0 『宇宙開発戦争』

ヘレン・カルディコット&クレイグ・アイゼンドラス著
植田那美+益岡賢訳
作品社 2400円+税
2009年3月28日発売
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紀伊國屋書店
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本書は、現在、米国が強引に進め、それがきっかけでロシアやEU・中国なども巻き込んで進められる宇宙の軍事化と宇宙戦争の可能性を綿密に論ずるとともに、宇宙軍拡が平和的な宇宙開発と地上の世界にもたらす影響を検討した北米ベストセラーの日本語版です。

奇しくも、朝鮮民主主義人民共和国が打ち上げを計画している人工衛星に関して、日本ではそれをミサイルと決め付けた上での、扇情的に敵対心を煽る報道が跋扈し、宣戦布告にも類する「対応」体制がゴリ押しされています。

その背景は何か。日本では誰がそれで儲かるのか。年間3万人を越える自殺者が出て、1700万人の非正規雇用者がいて、数百万人とも言われる人々が貧困に追いやられる構造が存在する中で、ミサイル防衛は何を守ろうというのか。

本書は、冷静に事態を把握して状況を考えるために必須の情報を提供するものと思います。また、宇宙の平和的利用の方向性についても、いろいろなヒントに満ちています。

『宇宙開発戦争』を読まれたのち、日本の方向性について考えるためには、ぜひテーマはまったく違いますが、雨宮処凛さんの『プレカリアートの憂鬱』を読んでみて下さい。

なお、本とは関係ありませんが、朝鮮民主主義人民共和国の衛星打ち上げ実験をめぐっては、訳者あとがきβ版さんの「朝鮮の人工衛星を利用した日本政府の好戦的政策をやめさせよう!」、私にも話させてさんの「朝鮮総連の資産凍結」、浅井基文さんの「朝鮮の人工衛星打ち上げ計画と日本の異常な反応をどう見るか」もご覧いただけると幸いです。

益岡賢 2009年3月31日

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