世界の底流  
地中海沿いのヨーロッパのゼネスト

2012年12月6日
北沢洋子

 11月14日(水)、ヨーロッパ最大規模のゼネストが行われた。これは、「14N」と呼ばれ、ギリシャに連帯するストであった。主として地中海沿いの国ぐにで起こった。
 これまで、イラク反戦デモなどでは見られたが、このように、ヨーロッパ・レベルでの労働者、市民の同時ゼネストが行われたのは、歴史的に初めてのことであった。
ギリシャの債務危機以来、ヨーロッパでしばしばストが起こっている。その国の数は23カ国にのぼる。
 今回の「14N」ゼネストは、数十年に及ぶ緊縮政策、政治的社会的不安定、増大する失業などに挑戦するもので、それぞれの議会に向かってデモをした。スペイン、ポルトガル、イタリアなどでは、街頭で激しい衝突が見られた。
 イタリアでは、100都市で、30万人が、ギリシャ、スペイン、ポルトガルの労働者に連帯して、48時間のストを行い、街頭でデモをした。ミラノやローマでは、数千人の学生が警官に対して「ゲリラ戦」を展開し、交通を完全に止めた。この衝突で数十人の怪我人が出た。サルディニア島では、たまたま会議をしていたPassera産業相とBarca地域調整相の2人の大臣が、怒れるデモ隊が会議場を取り巻き、彼らの車に火をつけたので、ヘリで逃げ出すという事件もあった。
 ナポリやブレシアでは、数千人の学生が鉄道のレールを占拠し、列車を止めた。ジェノバではフェリーポートの入り口がデモ隊によって封鎖された。フレンチェ、ベニス、トリエステ、シシリア島のパレルモなどでは、銀行のショーウインドに生卵を投げ、記念碑の国旗を引きずり降ろした。パドバでは、学生と警官が衝突した。ボローニァでは、警察が引いた阻止ラインを1万人の学生がデモで突破した。ピサでは、デモ隊が斜塔を占拠し、「立ち上がれ。我々はヨーロッパ危機のつけを払わないぞ」と書いたたれ幕を張った。
 フランスでは、100以上の都市でストと抗議デモが行われた。ベルギーでは、ゼネストにより、全国の鉄道、空港が不通になった。
 ギリシャでは、48時間のゼネストが行われ、国全体がマヒした。数万人が議会に向けてスペイン、ポルトガル、イタリアの旗を振って、南ヨーロッパの労働者のゼネストに連帯を表明した。
 しかし、最も印象的な戦いは、イベリア半島でのゼネストとデモであった。ゼネストで国中を麻痺させた一方で、街頭では、暴力的な衝突が起こった。
 ポルトガルでは、ストとデモは30の都市に上り、数万人が議会を取り巻いた。何時間も石を投げられた警官隊は、夕刻デモ隊に反撃し始めた。そのため、多くの負傷者が出た。ポルトガルでは、このような暴力的弾圧はサラザールの独裁時代以来はじめての経験だった。
スペインでは、今年第2回目となるゼネストに労働者の80%が参加した。これは、スペインを麻痺させた。これは苦境にあるラホイ保守政権に対するさらなる圧力になった。何十万もの人びとがマドリッドの街頭をデモした。火のついたごみ入れをバリケードにして道路を封鎖した。バルセロナでは、数十万人のデモ隊が警察の車に火をつけ、銀行の窓にペンキを塗った。これに対して、警察が暴力的な反撃に出た。70人以上が負傷し、140人が逮捕された。タラゴナでは、13歳の少年が警官の警棒で頭を殴られた。
 実際、南ヨーロッパは、人びとの闘いで、国の基盤そのものが揺れている。マドリッド、リスボン、ローマ、アテネの街頭が伝えるものは、明確だ。
 問題は、社会的爆発が何時起こるかである。人びとの怒りのマグマは溜まっている。失業が増加し、緊縮政策が続いている。人びとはヨーロッパの政府に幻滅している。警察の暴力に怒っている。
人びとの反乱は遠くない。