WTO  
カンクンWTOニュースNo.2
2003年8月26日

ジュネーブのWTO本部では、8月11日に夏季休暇が終わり、カンクンに向けて審議が再開された。

カンクンでは、

@ 農業
A 非農産物(工業製品)の市場アクセス
B 特別、差異のある待遇
C TRIPsと保健
D 実施
E シンガポール項目


が対立項目である。

シンガポール・イッシュー(項目)について
(8月20日付けTWNニュースより)

シンガポール項目;カンクンでの最大の争点
投資、競争、政府調達の透明性、貿易ルール作り(Facilitation)の新規4項目
ドーハでは「交渉のModalitiesについての明確な合意が必要」と決議された。

1) どのように扱うか?
2) 内容は?

推進派; 日本とEU、スイス
  カンクンでシンガポール項目の交渉を開始し、Modalitiesを決めるべき
反対派; 途上国
  基本的な諸項目についての対立が多いので、カンクンでModalitiesについての合意をえることは不可能だ。したがって、交渉に入るべきではない。この問題についての研究、明確化の努力を続行すべきだ。

一般理事会Carlos Perez del Castillo議長(ウルグアイ)は、「シンガポール項目は政治的な問題である。ジュネーブでの任務はどのようなModalitiesが必要かを決めるべきでsる。カンクンでModalitiesの決定をすべきである。その場合は「明確な合意」を必要とする。ジュネーブの作業委員会(WG)はModalitiesの議論をしていない。したがって、これを一般理事会の議題にすべきである。最終決定は閣僚レベルでなければならない」と語った。

シンガポール項目をめぐるこれまでの各国の態度

1) アフリカ12カ国の声明;「シンガポール項目の議論を拒否」

8月19日、ケニアのAmina Chawahir大使が提案。
(ベニン、ボツアナ、ケニア、モーリシャス、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエなど)

バングラデシュ、南アフリカ、キューバ、インド、ベネズエラ、ジャマイカ、バルバドス、マレーシア、フィリピン:アフリカ声明に賛成

EU;ドーハで、カンクンで交渉に入ることを決議したとして、アフリカ声明を拒否

1.「貿易ルール作り」について
推進派;先進国
例;米国は世銀の調査をもとに、ドーハ・ラウンドからの恩恵の3分の1は貿易のルールつくりからもたらされていると主張
反対派;途上国は、資金不足などについての不安から、拘束力を持ったルール作りに反対
    貿易のルール作りは国内問題であって、多国間の規約にすべきでない。
 
2.「政府調達の透明性」について
推進派;先進国の1部。短い、かつ手続き問題に限る交渉を開始する。
反対派;途上国。WGでの議論を続行する。
例えば、「透明性」について、厳密な意味の透明性なのか、あるいは、市場アクセス、レビューのメカニズム、決定のプロセスといったところにとどめるのか。
途上国は、これを中央政府の物資の調達に限定し、サービス部門や政府の免許事業には適用すべきではないと主張。    
中間派;Del Castillo議長は、カンクンで、たとえば、適用範囲を地方政府の事業にまで拡大するかなどといった、途上国政府の憂慮に配慮して、問題の内容と範囲についての決定を行う、ことを提案。

3)「競争」について
選択肢として@ コア原則、ハードコアのカルテル、任意の協力について交渉を始める
A 非拘束的の協力、WTOに競争政策委員会を設置する
B WGでの審議を続ける
途上国は、ハードコア・カルテルには輸出国のカルテルなども入るのかなど、審議がにつまっていないことを指摘。またこのような複雑な項目を多国間協議で審議する人的な余裕がないこと、また競争についての国内法が制定されていないことなどを挙げて、反対している。

4)「投資」
ブラジルのSeixas Correa大使を議長にした「投資についての議長の友達」が組織された。
しかし、そのメンバー間で対立がある。
「投資」項目は、シンガポール項目の中で、もっとも対立している項目である。途上国にとっては、その開発政策の実施する上で、制約を受けやすい項目である。途上国を代表して、インドが、先進国内でもこの項目での投資の内容規定や適用範囲について、意見の相違があることを指摘。例えば、日本とEUはFDIに範囲を限定すべきだとしているのに対して、米国は証券投資も含まれるとしている。
Cairnsグループ(農産物輸出国)は、「投資」と「農業」をトレードオフにすべきだと主張している。たとえばタイやチリは、農業問題で先進国から譲歩が引き出せば、投資の交渉に入ることを受け入れると述べている。
Quadグループ(米国、EU、日本、カナダ)は、「貿易ルール作り」と「政府調達」項目については堅く団結している。しかし、「投資」と「競争」項目に関しては、米国の立場はあいまいである。たとえば、米国は「途上国の多くは、競争項目を理解していない」と述べたが、EUと日本はカンクンで交渉に入るべきだと主張している。