WTO  
農業についての国際専門家パネルの報告書
2008年8月21日

 さる4月15日、ヨハネスブルグの会議で、農業に関する注目すべき報告書が発表された。それは、「開発のための農業科学技術の国際的評価(IAASTD)」と題する報告書である。
これは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の農業版である。IPCCと同じく、独立したパネルである。しかし、IPCCと異なるところは、単に科学者の集まりではなく、さまざまな農業の関係者が参加している。
 このIAASTDの事業のスポンサーはFAO、GEF、UNDO、UNEP、UNESCO、世銀、WHOなどの国際機関である。
 報告書は、「飢餓、貧困、社会的不平等、環境の持続可能性を解決するためには、農業政策とその施行のラディカルな変革が必要である」と結論づけている。
 この報告書は、2005〜2007年の3年間、400人の筆者によって書かれた論文をまとめたもので、最終作業は。54カ国の政府が出席したヨハネスブルグでの会議で作業が行なわれた。
 カナダ、オーストラリア、英国、米国が報告書の署名を留保した。またアグロケミカル、遺伝子工学業界が報告書から脱退した。とくにGM農業こそが飢餓を救う道であると主張した。
 英国環境・食糧・農村問題省のチーフ・サイエンティストであり、IAASTDの事務局長を務めるRobert Watson教授は、「“ビジネスはいつもの通り”は選択肢ではない」と語った。Watson 教授は、IPCCの前会長であり、IAASTDの方法論はIPCCに似ている。
 「ビジネスはいつものとおり」とは、工業的農業のことである。肥料、農薬やエネルギーを多用し、小農経営を縮小させるというシナリオはもはや時代遅れである。これまでの農業生産性向上は一定の成果を挙げたが、これには環境破壊、社会的な不平等という犠牲を伴った。報告書は、極端な、急速な貿易自由化は食糧安保、貧困根絶、環境保全を不可能にしたことを認識した、と述べている。
 IAASTD報告書は、小農民育成のために農業投資、公的資金供与、調査研究、政策のフォーカスなどを再検討しなければならない、と述べている。
 さらに報告書は、天延資源の保存、農業エコロジーの実戦、コミュニティの伝統的知識の再認識などにより大きな関心が払われるべきだと述べている。