アチェでの拷問と殺害をめぐる行動要請

アチェ人権オンライン
2004年10月7日


犠牲者:
 カセム・ベルダン(75歳)
 ソヤン・ハミッド(22歳)
 ムハマド・イブラヒム(54歳)

侵害:
 略式処刑・拷問・失踪

やっていただきたいこと:
 国連事務総長コフィ・アナンに手紙/メールを送って下さい。
  アナン事務総長のメール:ecu@un.org
  Fax: +1 212 963 2155; +1 212 963 7055
 CCを下記にお願いします。
  atikah@kamlive.com, indonesia2@un.int
  1503@ohchr.org, polkam@polkam.go.id

ほかにできれば:
 皆さんの国のインドネシア外交代表に要請を送って下さい
 [インドネシア大使館の一覧はこちらにあります]
 この要請を多くのかたに広めて下さい。


背景:

2004年9月24日、インドネシア軍(TNI)RAIDER300部隊の兵士たちが、ジェウニエブ(Jeunieb)地方のパロー・セウリメン(Paloh Seulimeng)村に住む民間人カセム・ベルダン(75歳)を拘束した。目撃証人によると、TNIの兵士たちは、ベルダン氏に近づき、この周辺でGAM(自由アチェ運動)の基地がどこにあるか知っているかどうか聞いたとのことでである。彼は知らない、と答えた。TNI兵士たちは彼にひどい拷問を加えた。それ以来、彼がどこにいるかはわかっていない。

2004年9月25日夜8時、ビレウエン地区のマタン・ゲウルムパン・ドゥア町および他の場所に駐留しているTNI兵士たちが、アルエ・イエト村で作戦行動を行い、ブラン・ダラム村に住む民間人ソヤン・ハミッド(22歳)を射殺した。彼はTNIに軍属する民兵に参加することを拒否したため、TNIは彼のことをGAMのメンバーと非難していた。

2004年9月25日午前0時10分、TNIの兵士たちは、パヤ・カリエン村に住む民間人ムハマド・イブラヒム(54歳)を拘束した。彼は、アチェ民族軍のサバン地方作成司令官であるアストラ・ムハマドの父親である。

TNI兵士たちはイブラヒムをサバンの警察本部(Mapolres)に連れて行き、そこに拘束して残忍な拷問を加えた。2004年9月25日土曜日の午前11:00分に彼は釈放され、自宅に帰った。2004年9月28日、村の夜回りをしているとき、彼は再び拘束され、サバンのMapolresに連行された。TNIとPolriの要員は、再び彼にひどい拷問を加えた。

2004年9月30日木曜日、サバンのMapolresの警察がイブラヒム氏の自宅を訪れ、妻に、イブラヒム氏は重体でサバン病院に入院していると告げた。妻は病院に駆けつけたが、夫は既に死んでいた。彼の状態は極めて恐ろしいものだった。体中に、様々な拷問により付けられた傷があった。頭と顔は、硬い物で殴られた傷があり、体中をナイフで切り刻まれていた。妻が来る数時間前に彼は死亡していたと考えられている。家族が彼の遺体を引き取った。人々から集められた情報によると、サバンのMapolresには、GAMのメンバーだとか支持者であると非難されて拘束されている人々がほかに少なくとも6人いて、ひどい拷問を受け続けているという。

「2003年5月以来、インドネシア政府は、GAMのメンバーだとか支持者だと非難して推定2000人もの人々を逮捕した。GAMのメンバーであることは、インドネシア法のもとで犯罪にはならないにもかかわらず、アチェでは何百人もの人々が裁判を受け有罪判決を下されている。基本的な罪状は「マカル」、英語で「反逆」といった意味である。軍と警察の拘留所では拘束された人々に対する拷問と重大な人権侵害は、アチェそしてインドネシアの他の地域の大部分----とりわけ紛争地域----でも、遙か以前から日常化している。

2001年11月、国連の拷問禁止条約のインドネシア国内での実施に関する報告を受けて、国連の反拷問委員会は、「警察----とりわけ警察機動隊(Brimob)、軍(TNI)、当局と結びついていると言われる準軍組織のメンバーが、武力紛争地域(アチェ、パプア、マルクなど)で、拷問と虐待を行なっているとの訴えが多数ある」ことに憂慮を表明している。

同委員会は、インドネシア当局がこの問題を解決し、拷問禁止条約批准国としてその義務を果たすために採るべき手段について勧告を行っている。勧告には、刑法を改定し、拷問をはじめとする残忍で非人道的、品位を傷つける扱いや処罰を厳しく禁ずること、虐待や拷問が行われたとの主張に対して迅速・公平かつ効果的に調査を行えるような効率的で信頼の置ける独立の苦情調査体制を確立すること、裁判前の拘禁時間を減らすこと、拷問の証人と犠牲者に十分な保護を保証すること、拷問者に対するもの以外は、司法手続きにおいて拷問下でなされたいかなる言明も考慮対象外とすること、拷問に関する国連特別報告者の訪問を受け入れること、が含まれている。

2004年9月のヒューマンライツ・ウォッチ発表によると、「今日まで、これらの勧告のどれ一つとして実現していない」。


手紙例文:

Mr KOFI ANAN
Secretary General of the United Nations
ecu@un.org

Dear Mr Kofi Annan,

I call on The Special Rapporteur on Torture on the UN Commission on Human Rights to come to Acheh and conduct the necessary investigation into the following cases of extrajudicial killing, torture, death in detention and disappearance:

On 24 September 2004 TNI troops of RAIDER 300 Unit arrested a civilian, Kasem Berdan, 75, resident of Paloh Seulimeng village, Jeunieb district. According to eyewitnesses, the TNI troops approached Mr. Berdan and asked him if he knew the whereabouts of GAM base in the area. He said he did not know. The TNI troops severely tortured him and until now his whereabouts are unknown.

