誰が過激派か?

ジョン・ピルジャー
2003年8月22日
ZNet原文


イラク「解放」は攻撃対象となった人々にとって、残忍なジョークである。米国と英国という巨大な犯罪のパートナーは、中東と世界のその他の大部分に、アルカイーダが想像の中でしか出来なかった規模のテロリズムと苦痛の展望をもたらした。

これが、今週[8月29日]起きたバグダッドの国連本部爆破という惨劇が我々に語っていることである。

元国連人権高等弁務官メアリー・ロビンソンは、これを「モーニング・コール」と呼んだ。

むろん、彼女は正しい。けれども、同様のモーニング・コールを、7カ月以上前、まだ殺害が始まる前に、ロンドンや世界中の路上で、何百万人もの人々が鳴らしていたのである。

けれども、米英の捏造機械は、機械の小さな歯車がハットン卿率いる独立調査委員会により暴かれているとはいえ、今も生産活動を続けている。

ブッシュ政権とブレア政権によれば、国連の事件を行なったのは「外部から来た過激派」であるという。アルカイーダのテロリストかイランの戦闘的分子か、その両方か。

外部の関与があったかどうかにかかわらず、このプロパガンダの目的は、米国と英国が現在古典的なゲリラ戦---歴史が始まって以来外国の侵略者や植民地支配者に対して行われてきた抵抗と自決の戦争---の中に引きずり込まれているという真実から注意をそらすことにある。

米国にとって、もう一つのベトナムである。英国にとって、もう一つのケニア、あるいはまさにもう一つのイラクである。

1921年、スタンリー・モード准将は、バグダッドで次のように言った。「我が軍は、征服者として来たのではない。解放者として来たのだ」。

それから3年のうちに、英国に対する蜂起で、1万人が死亡した。英国が「テロリスト」たちに毒ガス攻撃を浴びせ、爆撃したのである。

何も変わっていない。名前と嘘の微妙部分が変わっただけである。

「外部から来た過激派」については、単に向きを変えれば、挑発を受けたわけでもないのに防衛能力のない主権国家を攻撃し、国連と人類の大多数の反対を拒絶した現在の占領者たちの、簡潔な記述となっていることがわかる。

クラスター爆弾やウラン加工砲弾やナパームなどの、人々に最大の苦痛を引き起こすよう設計された武器を使い、これらの外部から来た過激派は、少なくとも8000人の民間人を殺害し、最大3万人の兵士に死をもたらした。兵士たちのほとんどは、徴兵された十代の若者たちだった。この大虐殺がどんな社会においてであれ引き起こすだろう悲しみの波を考えてみるとよい。

「勝利」の瞬間、これら外部から来た過激派たちは---12年間の爆撃と経済封鎖でイラクのインフラを既に破壊していた---ジャーナリストを殺害し、銅像を引き倒し、大規模な略奪を唆す一方、自分たちが電力と浄水の供給に与えたダメージに対する最も基本的な人道的修復をさえ拒否した。

このため、今日、病気になった子供たちは渇きや胃腸炎で死亡し、病院では頻繁に酸素が不足し、救えたかも知れない人々が救えずに亡くなっていく。

このようにして、どれだけの人々が死んだことだろう?

「我々はねじ回し全部の数を数えたが、進軍途上で死んだ民間人を数えるのは我々の方針ではなかった」と、ある米国大佐は、第一次湾岸戦争時に述べている。

イラク占領のために1月50億ドルを費やしているという地上最大の軍事マシンは、どうやら40度をゆうに超える温度に耐えなくてはならない人々に発電器をもってくる資源も人員もないようである。人々の半分近くは子供で、UNICEFによれば、その8%は重度の栄養失調にかかっている。

イラクの人々がこれに抗議したとき、外部から来た過激派たちは人々を射殺した。

この過激派たちは群衆の中で人々を殺し、個別に殺し、そしてそれを自慢している。

先日、タスク・フォース20という米軍「エリート」部隊が、道を車で走っていて、少なくとも5人の人々を殺した。

その翌日、別の道で、女性一人とその子供3人を殺した。

この部隊の隊員たちは、アメリカ人たちがラテン・アメリカで訓練している死の部隊と変わらない。

これら外部から来た過激派たちは、こうした行為を何の咎もなしにやりおおすことができる。一部には、ロンドンとワシントンで嘘の網が張り巡らされているからであり、また一部には、こうした嘘を自ら進んで繰り返し増幅する人々がいるからである。

現在ブレア政権とBBCが行なっている口論から、新たな神話が生まれ出てきた:BBCがこれまでも、また現在も「反戦」だという神話である。

まさに、ジョージ・オーウェルが「公式の嘘」と呼んだものである。再び振り返れば本当の真実がわかる。BBCがブレアの戦争を支持したこと、来る日も来る日も、BBCは大量破壊兵器を巡る三文芝居を放映し「議論」し正当化し、ブッシュもブレアも同様の戦争屋であるにもかかわらず、ブレアはブッシュを「穏健化する影響がある」と描くようなナンセンスを放映し合法化したことが、わかる。

BBCの主任政治特派員が「同盟軍」の勝利に際して狂喜したことを、誰が忘れられるというのだろうか。彼は、トニー・ブレアは「自分たちはバグダッドを大量虐殺なしに占領し、最後にイラクの人々はそれを祝福するだろうと述べた。そしてこのいずれの点についても、彼は完全に正しいことが証明された」と宣言していた。

「正しい」を「誤っている」に置き換えると、真実が得られる。ダウニング街のBBC屋にとって、4万人にも達しようとする死者は、どうやら「大量虐殺」には入らないようである。

