私は陰謀説派ではないが、世界を支配する表の組織「G8」、陰で動かしている秘密組織があることは確かである。

１．ダボス会議

その１つが「ダボス（世界経済フォーラム）」であった。

ダボスは、７１年に設立された当時は、欧米の財界・政界のリーダーの非公式の、かつ排他的な会合であった。ここでは、主として彼らの世界戦略がひそかに議論されてきた。ダボスには、参加者の固定リストがなかった。ある意味では、自由参加であった。９０年代に入ると、米国のゴア副大統領が出席した頃から、途上国の首脳などが参加するようになった。以後、パレスチナのアラファト議長や、鳩山民主党代表などが参加する一大イベントになった。ダボスの秘密性はなくなり、お祭りの様相を呈するようになった。さらに０１年１月、グローバリゼーションに反対する活動家たちが、ブラジルのポルトアレグレでダボスの対抗会議「世界社会フォーラム」を開きはじめたので、なおさらダボスの地位は低落した。

２．三極委員会

第２に、「三極委員会（Trilateral Commission）」がある。これは、ロックフェラーによって提唱された。これには、米国、西ヨーロッパ、日本から、限られた財界、シンクタンクなどが参加して、毎年開かれてきた。ただし、現職の政治家は除外された。

２０００年に入ると、日本が韓国、オーストラリア、ニュージーランドを加えることを主張した、その結果、メンバーは３９０人と膨大なものになり、秘密性は薄くなった。三極委員会は、２０１２年、東京で開かれたが、参加者数は１２０人と大幅に減少した。BRICSなど新興国の出現し、それぞれ勝手に三極委員会に参加し始めた。これでは、北側の秘密組織が世界を牛実ことはもはや不可能になった。

３．ビルダーバーグ・グループ

第３に「ビルダーバーグ（Bilderberg）」が挙げられる。これこそ、現在なおも、世界戦略を計画している国際秘密組織である。「陰のサミット、あるいは世界政府」と言われる。

ビルダーバーグは、銀行家のロスチャイルドやオランダの王子によって提唱され、１９５４年、オランダのオーステルベーグ市の「ビルダーバーグ・ホテル」で第１回会議が開かれた。組織の名は、このホテルに由来する。当時、米国と西ヨーロッパの間に「北大西洋条約機構（NATO）」が結成され、その秘密のシンクタンクであった。本部はオランダのライデンに置かれている。

第１回会議には、ヨーロッパの王族や貴族をはじめ、高名な学者、国連機関の代表など、１８カ国、１３０人が参加した。

この組織の特徴は、極度の秘密性にある。まずメンバーは、米国と西ヨーロッパ人に限られ、毎年開かれる開催地名、参加者のリストなどは公開されるが、議題、議論の内容などについては一切公表されない。マスメディアは完全にシャットアウトされる。

会議は、完全に個人参加である。妻、ガールフレンド、夫、ボーイフレンド、秘書、ボディガード、CIAの護衛官なども入場を許されない。彼らは、別室で食事を取らされる。ゲストを装った記者も、ホテルに入れない。ビルダーバーグは、極端に排他的な組織である。

また、会議に自発的に参加することは許されない。アドホックに招待されるのは約８０人の“正会員”が合意した場合に限られ、議題についての知識や関与を評価した場合だけである。日本人は、０９年に田中伸夫が招待されたが、これは当時「国際原子力エネルギー機関（IAEA）」の所長という資格であって、これまで１人も招待されていない。一方、イラン、イラク、イスラエル、ニュージーランドなどが招待されたことがあり、１１年には、中国の外務次官傅瑩が招待されている。

ビルダーバーグ・グループについては、エストニア生まれで、１９８０年に西側に亡命したダニエル・エスツリンが書いた『ビルダーバーグの真実』に詳しい。彼はこの研究に１４年間も費やし、ある時は暗殺されかかったこともある。

エスツリンは、ビルダーバーグ・グループを、「世界で最も力のある人びと」と呼んでいる。そして、彼らは「ビジネス、金融、世界政治、戦争と平和、世界の資源と資金に絶大な影響力を持っている」と書いている。英国のサッチャーやブレア、ドイツのメルケル、米国のビル・クリントンなどがビルダーバーグ会議に招待された数年後に首相や大統領に就任している点に注目したい。とくに、９１年に招待されたクリントンは、会議の中で、ロックフェラーに「北米自由貿易協定（NAFTA）をビルダーバーグが重視している」と告げられた。間もなくクリントンは大統領に就任早々、９４年１月１日にNAFTAが発効した。

国連で途上国が「新国際経済秩序」を要求し始めると、これに対抗するために、日本を含めた三極委員会が、７３年、三極主義者のブレジンスキーによって創設された。これは、ビルダーバーグに入れない新興勢力である日本を宥めるために、設けたと言える。

４．ビルダーバーグとG８サミット

２０１３年のビルダーバーグ会議は、６月６〜９日、英国のワトフォードで開かれる。ワトフォードは、同名のサッカーチームの本拠地として名高いが、また有力な英貴族エッセクス伯爵の領地でもある。この後すぐ、G８サミットが、６月１７〜８日、同じ英国の北アイルランド・ファーマナ市のゴルフリゾートで開かれる。これも偶然ではないだろう。