On 25 September 2004, at 8:00 pm, TNI troops posted in Matang Geulumpang Dua town and in other places in Bireuen regency, conducted an operation in Alue Iet village shot dead a civilian, Soyan Hamid, 22, resident of Blang Dalam village. He refused to join the TNI embedded militias and the TNI accused him of being a member of GAM.

On 25 September 2004, at 00.10 local time, TNI troops arrested, at his home,a civilian, resident of Paya Karieng village, Suka Jaya, Sabang, Mr Muhammad Ibrahim 54. father of Astra Muhammad, operation commander of Acheh National Armed Forces in Sabang Province.

TNI troops took him to Police Resort Headquarters (Mapolres) in Sabang where they brutally tortured him during the detention. On Saturday, 25 September 2004 at 11:00 he was released and returned home. On Tuesday, 28 September 2004, when he was conducting the night watch in the village, he was arrested again and detained at Mapolres Sabang. The TNI/Polri personnel again inflicted severe torture on him.

On Thursday, 30 September 2004, police of Mapolres Sabang visited Mr. Ibrahim's home to inform his wife that Mr. Ibrahim was seriously ill and was hospitalised at Sabang Hospital. His wife rushed to the hospital but found her husband had already died. His condition was very heartbreaking. His entire body bore wounds and injuries from various methods of torture. On his head and face there were wounds of beating by a hard object, his body was full of knife-cuts. It is believed he died several hours before his wife arrived. Now his family has taken his body. According to information collected from the people, there are, at present, 6 other prisoners accused of being GAM members or supporters being detained in Mapolres Sabang and continuously tortured severely.

Yours sincerely
[あなたのお名前]

コピーを以下に送って下さい:

Mr ABDUL HAKIM GARUDA NUSANTARA SH. LLM, インドネシア国家人権委員会書記長
atikah@kamlive.com

H.E Mr. MAKMUR WIDODO, インドネシア国連大使
indonesia2@un.int

Mr Mike Smith, 国連人権委員会委員長
1503@ohchr.org

Mr HARI SABARNO, インドネシア政治治安相
polkam@polkam.go.id

手紙の日本語:

私は、国連人権委員会の拷問に関する特別報告者をアチェに派遣し、下記の超法規的処刑、拷問、拘留所での死、失踪について必要な調査を行うよう求めます。

第2段落から第5段落までは、「背景」で述べた3人に対する拷問、失踪、処刑、殺害が、ほぼそのまま書かれています。

緊急要請の担当組織:

「アチェ人権オンライン」(AHRO)および「アチェ危機下の女性達」(AWIC)は、オーストラリア・アチェ人協会の下位組織。メールは:
achehcomaust@hotmail.com
ahro_aca@hotmail.com
awic_aca@hotmail.com


拷問。これまでインドネシア国内で人権活動家や民族主義者などに対して累々たる拷問とテロを加えてきたインドネシア軍は、アチェの自由アチェ運動(GAM)を「テロリスト」と呼び、アチェ民間人に、超法規的処刑、拷問、不法拘留などを繰り返しています。

それは、イラクで米軍が行なっていることに、うり二つです。そしてまた、イスラエル軍がパレスチナでパレスチナの人々に対して行なっていることを思い起こさせます。

現在、アチェは密室状態に置かれており、内部からの、とりわけ「大手メディア」の情報は非常に限られています。インドネシア軍はアチェを侵攻する際、米軍がイラクで採用した「軍属メディア」システムを借りてきて強化し適用したためです。

この点でも、米軍のイラク占領とインドネシアのアチェ侵攻とはよく似ています。

こうした状況で持ち出された情報です。できるだけ広めていただけると幸いです。

日本では、武器輸出を部分解禁する動きが急速に現実化してきています。日本とインドネシアは大の仲良し。日本製の武器が、そう遠くない将来、たくさんのベルダンさん、ハミッドさん、イブラヒムさんたちへの拷問や殺害に使われることになりそうです。

ブラジルで拷問を受けたフレッド・モリスさんの言葉を繰り返しておきます:
拷問は、「内政問題だ」とか一過的なものだとしてそれを無視しようとする人々も、非人間化する。そのような無関心は人間の共感や思いやりの泉を枯渇させ、人類家族の全員に関する世界コミュニティとの社会契約を破ることになる。文明と自由は、無関心な態度をあたりまえとする人々により育まれたのではないし、そうした人々によって維持されることもない。
イラクの状況については、ファルージャブログで更新中です。米軍が様々な都市に空襲をはじめとする攻撃を行い、民間人を無差別に殺している中、こちらもチェックしていただけますと幸いです。
  益岡賢 2004年10月9日

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