地方官僚は、ゲリラによる脅迫とプラン・コロンビアとに反対の声をあげる

2002年8月12日
ギャリー・M・リーチ
コロンビア・ジャーナル原文


アレバロ・ウリベがコロンビアの新大統領として宣誓就任したその日、私は、ゲリラの脅迫のために逃げることを余儀なくされた多くの地方政府職員の一人と会った。リゼット(彼女は安全のために本名を明かさないよう求めた)は25歳で、南部プツマヨ州の地方議会の議長である。コロンビアにおける何百人もの地方政府職員同様、彼女は、最近、コロンビア革命軍(FARC)から、現職を辞任するか死ぬかという最後通牒を受け取った。最初、彼女は脅迫を無視したが、その後、地域から逃げ出さざるを得なくなった。以下のインタビューで、リゼットは、ゲリラの脅迫と、プラン・コロンビアの破滅的影響とについて、自分が属するコミュニティから遙か離れた隠れ場所で、話をしてくれた。


質問(Q):プツマヨでのあなたの公的な立場は何ですか?

回答(A):私が住んでいる、高地プツマヨ(upper Putumayo)のシブンドイ谷のコミュニティにおける、地方議会の議長です。私はコミュニティと、そして色々な組織と一緒に働きます。そして、私は、プツマヨ州全体に40のグループを持つ基金とも働いています。私はまた、カンペシノの組織ANUCともともに働いています。

Q:何故、プツマヨを離れたのですか?

A:2002年7月28日にプツマヨを離れました。というのは、私は、FARCによる嫌がらせと脅迫を受けていたからです。それは何よりも、私がしていた仕事のためでした。第二に、それはコロンビアの状況によるものです。FARCは、手紙やその他の手段で私たちを脅迫することで、政府に圧力をかけているのです。FARCは非武装地域を失い、政府との交渉による合意に到達しませんでした。そのため、戦争が続いています。

Q:プツマヨでは軍や警察があなたを保護しなかったのですか?

A:いいえ。十分な人員がいないのです。脅迫を受けている私たちのコミュニティを守るためにいる警官はたった26人です。最初に脅迫を受けたとき、まさか殺されることはないだろうから、保護はいらないと思いました。けれども、最後に脅迫を受けたとき、ある男が私に会いに来ました。彼は、町の他のふつうの人々と同じようでしたので、ゲリラだとは思いませんでした。彼は私に聞きました。「あなたはどうするのですか?ここを去るのですか、残るのですか?辞任しましたか?」私は彼に、何故そんな質問をするのか聞きました。何を知っているのか、ゲリラは近くにいるのか、と。彼は、ゲリラはいつも武器を持っていると思っているのかと私に聞きました。彼は武器を持っていませんでしたが、ゲリラであるかも知れないというのです。「ゲリラは、人々を処刑するときに武器を携行する」と彼は言いました。「あなたの命は、人々のおかげで尊重されているのだ」とも。彼がそこにいて、警察は近くにいましたが、彼を警察に通報することはできませんでした。そうしたら、ゲリラが私を殺しただろうからです。彼は、ゲリラは、街角で見かける人々と同じに見えると言いました。誰もがゲリラであり得る。そのため状況はもっと難しいものとなりました。というのも、誰も信用できないからです。あなたの最良の友人がゲリラやその通報者だったりするのです。とても複雑です。

Q:隠れている間、何をしていますか?

A:脅迫を受けた後、他の4つの町の議員たちと会って、この問題の解決を見つけようとしました。ゲリラは死を逃れるために辞任するよう強要し、さもなくば軍事標的となると言っています。けれども、中央政府は、私たちの辞任を受け入れませんでした。私たちが辞任すると、政府の機能を失うからです。私たちは替わりの手段を考え、この地域を見捨てた政府から確約を得なくてはなりませんでした。政府はケシが栽培されている高地にお金をつぎ込んでいますが、地域全体にではありません。けれども、私たちもまた、薬剤散布の影響を受けているのです。150家族以上が−その多くはコカを栽培していたのですが−低地プツマヨを追い出され、シブンドイ谷に移ってきました。高地プツマヨに移ってきた多くの人々が、コカを栽培しています。私たちは、人々に他の手段を提案しようとしており、当初、政府も私たちに注目しましたが、結局何もしませんでした。現在、地方政府職員は逃げなくてはならないため、すべてが麻痺状態にあります。私たちは政府に対して、命を危険にさらさずに解決策を探すことができるよう、しばらくの間地方議会は地域から離れて活動することを提案しました。

Q:隠れてから、FARCの脅迫を受けましたか?

A:ここでは状況は改善されています。別の場所にいたとき、私がどこにいるかの情報が漏れたため、少し問題が起こりました。けれども、今、私はとても注意しています。そして私がいる場所は、誰も私がいるとは思いもよらないところです。私は近しい人としか話をしません。

Q:地方政府職員がいなくなったコミュニティで、FARCは新たな政府を設置しているのですか?

