世界の底流  

世界社会フォーラム2015チュニス

2015年4月24日
北沢洋子

3月24〜28日、チュニジアの首都チュニスで世界社会フォーラム2015が開かれた。

  チュニスでの開催は、2013年に続いて2回続けての開催となった。フォーラムには、120カ国から6万人のNGO、労組、研究者、活動家が集まり、El Manar大学のキャンパスで1000のワークショップが開かれた。大学は、財政の正義、健康な環境、無料の健康保険、新たな消費モデルといった内容の無数のポスターや絵画が飾られた。
  参加人数が減ったことと、ささいな混乱があった。たとえば、ボランティアの若者たち数百人が、宿泊所や経費の不満を唱えて、会場内をデモしたこと、数は少ないが「イスラエルをつぶせ」というポスター、西サハラについての議論中に、アルジェリアの市民社会と称する者が発言者に殴りかかる場面などがあった。
  にもかかわらず、チュニジアの実行委員会のコーディネーターの1人のAlaa Talbiは、
「問題や、欠点があったにせよ、総体として、成功だった」と語った。
  また、グリーンピース、OXFAM、ActionAidなどヘビー級の国際NGO5団体が声明を出した。「市民社会は、不平等、環境、気候変動、女性の権利などを闘いの中心にしよう」という呼びかけであった。これも、これまでにない動きであった。
 チュニスのフォーラムの特徴は、とくに、フォーラムがBardo博物館襲撃事件の1週間以内であったにもかかわらず、大勢の若者が参加したことであった。

  フォーラムでは、さまざまな「思想、戦略、手段」を持った人びとによって、Convergence Assembly((収斂集会)が開かれた。これは、前のチュニスでのWSFから始まった新しい議論の形態である。そのテーマは;

(1)開発のための資金(FfD)Post2015のアジェンダ
2015年がミレニアムの国連サミットで決議した開発ゴール(MDG)の最終年であり、これからの開発ゴールを決定することになる。このゴールが誰のため、そして何故か。
(2)失業者の社会的、経済的権利の憲章
(3)EUの移民政策が途上国に及ぼす影響
(4)不平等を生み出す税制についての正義(Justice)
(5)Agro-Economy−Mother Earthと食糧主権のための倫理的生活スタイル
(6))自由貿易と企業の力に抵抗し、オルターナティブを創造する
利潤でなく、人びとと地球を
(7)ハウジングについてのWorld Assembly
(8)社会運動のAssembly
(9)これからのWSFのプロセス
(10)鳥と水の闘争のグローバルなConvergence
(11)移動と居住の自由についての提案
(12)人々の経済的、社会的ニーズの最終的回答
(13)WSFにおけるチュニジアの女性のダイナミズム
(14)コモンズとオルターナティブ、国際ネットワークは?
(15)金融資本を制御する方法
(15)労働組合の権利のConvergence Assembly
(16)Post 2015の持続的開発ゴールにおける障害者
(17)「ギリシャの風」債務と緊縮の罠を打ち破る時が来た
(18)マグレブ(モロッコ、アルジェリア、チュニジア)の社会運動のConvergence Assembly
(19)パレスチナは、人びとの尊厳、正義、人間性のコンパスだ
(20)気候変動についてのConvergence Assembly(15年末のパリCOP21に向けて
(22)シリア革命への連帯
(23)市民社会の平和戦略についてのAssembly
(24)コミュニケーションの権利についてのConvergence Assembly
(25)宗教、文化、文明間の解放について対話
(26)健康と社会的保護に対する脅威と闘う

以上、明らかなように実に多様なテーマが、各種Assemblyや、多様な人びとによって、
話し合われた。ここで注目されるのは、「シアトル」から2年後にポルトアレグレで開かれ
た第一回のWSFの中心テーマであったWTO、会場を埋め尽くした農民のダイナミズム
が欠けている点である。

 今回のフォーラムでは、今年に予定されている2つの歴史的な大イベントに向けて、自
分たちの議論を深めようと言う提案があった。その第一は、2015年末にパリで開かれ
る国連のCOP21と、第二は、持続可能な開発についての国連特別サミットである。
  COP21は、1997年の京都議定書以後、つまりPost 2015、議定国すべてが参加するCO
2削減目標のコミットメントを公約する会議である。これは、京都議定書では、ボイコット、あるいは未参加だったCO2排出の2大国である米国と中国が合意している、という環境がある。そこで、気候変動についての南北問題、すなわち、北の先進国が南の途上国、中でも気候変動によって最も災害を受ける最貧国への資金援助という形で語られているのに対して、「エコロジカル債務」というコンセプトをどのように推進して行くかという問題がある。
  今年中に開かれる国連持続可能な開発の特別サミットは、2000年9月の特別サミットで
合意した「2015年までに途上国の貧困を半減する」ことなどを含んだ「ミレニアム開発ゴ
―ル(MDG)」のデッドラインの年である。ここでは、「2015年以後」の新たなアジェン
ダを決定する。しかし、2000年の「MDG」自体は達成できなかった。そして、今回の交
渉で問題となっているのは、すべての議論が秘密裡に進行しており、とくに最貧国の参加
が少ないということである。
  この2つの国連サミットは、人類の危機に対して、答えを出す重要な会議である。市民
社会がどのように取り組むべきか、フォーラムで話し合われた。