コロンビアにおける米国政府の代弁者

ギャリー・M・リーチ
2002年9月9日
コロンビア・ジャーナル原文


2002年9月4日付けニューヨーク・タイムズ紙の署名記事、「米国はコロンビアでのコカ破壊活動を強化している」において、同紙のコロンビア特派員フアン・フォレロは、私がプツマヨ州に行ったちょうど1週間後に、コロンビア南部プツマヨ州にいたことを示している。けれども、彼が非合法作物への薬剤散布について述べる話を見ると、私たちは、全く別の国にいたかのように思われる(私は、読者に、「米国はコロンビアでのコカ破壊活動を強化している」と、プラン・コロンビア:虐殺フィールド(及び「空から降る死」)とを読み比べて頂きたいと思う)。フォレロの記事は、ワシントンがプラン・コロンビアに提供した20億ドルもの税金の効果について、ブッシュ政権が米国市民を騙すための試みを支援するプロパガンダに過ぎない。

フォレロは、米国のコロンビア政策には交渉の余地がないという前提で考えている。そして、麻薬に対して甘いと思われることを恐れる政治家のように、彼は、プラン・コロンビアが引き起こす問題について言葉だけの指摘をするにとどめ、米国のコロンビアでの政策の正当性を疑問視することはまったくしない。その結果、米国政府のコロンビアにおける政治的・経済的アジェンダを疑問に付すあらゆる証拠を、無視するか、あるいは大きく軽視するかするのである。

「米国はコロンビアでのコカ破壊活動を強化している」において、フォレロは、薬剤を散布されたコカについて繰り返し書いているが、空中薬剤散布で破壊された食料農産物についてはほとんど言及しない。彼は、自分たちの不法作物に対する薬剤散布の効率について話したがっている2名のコカ生産者を見つけだすが、どうやら自分の合法的食料作物が破壊された農民のただ一人も見つけることができなかったようだ。この地域はといえば、化学薬品が合法的作物に及ぼした破滅的影響を目にせずに、薬剤散布地域を訪れることすら不可能なほどであるにもかかわらずである。

フェレロがプツマヨを訪れるたった一週間前にプツマヨで私が過ごした6日間で、私は、空中薬剤散布作戦を公に批判する意思を持つ多くの人々と出会った。自分たちの食料作物に毒薬を散布された農民ばかりではなく、政府機関職員も、プラン・コロンビア適用を巡る問題について声を挙げていた。プツマヨで活動する2つの政府機関−プツマヨの持続可能な開発を担当する環境省の組織コルポアマソニアと、プラン・コロンビアの代替作物プログラム適用を担当する政府組織プランテ−の職員たちは、代替作物プログラムに割り当てられた資金配布を阻害する汚職について熱心に話したがった。

プツマヨで、毎日、代替作物プログラムのために働く公式の情報源を引用するかわりに、フォレロは、断片的に、代替作物の約束によるフォローアップを政府がしていないことを指摘し、それから、「コカを根絶すると約束した農民の多くはそれを実施しない」などと述べる。フォレロは、コカ根絶の約束を実行した多くの農民が、新たに植えた代替作物が、薬剤空中散布で破壊されるのを絶望的な気持ちで見つめていることを無視している。また、彼は、農民が代替作物合意に署名した場合、新たな作物が育つまでの12ヶ月間を、手作業でコカを自ら根絶する期間として与えられていることも述べない。

フォレロがプラン・コロンビアの効率に対して最も批判的になったのは、コロンビアにおける国連麻薬統制局のクラウス・ニョルンを引用し、国連担当者は、プツマヨでコカが根絶されたら単にコカ栽培は別の地域に移動するのではないかと心配していると伝えたときである。フォレロはまた、空中散布を批判するコミュニティ指導者たちについての一般的な記述をフォローもしている。恐らく、フォレロは、こうした指導者たちの言葉を直接引用すると、その主張の信憑性が高まりすぎると感じたのではないかと思われる。そして、ある人権活動家からの引用として、「薬剤空中散布の効果についてはきちんとした評価がなされていない」と述べる。フォレロにとって、関心があるのは、コカの破壊だけであり、経済的必要性から非合法作物栽培を余儀なくされている貧困に追いやられた農民の状況ではないことは、明らかである。

ワシントンの代弁者が、その記事の最も長い引用を、米国大使館職員から取っているのは、まったく妥当なことである:

反麻薬プログラムを担当する米国大使館のある職員は、「農民たちがコカ栽培に復帰しないのは、薬剤散布飛行機があるためであり、それが唯一の理由である」と述べた。「コカ畑は莫大であり、多くの異なる所有者が所有している。そして、すべてを撲滅する必要がある。それが、この作戦を成功させるための唯一の方法だ」。
この引用に見られる偏狭な軍事主義的態度は、フォレロの記事全体のトーンを表しているばかりでなく、米国大使館が、大部分コロンビアにおける米国政府の麻薬戦争戦略をまじめに批判しない、主流メディアからの特派員を取り入れる意思をも示している。一方で、大使館は、プラン・コロンビアについて正直に批判する出版物に記事を寄稿するジャーナリストの訪問は歓迎しないのだ。

私は、ボゴタの米国大使館から協力を拒まれた独立ジャーナリストを何名か知っている。そして、私自身、過去2回にわたるコロンビア訪問の前、訪問中、そして訪問後、大使館の大麻薬担当官とのインタビューと、続けられている薬剤空中散布についての情報を得ようとして、何十回も、大使館に連絡を取った。最初のリクエストを出してから、既に6ヶ月以上がたっているが、まだ大使館からの返事は来ていない。インタビュー設定担当のある大使館職員は、包み隠さずに、彼は私の仕事をしっており、それをよく思っていないと明言した。

こうしたメディアの検閲が米国民主主義を弱体化させることは明らかで、それはまた、公式プロパガンダを繰り返す意思のあるメディアにしか情報を提供しない、専制主義的政府が用いる戦略を思い起こさせる。すなわち、市民に対して説明責任を持つとされている選挙で選ばれたり指名されたりした職員たちの行為について、人々が情報に基づく見解を形成することができるために、米国政府の政策について異なった見解へのアクセスを米国市民に保証するかわりに、政府は、自分自身の政策を継続して適用するために、情報の流れを制限しているのである。こうしたプロパガンダ戦略が効率的であるために、米国政府には、いわゆる「尊敬できる」メディア組織に働く代弁者が必要である。ホアン・フォレロは、米国のコロンビア政策において、この目的に奉仕している。


  益岡賢 2002年9月10日

一つ上へ] [コロンビア・ページ] [トップ・ページ