A:FARCは、体制を攻撃していると思っていますが、実際には人々を攻撃しています。FARCには提案があるようですが、詳細は知りません。噂を聞いただけです。FARCは、南部コロンビアを分離する提案をしたようです。FARCは、自分たちの統治地域を得るために、政府機構を破壊したがっています。FARCは自らの提案を小さな町に適用し、政府の一形態として行政委員会を造りました。市長ではなく行政委員会委員長を置くことを提案し、委員会の半分は市民から、残りの半分はゲリラから構成することを提案しています。この委員会が、事態をどうするか決めるというのです。ゲリラは、小さな町では、コミュニティ行動委員会(Juntas de Accion Comunal)がコミュニティの指導にあたることを提案しています。けれどもこの委員会は人々の投票で選ばれるのではなく、FARCがすべての町で委員会の長を指名するのです。ゲリラはこれを代替案として提案していますが、FARCは権力を握りたいだけです。これを、中央政府に見捨てられ、軍隊のいない最も弱い地域で始めようとしています。こうした場所では、ゲリラは望むことができ、また、ゲリラを受け入れる人々の中には、唯一正義をもたらすのはゲリラだけなので、歓迎する人々もいます。

Q:政府にプツマヨ州で何をしてもらいたいと考えますか?

A:2002年8月2日、政府は脅迫を受けた市長、地方議会議員、知事たちと面会し、現状に対する打開策を考えました。けれども、政府は、さらにお金をつぎ込んで戦争を続けることを主張しました。けれども、私は、政府に戦争を続ける能力があるとは思いません。関与しているのは二つです。ゲリラと準軍組織です。FARCは、準軍組織の存在を望まないので、準軍組織が存在する限り消えることはないでしょう。そして準軍組織も、ゲリラが存在する限り消えないでしょう。私たちは、解決のための交渉を提案しました。私たち市民は武装してゲリラを攻撃するわけにもいきません。武器を持っていません。ですから、私たちは提案によりゲリラを攻撃するのです。私たちは、ゲリラに、私たちと話しをすることを求めています。そして、政府がゲリラと話をして、別の解決策を模索することを。けれども、前のように、非武装地帯をゲリラが求めることは望みません。やってみたけれど機能しなかったからです。対話のためには色々な方法があります。インターネットとか。そして、私たちは、ゲリラに、誘拐を止め、人道的な捕虜交換を行い、子供への攻撃を止め、爆弾設置をやめ、これ以上人を殺さず、私たちを軍事標的と宣言しないよう求めます。ゲリラは私たちに、逃げ出すまでに24時間の猶予を与えますが、私たちも、ゲリラに、私たちと話をしていったい何を望んでいるのか言うために24時間の猶予を与えようと思います。私たちはまた、政府の立場がどのようなものかについても正確には知りません。けれども、私たちふつうの人々、そして政府の一部として、大統領に、戦争をするのではなく、FARCと対話を始めるよう求めます。私たちは政府に何度もこれを求めましたし、FARCにも、戦争の替わりに交渉を望むのだと手紙を書きました。多くの人にとっては、戦争が解決で、実際、政府はゲリラを打倒するために、より多くの飛行機と武器を購入しています。政府は、ゲリラが最大の問題だと考えているのです。政府は、教育や保健、公共サービスや住宅にほとんどお金を投資しません。戦争にお金を使うだけです。それは私たちには受け入れられません。政府が雇用や保健、教育に投資しなければ、政府は私たちの命を犠牲にしているということです。政府が戦争をエスカレートさせるならば、私たちがとる手段は3つになるでしょう。ゲリラと行動をともにするか、準軍組織と行動をともにするか、政府に従い餓死するかです。たくさんの若者はゲリラに身を投じるでしょう。

Q:あなたのコミュニティは準軍組織と問題がありますか?

A:準軍組織が地域に現れたという噂があります。けれども、まだ攻撃は仕掛けていません。けれども、4年前に低地プツマヨに準軍組織が入ってきたとき、多くの暴力がありました。世界中の誰もが、最も暴力的なのは準軍組織だと知っています。準軍組織がプツマヨに来たとき、虐殺に次ぐ虐殺に次ぐ虐殺がありました。彼らは男性の性器を切り取り、女性の唇や腕を切り取ります。若い男性の頭を切り離し、それを母親に差し出します。準軍組織と軍は一緒です。両者は共同で行動しています。軍は、村を離れて、準軍組織が侵入し人々を虐殺することができるようにするのです。

Q:アレバロ・ウリベ大統領のもとで何が起こると思いますか?

A:彼は何を意図しているのかまだ表明していません。議会の規模を縮小し、たくさんの政府職員を首にすることを提案しましたが、失業を何パーセントも上げることになることを見ていません。何千人もの政府職員が失業し、それに対してウリベは、軍隊の仕事以外に、解決策を持っていません。ゲリラもまた、政府が戦争を求めているのか対話を望むのか出方を待っているところです。

Q:プラン・コロンビアに関して現在のプツマヨの状況はどうですか?

