的に支持しているのは、ペルー海岸地帯と高地のビジネスピープルであり、これらの地域でコカは栽培されていない。エリクソンは、ATPDEAが国全体の利益となるだろうと言うが、麻薬作物が栽培されている高地ジャングル地帯で関税を免除された作物が栽培できるのかどうかは明らかではない。「麻薬撲滅は交渉の余地がないことである」とエリクソンは言う。「最小限の社会対立で撲滅を遂行したいが、人々が自発的に麻薬作物を撲滅しないならば、強制的に撲滅を行わなくてはならないだろう。」

コカを栽培するカンペシノたちは、コカ撲滅がATPDEAの関税免除条件であるならば、海岸と高地のビジネスピープルは、政府に圧力をかけて、開発計画なしの強制麻薬作物撲滅を行わせようとするだろうと恐れている。高地ウアヤガ川渓谷コカ栽培者の指導者であるナンシー・オブレゴンは、「ATPDEAは我々の味方ではなく敵である」と述べる。「あらゆる手段でコカを撲滅しようとやってくるが、短期的な代替作物のための条件を確保していない。」

本記事は、Latinameria Pressに発表された。また、スペイン語版は、Noticias Aliadasで読むことができる。


  益岡賢 2002年11月5日

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