WTO  
OXFAMが「貿易を公正にせよ」キャンペーンを開始
2002年4月22日
 

 2002年4月11日、OXFAMインターナショナルが、「貿易を公正に変えよ(Make Trade Fair)」キャンペーンを開始した。その期間は、向かう3年間、ニュージーランド、オーストラリア、香港、バングラデシュ、インド、南アフリカ、セネガル、スイス、ドイツ、オランダ、ベルギー、スペイン、英国、アイルランド、カナダ、米国、メキシコ、ブラジルなど18カ国において貿易のルールを変えることを目指した国際キャンペーンである。OXFAMのキャンペーンは、WTOが新しい議題についての交渉が始まることに合わせたものであった。

このキャンペーンがめざすものは;
● 先進国の市場を、途上国に100%アクセスさせる
● 途上国の市場の開放を押し付け、農民の生計を破壊するWTO、IMF、世銀のルールを変える

OXFAMのキャンペーンの対象は;
●政治家、役人に貿易のルールを変えさせる、
● 企業や消費者が公正な貿易の商品を買い、倫理的な投資を行うようにさせる

OXFAMインターナショナルのJeremy Hobbs代表は、「キャンペーンは、グローバル
な貧困に関心があるが、シアトルの"爆弾投げデモ"やステレオタイプの反グローバリゼーション・デモには背を向けている人びとに呼びかけたい」と語った。

 同時にOXFAMは、271ページの『ねじれたルールと二重基準(Rigged Rules and Double Standard)』と題するキャンペーンの基礎となる報告書を発表した。中心的な執筆者は、Kevin Watkinsである。この報告書は、シアトル以来、反WTOキャンペーンを行ってきたNGO、理論的指導者、社会運動などの間で論争を巻き起こした。(別項参照)

1. OXFAMペーパーの背景
 1999年11月のシアトル以来、WTO、IMF、世銀、G7サミットなどに対する反グローバリゼーションの抗議デモが続いた。デモは、グローバリゼーションにすべて反対ではなく、「多国籍企業に率いられたグローバリゼーション」、「ネオ・リベラルなグローバリゼーション」に反対するという点では一致している。しかし、グローバリゼーションを推進しているWTO、IMF、世銀、それらを支配しているG7に対して、どのような戦略をとるかについては、反グローバリゼーション派の中では、大きく2つに分かれる。
 第1のグループは、OXFAM、WWF、地球の友、クリスチャン・エイド、CAFODなど、資金力の豊富な開発協力NGO、環境NGOで、これまで、政策を変えさせるためのアドボカシィを行ってきた。第2のグループは、フランスのATTACなど反グローバリゼーションの市民運動、農民、労働者、女性などの社会運動で、これら国際機関の解体を要求している。また、グローバリゼーションの象徴を力で破壊するアナーキストに対する態度においても、両者は異なっている。
 しかし、デモの現場においては、第2のグループが圧倒的に大きいい。したがって、これまで、20年以上、国際政治の場で、政府のパートナーとして、市民社会を代表して、アドボカシイ活動を続けてきたOXFAMなどの開発協力NGOにとって、ここで運動の形態、グローバリゼーションの推進者に対する戦略を明らかにしなければならないところに来ていた。運動のターゲットと戦略を鮮明にする必要があった。
 その答えが、今回のOXFAMペーパーであり、国際キャンペーンの開始宣言であった。

2. OXFAMペーパーの内容(要約)

 途上国は、先進国から1ドルのODAを受け取る毎に、貿易を通じて年間に1,000億ドルを奪われている。
 もし、アフリカ、ラテンアメリカ、東アジア、南アジアにおいて貿易のシェアを1%伸ばすことができれば、新たに1億2,88万人が貧困から解放されるだろう。アフリカだけでも年間700億ドルの輸入代金が入って来る。これはODAの5倍である。
 しかし、これを阻んでいるのは、先進国の「ねじれたルールと二重基準」のせいである。そのやり口は;

● 先進国では、余剰な農産物に1日当たり10億ドルの補助金を出しており、その結果、農産物価格は下落し、貧しい国にダンピングしている。
● 先進国はIMF、世銀を通じて、途上国に市場開放を強制しているが、一方先進国では市場開放を拒否している。
● 先進国は途上国の輸出品に対して、先進国の同一品目に比較して4倍もの関税をかけている。
● 先進国は、途上国の輸出品の値下がりに無関心だが、一方では、これによって多国籍企業が巨額の利潤を得ている。
● 一部の途上国は輸出の増大によって経済成長をもたらしたが、大多数の途上国にとって、輸出が増大しても、貧困状況が変わることはなかった。