A:プラン・コロンビアのもとでなされた合意は実験です。政府は、プツマヨにたくさんのお金を投資すると言いました。政府は、それから、4、5ヘクタールの土地を耕作して生活しているカンペシノたちに、ヤシやバナナ、ユッカなどに作物を切り替えるよう提案しました。けれども、そうした作物を加工し売るための手段が必要です。政府はそれについては考えませんでした。ですから、プツマヨにとって、プラン・コロンビアはよいものではありません。本当のところ、プラン・コロンビアは私たちに起こりうることの中で最悪のものです。ボゴタのNGOがプツマヨを侵略したときに汚職が蔓延しました。私たちはプツマヨで人々と働くにはどうすればよいか知っていますが、プラン・コロンビアのもとで、プロジェクトを管理するために、たくさんの人々が、ボゴタをはじめとする各地からやってきました。政府はこうした組織だけに金を与えました。プツマヨを理解する人々は、プロジェクトを実行する資金を全く持っていませんでした。よい方向の変化をもたらした地域もありますが、たくさんのひどい経験がありました。例えば、ヤシ栽培です。ヤシを栽培するには2年間かかり、その間、人々は、コカ栽培を止めません。人々は、代替プログラムを活用しますが、けれども、新たな代替作物は栽培に1、2年かかるのに対して、コカは6ヶ月しかかりませんから、全面的にすべてを変えはしません。コカで100万ペソ(400米ドル)を稼いでいるのに、それを代替作物での30万ペソ(150米ドル)に変えることができる人は、ほんのわずかです。

Q:薬剤空中散布で、人々はどんな問題を被りましたか?

A:健康に対する生物学的影響と対立の激化が起きるので、誰も薬剤散布を望みませんでした。散布は土地にも人々にも害を与えます。薬剤散布で引き起こされた被害についての写真はたくさんあります。発疹ができてしまった子供たちの写真がたくさんあります。プラン・コロンビアに抗議するためにこれらの写真を使いました。コカ栽培という問題を解決することは必要ですが、薬剤空中散布は正しい方法ではありません。コカを栽培している農家だけに薬剤散布を行うなら良いかも知れませんが、他の農家も攻撃します。コカを買う人々が問題なのだということを理解しようとしません。薬剤散布は、コカを買っていく麻薬商人を攻撃しません。栽培している人々は、生き延びようとしているだけの、農民達なのです。麻薬商人はたくさんいて、今、第二のぷつまよいを造り出そうとしています。現在の状況のため、麻薬商人はコカ栽培を、ナリニョのバルバコアスとジョレンテに移しており、そのため、今、それらの地域が薬剤散布の標的とされ、多くのダメージを与えています。カケタ州、プツマヨ州とナリニョ州は、この「薬」が病気よりも悪いものであるため、共同で、プラン・コロンビアに抗議しています。

Q:今、プツマヨに家族はいますか?

A:はい。家族にとって状況はとても困難です。というのも、当初、私の仕事と、それが仕事なので私が辞任したがらなかったことから、私が脅迫されていました。私は2年半してきたことから反れたくなかったのです。私はお金と時間と生活を投資しました。ゲリラと接触のあるたくさんの農民と先住民が、私を殺すころが公正だとは思わないと、ゲリラに言いました。こうした農民たちや先住民の人々の行動があったので、私は殺されないのではと考えました。ですが、ゲリラが私を脅迫し、私が逃げなかったため、ゲリラたちは私の家族を脅迫するようになりました。私の家族を殺すと脅迫することで、私を追い出せると考えたのです。私は、話をできると思いました。そして、何故ゲリラが私を脅迫し、何故私がプツマヨを離れなくてはならないのか知りたかったのです。というのも、私たちは、良いことをたくさんして、人々に仕事を造り出したのですから。私たちは、良いことを実行してきた強力な組織を育てました。けれども、ゲリラと接触のある人々は、それこそが、私が去らなくてはならない理由だと言いました。というのも、もし私がいなければ、ものごとを行う地方職員がいなくなり、人々は政府に支援を頼まざるを得ないからです。私は自分の命も、他の人々の命も危険にさらしたくありませんでした。ゲリラたちが、私の家族を殺すと脅したならば、それができることを知っていました。ですから、私がプツマヨを離れ、ここあるいは他の国で働き自分を守るほうがよいのです。

Q:あなたと家族が別の国で亡命資格を得る可能性はどうですか?

A:いくつかの国ではある程度の可能性があります。カナダにプログラムがあり、コスタリカにもあります。そして、家族と一緒に行くことができます。けれども、私はコロンビアを離れたくはありません。私はここにいたいのです。というのは、私がここでしたことすべてを置いて行くわけにはいかないからです。政府は、私が決断しなくてはならないと言います。というのも、ここにいる限り、私も家族も保護できないからです。どうなるでしょう。コロンビアを離れるにしても、コロンビアのために働き続けることができる国を見つけたいと思います。


  益岡賢 2002年8月13日

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