コロンビアにおける子供の売春と闘う

2002年4月29日
ギャリー・リーチ
コロンビア・ジャーナル原文

過去15年間国を覆った暴力により、地方に住むコロンビア人のうち200万人以上が家を追われることとなった。その多くは、現在、コロンビアの大都市の馴れない脅迫的環境で生き延びるために奮闘している。失業率が20%近い状況下、追放されて都市に来た人々の多くにとって、合法的な仕事を見つけるのはほとんど不可能である。そのため、大多数はやすい物品を扱ったり路上で靴磨きをする非公式部門に従事し、また、生き延びるために犯罪に手を染めるものもいる。多くの親たちが、家族を助けるために子供たちを外に送り出し、子供たちは、盗みをしたりチューインガムやたばこを売ったり、さらに悪い場合には、自分自身を売ったりする。

コロンビアでは35000人の子供が売春に従事していると推測されている。このうち5千人から1万人はボゴタの路上にいる。ボゴタの元子供売春者に家と教育を提供している非営利組織であるレナセル基金の心理学者フアン・カルロス・カリジョによると、「路上で暮らす子供たちの多くは、暴力によりコロンビアの色々なところから追放されてきた。その多くは、家庭内の問題により、また、お金を稼ぐよう家族から強要されて売春をすることになる」という。

レナセル基金で働く人々は、夜路上に出て、子供売春者の面倒を見る。これらの人々は、レナセルのプログラムに子供が参加するよう説得するため、信頼を得ようとしている。子供が合意すると、レナセル基金の2つの家のどちらかに住む場所を与えられる。レナセルで働く6名の心理相談員と3名のソーシャルワーカーは、2年間のプログラムの一環として、12歳から19歳の子供60人ほどに対してカウンセリングを行う。プログラムに参加しているあいだに子供たちは学校にかよいソーシャルスキルを身につけるためのワークショップに参加する。子供たちはまた、レナセルのレストラン、印刷ショップ、グラフィックアート会社、テイラー、コンピュータ会社等で仕事の訓練を受ける。

レナセルはボゴタで深刻になってきた子供売春問題を扱うために13年前に設立された。共同設立者のエステレジャ・カルデナスによると、「私はある年齢を問わず売春婦と働く宗教団体のボランティアとして活動してきた。そこで路上生活をする子供売春婦の問題と出会ったが、それに対処するプログラムがなかった。私たちはこれらの子供たちに部屋を提供したが、依然として売春を続けた。子供売春者がますます増えていることに気づき、これでは問題に対処できないと気づきはじめた」という。

レナセル基金は、コロンビア政府機関やであるビエネスタル・ファミリアル及び英国、カナダ、スペイン大使館から基金を得ている。有名人の中にもレナセルに寄付をしている人がいる。マルチナ・ヒンギスもその一人で、彼女は、コロンビアでの子供売春のドキュメンタリーを見て、子供たちと話をしにきた。

レナセルはまた、プログラムに参加せずに路上で働き続ける子供売春者のための無料診療所も運営している。けれども、資金難のため、診療所の設備は限られており、ボランティアの医師に依存している。その一人、ティナ・テイカリは、ヘルシンキ出身の若いフィンランド人で、レナセルで4ヶ月間フルタイムでボランティアをしている。彼女が扱うほとんどは性感染症(STD)である。「同じ子供が繰り返しやってくるのを見ると心が痛む。私は、こうした子供たちを治療し、いつか、私が治療できない病気にかかるかもしれないと警告する。子供に対して、エイズやC型肝炎のような治療できない病気にかかっていると告げるのは易しいことではない」と彼女は言う。

家を追われたことによる心理的・経済的ストレスからばらばらになってしまう家族も多い。路上にたどり着いた、貧困状態に置かれた多くの子供たちにとって、売春は、自分たちが生きるために十分な金を稼ぐ数少ない手段の一つである。テイカリ医師によると、経済上絶望的な状態に置かれている子供たちは、「コンドームなしでセックスすることで2倍稼げる」ために、致命的な性感染症に罹る可能性が高くなる。

コロンビア大都市の路上で働くことは、地方を追われた子供たちにとって、コロンビアの暴力から逃れ一息つくことにはほとんどならない。コロンビアの都市部を「社会的に浄化」すると称し、麻薬中毒者やホームレス、窃盗者、同性愛者を標的としている死の部隊は、子供売春者をも標的としているのだ。「子供たちが銃撃の傷を負ってくることもときどきある」とテイカリ医師は説明する。「傷が酷い場合には、私は子供たちを病院に送らなくてはならないが、子供たちがIDカードやお金をもっていないとき、病院はしばしば、子供たちを追い出す」。

レナセル基金は、子供売春者に、危険で悲惨な状況から抜け出す道を提供している。けれども、プログラムを成功裡に終え、社会に復帰した子供たちも、過去とともに生きなくてはならない。テイカリ医師は「それは、子供たちが残りの人生でかかえていかなくてはならない汚点である。他の人々は売春者だったことを知らなくても、自分は知っている」と述べる。

それでも、何度も虐待を受け15歳で家を飛び出した現在19歳のカロリーナは、自分を路上から救ってくれ教育を受ける機会を与えたレナセル基金にとても感謝している。レナセルで2年間過ごしたのち、カロリーナはほぼプログラムを終了し、希望を持って世界に出てゆこうとしている。「今、私には学校の友人がいて、学校を終え、英語を学び、国立大学でビジネス・アドミニストレーションを勉強したい」。

  益岡賢 2002年5月2日

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