世界の底流  
フィリピン政府と共産党ゲリラの和平交渉

2011年6月5日
北沢洋子

 アジアで最も長く続いている、フィリピン共産党のゲリラ闘争である。
 さる2月15日付けのAP電によれば、「最近、共産党ゲリラが力をつけて来ており、兵力も弾薬も充分ある。その結果、政府軍の犠牲が多く出ている」と報じた。フィリピン政府は、ゲリラ側と和平協議に入っている事を認めた。
 これまで、政府と共産党との間の和平交渉は、6年にわたって中断した。交渉が再開したのは2011年2月15日、場所はノルウエイであった。両者共に、交渉中は停戦に応じるといっている。
 政府によれば、昨年の大統領選挙において、貧困を削減し、ガバナンスを回復するととを公約したベングノ・アキノ3世が当選したことが、農村に根拠地を持つ共産党ゲリラの活動を弱めることになるだろう、と分析している。
 政府の秘密脅威分析報告書によれば、共産党ゲリラは、2002年以来後退してきたが、昨年、勢力を持ち直した、という。2002年には、戦闘員の数は30人まで落ち込んでいたが、昨年は4,398人に増え、重火器についても130から4,871器に増えている。共産党ゲリラは、すでに農村部6ヵ所に根拠地を持ち、すでに413回もの攻撃を仕掛けている。これは2009年に比べると、11%増である。共産党ゲリラは、爆弾の製造能力を付け、不意打ち攻撃に長けてきたので、フィリピン政府の治安部隊員の犠牲数は、9人から172人に増えている。この中に、フィリピン軍兵士の数は102人である。
 ブルッセルに本部を置く「International Crisis Group」は、「共産党ゲリラの時代遅れのイデオロギーにも関わらず、フィリピンの共産党ゲリラは行き続けている。彼らの掲げる富の平等な分配、人権侵害、社会的不正義などに耳を傾ける民衆がいることは確かだ」と語った。
 政府側の発表では、昨年、ゲリラの戦死者は35名、捕虜は131名、降伏者の数は、150人に上ったという。フィリピン政府軍参謀総長Ricardo David Jr は、1月13日、フィリピン共産党中央委員会のメンバーの1人Allan Jazmines を、Bulacan州のBaliuag 市で逮捕したと発表した。これに対して、共産党ゲリラ側は、「和平交渉をスムーズにするためには、即座に、無条件で釈放しろ」
 共産党ゲリラ側の和平交渉の代表は、Luis Jalandoni は「Jazmines は、和平交渉のコンサルタントであり、交渉中は身分が保証されているはずだ」と語った。