WTO  
Food FirstがOXFAMペーパーを批判
2002年4月21日
 

 前述のOXFAMインターナショナルのペーパー、『Rigged Rules and Double Standard』に対して、カルフォルニア州にあるFood Firstが批判文を発表した。以下はその要約である。

 Food FirstのAnuradha Mittal代表は;
 OXFAMのペーパーは、貧困をなくすには経済的、社会的正義を求めるグローバルな市民の運動なしには達成できないというこれまでのOXFAM自身の言葉に反している。
 OXFAMは、これまでは、産業主導の輸出志向型生産ではなく、食糧の安全保障を要求してきた指導的なNGOの1つであったが、全く反対の立場に変わったことを残念に思う。
 「途上国はより以上のグロ―バリゼーションを必要としている」というOXFAMの主張は、「もっと市場アクセスを」という米、EUの通商代表やWTOの声に呼応するものである。
 このOXFAMの立場は、現行のルールを変え、投資や政府調達などといった新しい議題をとりあげることに反対している途上国の政府、社会運動、そのシンクタンクなどの立場と矛盾している。
 WTO加盟の途上国は、「実施アジェンダ」と呼ばれる105項目の合意項目を発表している。その中には、国内の食糧安全保障を確保する補助金制限を撤廃することなどが含まれている。
 農産物の世界貿易は、貧しい農民に新しい市場アクセスをもたらすものではなく、むしろ、農民が自身の家族やコミュニティのために食糧生産をすることを妨げる結果となっている。現実には、先進国から安い農産物が途上国の市場にダンピングされ、国内生産が破壊されている。
 OXFAMは途上国の輸出の増大を呼びかけているが、輸出向け農産物の生産の増大は、グローバルな飢えと貧困を増大させている。そして、農民が土地、水、種などから疎外されている。この輸出向け農産物の生産は国内食糧安全保障を犠牲にして進められており、食糧システムの大企業への集中を促進している。
 OXFAMが世銀、IMFのデータを使っていることにも疑問がある。IMF、世銀は、貿易の自由化が成長をもたらし、結果として貧困を削減すると言いつづけてきた。そもそもこれらのデータは彼らの説を裏付けるものとして作成されたものである。
 真実は、過去20年間の成長は、それ以前の20年間に比較すると、減少している。
 Food Firstの批判は、「OXFAMの解決案はそれ自身が問題の根源である貿易の自由化の促進にある」と結んでいる。

OXFAMのペーパーについて、4月10日付けの『ワシントン・ポスト』紙、4月12日付けの「International Herald Tribune」紙が、それぞれコメントを載せている。
 中でも、『ワシントン・ポスト』紙は、「2004年からはじまって2015年までに、途上国の輸出品に対して、先進国が貿易障壁を完全に廃止したとしても、途上国のGDPは1%増加するだけにとどまる。サハラ以南のアフリカでは、2015年には、1人当たりのGDPが500ドルと見込まれているが、先進国の貿易障壁の完全撤廃によって、505ドルになるにすぎない」という世銀の最近の報告を載せている。これはOXFAMペーパーの信憑性を問うものである。