世界の底流  
世界社会フォーラム2013チュニスについて

2013年1月2日
北沢洋子

 2013年の世界社会フォーラム(WSF)は、3月26〜30日、チュニジアの首都チュニスで、開催される。これまで社会フォーラムは開催のナンバーで呼ばれてきたが、地域別、テーマ別などの大規模な社会フォーラムが開かれるようになったので、「2013チュニス」と呼ばれることになった。
 チュニスWSF2013は、@チュニジア委員会とAマグレブ・モニター委員会が共同で準備する。チュニジア委員会には、主要な市民社会を網羅している。ここには、労組ナショナルセンターのUGTT、移住者労働者のFTDES、人権団体の連合LTDH、同じく人権団体連合CNLT、女性団体ATFD、同じく女性団体AFTURD、Raid―ATTAC、大卒失業者連合、それに弁護士会などが参加している。
 これに続いて、北アフリカの旧フランス植民地のモロッコ、アルジェリア、チュニジアによる「マグレブ・モニター委員会」が準備作業をより充実拡大するために加わる。マグレブ委員会は、12年10月7日、モロッコのウジダで移住労働者をテーマにした社会フォーラムを開催した。のフォローアップ組織としてマグレブ・モニターリング委員会を発足させた。
 WSFのホスト国になるためには、2つの条件がある。@WSFを組織できる幅広い市民社会の連合が存在すること、A中央政府や地方政府が、開催に賛成、あるいは政治的に中立の立場を取る必要がある。幸い、組織委員会の代表がチュニジアの現ジュバリ首相に面会し、政府の支持を取り付けた。
 2012年7月12日から6日間、チュニジアの観光の港町モナスティルで、WSFの国際評議会(IC)が、「2013WSFチュニス」開催の準備会議を開いた。
 ここには、3,000人が集まった。前半の3日間はテーマ別のわークショップでの議論に充てられた。WSFでは、@経済、Aジェンダー、B戦争と平和、Cグローバリゼーション、D移住労働者、E開発、F環境、G人権、Hボランティアの9項目になっている。
 後半の3日間はICそのものの議論に当てられた。第2回WSFでWSF憲章の採択とICが設立したときは50人であったが、その後、150団体に膨れ上がった。参加者の総数は500人だが、発言できるのは代表に限られる。にもかかわらす、1人当たり2〜4分しか発言できない。これは議論ではない。代表たちは、世界中から集まっており、その費用はバカにならない。
 このようなICの実情は、WSFは議論の「スペース」であり、「運動」ではないと規定したWSF憲章にそぐわない、ということはモナスティルのIC会議で明らかになった。しかし、どのように改革するかと言う点では、意見が分かれる。
 モナスティルIC会議以後、2012年末までに様々な会合が開かれた。たとえば、ヨーロッパ社会フォーラムの「フローレンス10」、チュニジア組織委員会、マグレブ・モニターリング委員会、それにIC会議などであった。
 その間、WSFのインターネット上では、これまでWSFを牽引してきた人びとが発言している。
 チュニスWSFが直面している問題は、第1に、反グローバリゼーションと闘ってきたWSFと「アラブの春」の主体との関係である。前者は、反資本主義であり、後者は民主化である。「アラブの春」派は反資本主義ではない。従来のWSFは「アラブの春」とどのように手を結ぶのか。さらに困難な事業は、「政治的イスラム」である。この問題については、モナスティルのICでは「イスラムと政治」について、WSF憲章に書かれている社会正義、自由、暴力の排除などをテーマにした国際セミナーを、13年1月、モロッコかチュニジアで開くことを決めた。
 第2に、「アラブの春」以後、新しい運動が生まれた。それは、スペインの「怒れる者(Los Indignados)」、「ウォール街を占拠せよ(OWS)などの新しい運動がはじまった。WSFが新の意味で、開かれた議論の「スペース」であるならば、どのような関係を結ぶのか、注目されている。