世界の底流  
米国のショッキングな軍事費の浪費

2013年1月2日
北沢洋子

 David Petraeus将軍の性スキャンダルは、軍のトップの将軍たちが如何に贅沢な暮らしをしているかを垣間見せた。メディアは、スキャンダルについては派手に書き立てたが、如何に軍人たちが軍事費を無駄使いしているか、そしてこのような軍事費は国防に全く関係ないことを追求しようとしない。
 一個大隊(1,000人)に相当する将軍や提督たちは、最も優秀な軍人から選ばれる。そして、破格の待遇や報酬を受けている。彼らには、ハリウッドのスターたちも羨むような大勢の付き人にかしずかれている。
 2010年の国防総省の報告書によると、米軍には963人の将軍・提督がいる。9.11以後には100人も増えた。米軍の最大の任務が「テロとの戦い」であったにもかかわらず、将軍たちのブーツを磨くことが優先されたのだ。同時期に、国防総省の予算も50%増加した。 退役軍人で、現在NBCニュースの軍事アナリストであるJack Jacobs氏によれば、将軍の数は、現在の3分の1で済むと言っている。「ほとんどの将軍たちは、議会向けの軍事立案書を書く時間に費やしている」と語った。言い換えれば、これら将軍たちは国防総省のロビイストでしかないのに、大勢の個人スタッフを持ち、プラーベートなジェット機を軍から提供されている。
 奇妙なことに、将軍の中でも、上位になればなるほど昇級が早くなる。3〜4星(大将、中将)の昇級は、士官と比べると3倍の速度であり、下士官とは10倍のスピードである。これは、民主主義とは言えない。
 Robert Gates元国防長官は、海兵隊出身のArnold Punaroをペンタゴンの予算についての「独立調査パネル」の長に任命した。その報告書の前文に、「たまにテロリストを殺すだけの国防総省は要らない」と書いた。
 『ワシントンポスト』紙の調査では、最高司令官は、ベッド付きのC-40型ジェット機を持っている。また、4つ星レストラン級のコックが付いている。将軍の個人スタッフには、運転手、護衛、秘書、それに靴磨きやユニホームのアイロンかけなどがいる。将軍が移動するときには、一ブロックほどの長さにわたる警察のオートバイやパトカーが護衛する。娯楽のためには、指一本で、四重弦奏団を調達でしる。
 『ニューヨークタイムズ』紙の調査では、1人の将軍のスタッフの費用は年間100万ドルだと言う。これには、将軍たちの給料は含まれていない。将軍の給料は議会の制約があるので、高額ではない。ただし、将軍はタダの官舎に住んでいる。
 性スキャンダルを起こしたPetraeus将軍の例では、軍を辞めてCIA長官になった後でも、4つ星(大将)将軍の称号を離さなかった。
 最近明るみに出たスキャンダルでは、William “Kio” Ward将軍は、去年の夏、バミューダにバカンスに行ったとき、妻のショッピングや観光に軍の車や運転手を使った。彼はプライベートな旅行にもかかわらす、13人のスタッフを従え、全員の旅費とホテル代の請求書を国務省に送った。
 昨年11月、Petraeusスキャンダルの最中、パネッタ国防長官は、Wardを准将に格下げし、82,000ドルの横領金の支払いを命じた。Wardは年間208,802ドルの年金を受け取っているので、払えない額ではない。
 贅沢に慣れた将軍が引退すれば、年金生活になる。そこで、彼らはロッキード社などの軍需産業の重役に天下る。ここで軍と産業の癒着が起こる。価格を不当に高くしたり、性能のすり替えなどが日常化する。
 軍の役得は将軍に限らない。下級の軍人は、プライベートなジェット機やコックを抱えてはいないが、一般人には手の届かない恩恵を受けている。
 ゴルフが良い例である。米軍は世界中に234のゴルフ場を持っている。その費用は公表されない。コロラド州コロラドスプリングにある「空軍アカデミーのアイゼンハウアー・ブルー・コースは、米国内で最良のコースである。数十年前、国防総省は、このコースあるトイレットペーパーが一基当たり年間400ドルもするということが議会で取り上げられたことがある。
 ほとんどの軍のゴルフコースの費用は低く見積もられている。そしてキューバのグアンタナモ基地やイラクのモスールなど問題のゴルフコースの費用は全く明らかにされていない。
 2004年、サウジアラビアのリヤドにある米軍のゴルフコースに71,614ドルが支払われた。これは、不当に安い。コースにはプール、ジム、ボーリング場、馬場、ホッケーリンク、アーケード、劇場、レストラン、カプチーンノ・バーまで付いた一大娯楽コンプレックスである。 2004年、ゴルフをしない軍人にために、8,000万ドルかけて、ババリアのアルプスにスキー・ロッジとリゾートが設けられた。
 これらリゾートのほかに、陸軍、海軍、空軍、海兵隊それぞれが軍楽隊を持っている。専用の雑誌やCDも作っている。軍楽隊のCDの作成には、退役軍人の会社が引き受けている。 武器輸出に数十億ドルにのぼる莫大な公的補助金が使われている。 
 これまで述べた将軍の贅沢な生活、世界中に広がった娯楽施設、高い費用の軍楽隊、武器の輸出補助金などは、全く国防に関係ない出費である。