世界の底流  
ヨーロッパ中央銀行に対するブロキュパイ(Blockupy)

2013年6月5日
北沢洋子

1. フランクフルトのデモ

さる5月31日(金)早朝、小雨の中で、フランクフルトの金融街カイザー通りにあるヨーロッパ中央銀行(ECB)本社の前に、3,000人が集まった。これは、ECBが、ヨーロッパ委員会(EC)、IMFとともにトリオの一員として、債務危機に見舞われたユーロ圏の国々に対して、救済融資(Bail Out)の条件として「緊縮政策」を押し付けていることに対する抗議デモであった。

やがて、日中になるとデモの参加者の数は20,000人に膨れ上がった。その一部は、近くのドイッチェ銀行(DBK)に向かった。

このデモは、6月1日(土)、ヨーロッパ全土で計画されていた反緊縮、反資本主義のデモに先駆けて行われた。ECBを含めたフランクフルトのカイザー通りでは、国の祝日日であった木曜日の翌日だったにもかかわらず、金曜日も休むように銀行の職員に指令した。

デモの目的は、「Blockupy(ブロキュパイ)」にあった。これはOccupy (オキュパイ)からとった造語である。ブロキュパイは、道路を封鎖する。具体的には、ECBの正面入り口に人間の鎖を作って、職員を中に入れないように阻止するという戦術である。デモのスローガンは、「利潤ではなく人間を」であった。彼らは、雨合羽やポンチョを着て、なべややかんを持ち、抗議の意を示す音をたてた。また「戦争はここから始まる」とペンキで書いた何本かのマットレスを持ち込んだ。

『ガーディアン』紙によれば、ECBのスポークスマンは「デモ隊は、ECBの日常の業務を妨げることはなかった」と語ったが、職員が何人入れたかは明言しなかった。デモ側のスポークスマンであったFrauke Distelrathは、「デモの目標は、銀行の職員にあるのではない。ヨーロッパの人びとを苦しめているECBの緊縮政策にある」と語った。 

デモに対する警察の警備はすさまじかった。まず、ECBに通じる道路はバリケードで封鎖された。警察の装甲車、ヘリコプター、放水車、それにジャーマンシェパードまでが動員された。警察発表では、石を投げるものや警察のバリケードを壊そうとするものがいたが、平穏に過ぎた、と言った。

Blockupyグループは、1日前の5月30日(木曜日)に裁判所から飛行場でデモをする許可をとっていた。これは、空港の入管に対して、その非人間的な移民政策、とくに送還について抗議をするためだった。しかし、空港のオペレーターがデモ隊に空港の敷地外に出るように要請した。そこで、第1ターミナル前でのデモになった。

裁判所は、参加者の数を200人に制限したが、800人近い人びとが集まった。このデモが翌日のECBデモに繋がった。