WTO  
IMFのマリ国営綿花会社の民営化プログラム
2005年11月22日


2005年5月、IMFは『第一次マリ政府とのIMFプログラム評価』報告書を発表した。
その内容は、次の通り。

  IMFの財政緊縮プログラムは、マリ政府が支出をGDPの1.3%を削減すること。
  EUがマリのGDPの0.9%に当たるグラントを供与し、これを、綿花買い付けの国営会社である「マリ繊維開発会社(CMDT)」の赤字補填に当てることによって、同社の民営化を推進する。(ちなみに、米国はWTOの農業協定(AoA)に、このような国営企業を非合法化する条項を盛り込もうとさえしている)
  世銀が、それ以前の05年2月に発表した『グラントのついての資料』によると、もしEUのグラントが供与されない場合、貧困削減プログラムは達成されない、と書いてある。 
  しかし5月のIMFの資料では、財政支出の削減は不可避である、と言うのだ。

  マリの危機はかなり深刻である。今年のODA収入を除いた経常収支はGDPの7%にのぼる。さらに、金の輸出が減少し、綿花輸出価格が下落し、財政の歳入がうまくいかず、石油価格が高騰しているために、これからさらに悪化することが予想される。

  IMFはマリ政府に以下のようなプログラムの実施を要求している。
―教育と保健衛生部門の賃金支出を削減すること。(これは今回の債務帳消しでこの部門への支出は増額されたばかりである)
―農業関係の銀行から農業生産に関する融資を受けるときにこれまで供与されてきた税金の免除とBAT税の免除を廃止すること。
―インフォーマル部門への課税を広げること。
―石油に対する補助金を廃止し、逆に課税することにより、石油価格の高騰を消費者に転嫁すること。また、石油に課税した分を綿花部門に支出する。
―公務員の年金基金への交付金を削減すること。200年12月末までに新しい年金制度の法律を草案すること。その草案の趣旨は、政府に年金についてのすべての権限を与えるところにある。(同時にマリには外国の保険会社が設立された)
―これまで社会的弱者を保護するものとして導入されてきた社会的安全網基金への財政支出を削減すること。
―電気料金への政府補助金、とくに貧困層に対するものを削減すること。
―ODAによるプロジェクトの能率化をはかることと、政府の資金をこれらのプロジェクトにこれまでより多く支出すること。そのための行動計画を2005年の6月半ばに作成すること。
―2005年中に国営の綿花種油製造会社(HUICOMA)と綿織物工場を民営化すること。
―市中銀行に政府が持っている株を売却すること。一方、マリ・インターナショナル銀行の買収は2005年6月までに完了すること。
―CMDTの民営化の戦略とタイムテーブルを作成すること。IMFと世銀は長年、マリ政府にCMDTを売却の圧力をかけ続けてきた。今回はデッドラインを決めた。しかし、買い手は依然として見つからない。

  IMFは、これまでCMDTの民営化への1歩として、マリ政府が、IMF、世銀、EU、フランスとオランダ政府からなる綿花買い上げ価格の決定機関を設立するように圧力をかけてきた。この機関は綿花の世界価格の決定にシグナルを送るものだと言う。しかし、実際には米国政府が多額の綿花輸出に補助金を出していて、綿花価格を暴落させているのだ。
  この機関は、マリ政府が綿花生産に対する財政支出を削減することに主な目的がある。
マリのBakarTraore財務大臣は、来季の綿花の生産者価格は、2006年度予算の均衡をはかるため、下がるだろうといっている。
  米国は、WTOの農業協定交渉では国営企業を非合法化しようとしている。一方では、過去20年にわたって、IMF・世銀は国営農業市場と貿易の自由化を促進しようとしてきた。たとえば、ここ5年ばかり、以下のような方法で圧力をかけてきた。
  2000年、世銀は、綿花武門の市場改革を目的にした、「開発政策文書(LDP)」を途上国政府が受け入れることを義務化した。LDPは政府の意思にもとづくとされたが、実際には、世銀が作成したものである。
  2001年、世銀の第3期政策融資供与の条件として、CDMTが綿織物生産と製品販売事業だけに主力を注ぐことを義務化した。
  2003年には、CMDTがこれまで手がけてきたインフラ建設、土地開発、社会サービス、ポスト・ハーベスト加工事業、綿花種の輸送などの活動を政府に移管することを義務化した。
その結果、2004年には、貧困削減のための支出は6.5%減少した。
  また、LDPには、HICOMAの民営化にも言及している。政府は、同社の12%以上の株を保有してはならないとしている。