世界の底流  
イスラエルのOECD加盟?
2010年7月17日
北沢洋子

  今年に入って、イスラエルがパリの「経済協力開発機構(OECD)」に加盟するというニュースがしきりに国際マスメディアの間で流れている。
  OECDは長い間、米国、ヨーロッパ、日本など先進国24カ国が加盟していたが、90年代から韓国、メキシコ、チェコ、ポーランド、ハンガリー、スロベキアが加わり、30カ国になった。OECDは、民主主義、自由市場経済、経済開発という3原則が加盟資格の規範になっており、「先進国クラブ」と呼ばれる。
  今年1月18〜20日、OECDのAngel Gurria事務局長がイスラエルを訪問した。その時、イスラエル政府は「イスラエルの経済事情」と「イスラエルの労働市場と社会政策の調査」という2つの報告書を提出した。一方、Gurria事務局長は、「いくつかの憂慮すべき問題があるが」、「今後6カ月以内に、イスラエルのOECD加盟が実現するだろう」と語った。加盟が、「いくつかの憂慮すべき問題」が解決した後になるのか、はっきりしない。そして、「憂慮すべき問題」が解決するという見通しはまったくない。
  「いくつかの憂慮すべき問題」には、3つの問題が挙げられる。

第1は、汚職である。とくに軍需産業の汚職が問題である。
第2に、知的所有権、とくに医薬品産業の知的所有権問題がある。
第3は、最も重要な問題である。
イスラエル政府がOECDに提出した統計の中で、不法に併合している東エルサレムとシリアのゴラン高原の統計をイスラエル国内(グリーン・ゾーン)の統計に加えていることである。イスラエルの統計は、国内と占領地を分けていない。また、占領地の入植地の人口が14人に1人、つまり6%に上っているにもかかわらず、イスラエル国内の統計に入れている。西岸の入植者たちは、手厚い社会保障を受けている。イスラエルのOECD加盟の問題は、今日始まったものではない。1993年、ペレス外相が推進した。これは、イスラエルとパレスチナの和解である「オスロ合意」をテコにして、イスラエルがグローバル市場に参加し、国際的な承認を目論んでいる。
  イスラエルは、メキシコやチェコが加盟したにもかかわらず、より開発が進んでいるイスラエルが長い間、候補で置かれている事に不満を持っていた。
  なぜ、にわかにイスラエルの加盟問題が浮上してきたのだろうか。それは、イスラエル政府が福祉を切り捨て、急激な民営化を推進し、労働者の交渉権を剥奪したからであった。
  イスラエルのOECD加盟を粉砕しなければならない。それは、加盟は一種の国際的な褒賞である。これで、イスラエルは大手を振って占領を続けることができる。
  イスラエル政府が提出した統計によると、人口は1,100万人だというが、700万人しか市民として認めていない。残りの占領地に住む400万人のパレスチナ人については、何の統計もない。