WTO  
カンクン以後のジュネーブWTO その2
2003年12月18日


カンクン以後のジュネーブWTO本部の交渉

1.ジュネーブ特別一般理事会が終了

 流会に終わったカンクンのWTO閣僚会議では、12月15日までにフォローアップのための特別一般理事会を開催することが決まっていた。しかし、その後のジュネーブでは、ほとんどの項目で交渉がなされないまま、最終期日とされた12月15日を迎えた。
特別一般理事会は開かれたが、12月16日、これもまた、全く成果を残さないまま、終了した。
一般理事会のカスティヨ議長(ウルグアイ大使)は、彼が提案した「貿易交渉委員会とその関連小委員会の活動を再開する」ことについて、WTO参加国は賛成しているようだ、と語った。
カンクンで決裂の原因となった「シンガポール項目」については、カスティヨ議長は、「貿易の簡素化」と「政府調達の透明性」の2項目を、一般理事会レベルで多国間交渉に入るべきである」という彼の主張を繰り返した。しかし、残りの「競争と投資」の2項目については、「加盟国間に意見の隔たりが存在する以上、議長として提案することはない」とのべるにとどまった。途上国側は、シンガポール項目については、作業部会を発足することは出来ないと述べていた。
カスティヨ議長は、特別一般理事会は全く進展がなく、したがって、多国間交渉は再開されない、と述べた。彼は、加盟国の中から、新しい提案がでなかったのは残念だと述べた。代表たちは、52の代表が発言したが、これまでの主張を繰り返したにすぎなかった、と言った。シンガポール項目については、45カ国の途上国が、交渉項目から削除することを要求した。これは議長の2+2案と対照的であった。また途上国は、シンガポール項目の技術的な側面について議論する作業部会の開催に反対した。
交渉のプロセスについては、より透明性のあるものにする、より参加型の議論にする、と述べた。
農業と工業製品については、途上国側は、カンクンでメキシコのデルビス議長が提出したテキストを交渉文書にすることに反対した。他の関連する文書を参照するべきだと主張した。
また、カンクン以後のWTO交渉が、「開発」問題を取り上げなかったことについても、途上国側から不満が述べられた。開発問題とは、「実施」と「特別の、差異のある待遇」を指す。

2.EU―G20の共同声明

カンクンでは、農産物の補助金を巡って、EUと途上国のG20が激しく対立した。しかし、ブラジリアでは、特別一般理事会の開催に先立って、12月12日、EUとG20が、突如として「多国間貿易交渉の再開を呼びかける」共同声明を発表した。
ジュネーブで、EUとG20が2日間にわたって会合を持った。
カンクンの決裂の原因の1つに、ブラジル、インド、中国、南アフリカなど途上国の20カ国グループの誕生があった。G20は、EUと米国に対して、農産物の輸出補助金の撤廃を要求した。
この点について、12月12日の共同声明には、「みぞは埋まった」と述べ、そして、「ドーハ・ラウンドのデッドラインである2004年に交渉を成立させるために、出来るだけ早く新ラウンドの開始を」と呼びかけている。

3.ブラジリアでG20が会合

 12月11〜12日の2日間、G20はブラジリアで会合を開いた。これは、カンクン直前にWTO内に誕生した主要途上国20カ国の緩やかな連合であり、米国とEUの年間3,000億ドルにのぼる農産物輸出補助金の撤廃を要求した。
 G20のブラジリア会合にはEUのパスカル・ラミー通商代表も出席した。