米国の調査機関メディア・テナーによると、BBCは、米国TVネットワークを含め、調査対象となったどの主要な国際放送局よりも、戦争に反対する声を許容しなかったという。

英国政府の「不法な調書」に関するデビッド・ケリー博士の心配を暴いたBBCの記者アンドリュー・ギリガンは、ほんの僅かの独立派の一人であり、公式の「真実」に挑戦した都合の悪い人物であった。

最も重要な嘘の一つは、サダム・フセインをアルカイーダの関係である。

今我々が知っているように、ブッシュもブレアも、自分たちの諜報機関の助言を無視して、この関係を公言した。

それはうまく行った。イラク攻撃が始まったとき、世論調査は、ほとんどのアメリカ人が、サダム・フセインが2001年9月11日に起きた事件の背後にいると信じていたことを示している。

真実は正反対である。怪物的ではあったが、サダム・フセイン体制は、アルカイーダ及びイスラム過激主義に反対する文字通りの要塞だったのである。サダムはかつて西洋の手下であり、1980年代、米英が彼を頭のてっぺんから足の先まで武装したのである。というのも、彼は石油と大量の金を持っており、また、イランや中東の他の地域の反西洋ムラーの敵だったからである。サダムとオサマ・ビンラーディンはお互いに強く憎みあっていた。彼の重大な過ちは1990年にクウェートを侵略したことにあった。クウェートは米英の保護領であり、中東における西洋石油帝国の一部であった。

今週[2003年8月19日]バグダッドの国連本部で起きた殺害は、イラクでの他の何千人もの殺害と同様、ブッシュとブレア、そして二人の国につながる血の跡を作り上げている。

世界中の何百万人もの人々にとって、もし米英がイラクを攻撃したならば、イラクとイスラム・テロリズムの間にあった作り事の関係が実際に生まれるだろうことは明らかであった。

イラクの残忍な占領---占領下で子供たちは米国人に射殺されたり逮捕され、数え切れない人々が集中キャンプに「失踪」している---は、イラクを聖なるジハードの一部と見なすようになった人々に対する、公開招待状のようなものである。

数年前、イラクを随分旅したとき、私は全く安全に感じていた。どこへ行っても親切に礼儀正しく迎えられた。私自身の国の政府が、ホストを爆撃し包囲していたにもかかわらずである。

ブッシュとブレアの役員たちは、ほとんどのイラク人が、サダム・フセインにも自国が侵略されることにも反対していたことを隠蔽した。

ヨルダンから英国まで、何千人もの亡命者たちが、このことを繰り返し繰り返し述べていた。

誰がそれに耳を貸しただろうか?いったい、BBCはいつ、サダム・フセインに関する反キリスト・ドラムビートの手を止め、この決定的なニュースを報道しただろうか?

国連もまた、今週の見出しが言うような「平和構築者」でも「建国者」でもない。

バグダッドで死亡した人々の中には献身的な人道主義者もいた。けれども、12年以上にわたって、国連安保理は、ワシントンとロンドンの手により操縦されるがままにされ、それにより両国は、イラクの人々に、国連の旗のもとで、中世の包囲にもにた経済封鎖を強制することができたのである。


誰が過激派か?

イラクを廃国にしたのはこの政策であり、皮肉なことに、このために全てのイラク国内権力はサダム・フセイン体制の手に握られることとなり、蜂起の成功のあらゆる希望が失われた。

先日、私は、元国連事務総長補佐デニス・ハリデーとニューヨークで話をした。ハリデーは1990年代中頃、イラクで上級国連職員の立場にあり、経済封鎖を運営するよりも辞任することを選んだ人物である。

「この経済制裁は、イラクの人々に対する戦争である。私が見るところ、数年にわたる制裁は、ジェノサイドといってよい影響を与えており、国連安保理は、十分に影響を知りながら制裁を維持している。とりわけイラクの子供たちに対する影響を」と、彼は語った。

「我々は自分たち自ら掲げる憲章と国際法を無視し、恐らく100万人以上を殺した」。

「この悲劇は忘れられることがないだろう・・・・・・私は、イラクの人々が占領軍を追放すると信じている。どれだけ長くかかるかはわからないが、民族主義的な力で、占領者を追放するだろう」。

「イラク人は、自国に外国の軍が駐留して自分たちの生活や文化、未来、政治を指示することに我慢しないだろう」。

「人々はとても誇り高く、偉大な歴史を意識している」。

「事態は全く受け入れがたい。ブッシュが習慣として現在脅しつけている国の一つ一つが、我々にとっても侮辱となっている」。

「かくも危険な人物がアメリカ人の命、そしてさらに悪いことに他の人々の命を喜んで犠牲にしようとしているときに、我々は黙って傍観し手をこまねいているべきだろうか」。


日本は自ら掲げる憲法と法を無視し、イラク侵略に荷担し、占領に自衛隊を派遣しようとしています。ゴミのようなニュースを垂れ流しながら金集めだけは熱心な「公共(ママ)放送局」に助けられ、嘘の上に嘘を重ね、詭弁と開き直りで議論を無化しつつ。多くの介入や侵略が「人道的動機」の装いのもとになされてきたこと、しかも困ったことにそれを信じていた者たちが少なからずいたこと、自ら過激ではないと考え・自らがなし得る悪の可能性を過小評価する際、人間は最も過激な悪行をなしがちであること、いずれも嫌になるほど繰り返されてきた教訓ですが・・・・・・

  益岡賢 2003年8月30日

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