世界の底流  
BRICSのアフリカで果たす役割(その3)

2013年4月15日
北沢洋子

1. BRICSのアフリカの土地争奪

現在アフリカにおける外国資本の土地“投資”は、これまで、また他の地域に比べて、類を見ない猛スピードで進行している。これは、人びとの生活と生命に直接影響を与える。なぜなら、土地が水と並んで、現在最も少なくなっている天然資源であるからだ。とくに貧しい国であればあるほど、その影響は大きい。

今日進行中のアフリカでの土地争奪は、かつてのように戦争、占領によるものではなく、法的枠組みに基づく投資である。そしてこれは単にアフリカ農民の土地を取り上げるばかりでなく、社会的、経済的、政治的、道義的に持続不可能な、かつ受け入れられない経済モデルを押し付ける。

アフリカに土地投資をしている国を見ると、これまでのような西側先進国に限らない。そして、アクターでは国家、民間、それに第3セクターが混在している。湾岸諸国、BRICSを含めた新興国、そして、しばしば低開発国も含まれている。そして、投資国と投資相手国とのGDP一人当たりの経済格差は4倍である。低開発国での国内投資の分を除くと、この比率はさらに拡大する。

BRICSの土地投資は地理的、言語的に近しい国を選んでいることがわかる。たとえば、ブラジルはアフリカのポルトガル語地域、中国と南アフリカは英語圏に重点が置かれている。ロシアは土地争奪戦に遅れたので、あまり投資はない。インドは、インドネシア、マレーシアに重点を置いており、アフリカでは、インド人在留が多い東アフリカをターゲットにしている。

国際NGOの「International Land Coalition 」は、最近「土地収奪は2億ヘクタールに上る。これは英国の国土の8倍である。そのなかでアフリカは64%を占める」と報告した。 

最近、日本はモザンビークと1,499万ヘクタールの農業開発プロジェクトに合意した。

2.BRICSとグローバルな金融危機

グローバルな金融危機におうて、BRICS米国に協力した。12年7月、BRICS5カ国は、IMFに、総額750億ドルを出資した。当時、IMFは南部ヨーロッパをBail Outするために、多量な資金を必要としていた。BRICSの出資はIMFにとって救いの神であった。

すでに80年代アフリカで証明されたように、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、キプロス、アイルランドなどで執行されている緊縮政策(アフリカでは構造調整プログラム)は、当該国の経済だけではなく、グローバル化した世界経済にマイナスである。

BRICSの主張により、IMFでの投票権に関しては、中国の投票権が増えた。しかし、国連のような国際民主主義の1国1票制ではなく、出資金による投票権(金持ち国の支配)というIMFのシステムは変わらない。そして、中国の増えた分は、米欧ではなく、アフリカが減らされた。

グローバルな金融制度の改革についても、南アフリカは、米政府に加担して、「金融取引税」のようなグローバル金融規制に反対している。

ダーバンで採択されたBRICS開発銀行は、今まで多国籍金融機関がもたらした人権侵害、環境破壊、経済的な混乱をさらに深めるだろう。それは、世銀の地域開発銀行である「南部アフリカ開発銀行(DBSA)」の例で明らかになったのだが、ブラジル、中国、南アフリカなどが、DBSA総裁自身が「見せかけ」と呼んだ事業に融資して、同行に3億7,000万ランドの損失を与えた。

3.BRICSと地球温暖化

アフリカの運命は、世界が地球温暖化を防ぐことにかかっている。例えば、「ダルフール」は、多分、温暖化が引き起こした最初の戦争だといえよう。温暖化を防がなければ、「ダルフール」は繰り返されるだろう。国際NGOのChristian Aidによれば、温暖化は、「1億8,500万人のアフリカ人の生命を奪う」と推測している。

しかし、南アフリカ政府は、CO2排出の基準を、アパルトヘイト時代より高いレベルに設定している。南アフリカは、火力発電所の数では、世界で第3〜4位である。そればかりか、米国に加担して、「国連気候変動枠組条約{UNFCCC}」のグローバル・ガバナンスを廃止しようと画策している。

WikiLeaksによれば、09年12月、コペンハーゲンで開かれたCOP15では、オバマ大統領とBRICS首脳たちが、ひそかに会合し、「京都プロトコール(KP)の廃止」を企んだと言う。彼らは、KPを非拘束にするばかりか、今世紀の温度上昇限度を平均4度とし、アフリカにはより高い数値を決めることに合意したのであった。

11年のCOP17サミットで採択された「ダーバン・プラットホーム」においても米・BRICSの秘密会合があった。その結果、人口1人当たりの排出量の制限、途上国では経済発展が優先する、そして先進国と途上国の差異など、かねてからの途上国側の主張は取り入れられなかった。

疑いなく、アフリカは温暖化災害に対して闘う力を奪われた、と言える。アフリカにとっては、「ダーバン」は気候変動の「呪いの言葉」になった。BRICSが果たした役割は大きい。