WTO  
ドーハWTO閣僚会議の向けて その4
2001年9月
 

1) フランスがドーハ会議の延期を主張

 9月7日、EUの貿易相がベルギーの古都ブルージュで、ドーハのWTO閣僚会議に
ついて非公式に協議した。
 フランスのFrancois Huwaert貿易相は、今年11月のドーハ会議では、新ラウンドの開始に同意を得るのは困難であり、1年先に延ばすべきである、と爆弾発言をした。シアトル会議が流会になって以来、新ラウンドについては全く前進していない、したがって、ドーハでも同様に失敗するというのが、フランスの反対の理由である。「ドーハでオール・オア・ナッシングの状況に負いこむべきでない」とHuwaert貿易相は言った。明らかに、フランスはEUが、新ラウンドの開始に圧力をかけていることに、神経質になっている。
実際、新ラウンド、すなわち、より一層の貿易自由化に向けてドライブをかけているのは、
EUの貿易交渉代表のPascal Lamyと米国通商代表Robert Zoellickの2人である。
しかしこの2人を取り巻く本国の状況もはっきりしていない。
 例えば、米国議会の多くの議員は、あまり熱心な推進派ではないのが現状である。シラク大統領は来年5月に大統領選挙を控えており、フランス農民の怒りを買うことを恐れて、農業貿易の自由化問題を議論することを避けている。
 一方、ジョスパン首相は、反グローバリゼーション派―その多くは貿易自由化に反対している―に取り入るため、通貨取引き税(トビン税)の討論を推進している。

2) ドーハは安全か?

 ジュネーブに駐在しているWTO代表たちは、公けに声をあげることをはばかっているが、ドーハでWTO閣僚会議を開催することに疑問をもっている。11月のWTO閣僚会議は、中東で開かれる最大の国際会議となる。1万人を超える政府代表、国際機関の代表がドーハに集まる。
 一方、カタールは、人口60万人、湾岸地域では最大の米軍基地がある。一方では、この米軍施設について、アラブ世界ではすでに批判がある。カタールの治安警察が米軍施設や米代表の安全を確保できるか疑わしいとの声もある。すでに早くから、レバノンのイスラム原理主義のヒズボラが、ドーハにイスラエル代表が入国することを非難していた。カタール政府は、これに対して、WTOのメンバーである限り、入国を認めざるを得ないと釈明してきた。9月11日事件以来、イスラエルに加えて、米、英代表団の安全を確保しなければならない。ジュネーブのWTOのSheikh Fahed Awaid Al-Thaniカタール大使はモア事務局長に会い、代表団でドーハ開催に反対しているものはいないか、と確かめた。モアはいないと答え、この時、ドーハを延期するという話はでなかった、と言う。
 カタールは、西側寄りの政治をとっており、報道の自由がある。国営のJazeera衛星放送を所有しており、この"自由な"報道が、リビア、イラン、サウジアラビアからしばしば抗議の的になってきた。そして、オサマ・ビンラディンのテープに吹き込んだメッセージが、海外にながれるのは、ドーハの衛星放送局である。
 カタールに逃げ込んだWTO閣僚会議に対して、NGOが抗議ボートを送ろうという計画もある。