世界の底流  
独立以来はじめてギニアの民主的な大統領選挙

2010年12月4日
北沢洋子

 今年11月15日、西アフリカのギニアでは、中央選挙管理委員会が、今年11月7日に行なわれた大統領選の決選投票で、野党の「人民結集党(RPG)」の候補アルファ・コンデが、決戦投票で対立候補「ギニア民主勢力連合」のディアロ候補を破り、大統領に選出されたと発表した。
 この選挙はギニアが、1958年、フランス領植民地から独立して以来はじめての民主的選挙であったということで、世界の注目を集めた。これまで、ギニアは独裁制と軍政の下に置かれてきた。
 2009年9月には、首都コナクリで、軍政に反対する野党のデモに対して、精鋭部隊が発砲し、156人に死者という大虐殺を行なった。国際社会はこの虐殺に怒り、それ以後、ギニアは世界の孤児になった。そこで、とにかく民主的な選挙を施行して、信任を取り戻さねばならなかった。
 アルファ・コンデ大統領は72歳、ギニアで最長老の政治家である。しかし、その多くは、フランスのパリ大学の政治学の学生であり、のち教授として過した。私は、60年代、「在仏黒いアフリカ人学生連盟(FEANF)」のリーダーであった頃に彼に会いに行ったことがある。ものすごい早口で、独立後のアフリカが新植民地主義の下に置かれていることを非難した。当時、黒いアフリカで唯一、マルクス主義を標榜していたコンゴ・ブラザビルについても、コンデは、一刀両断にこき下ろした。
 50年代、FEANFのメンバーは、フランス共産党系の学生連盟に加入していたが、フランス共産党の植民地独立運動に対する無知と敵対的態度に反発して、脱退して独立した組織FEANFとして活動していた。
 コンデは、ギニアの初代大統領セク・トーレから、欠席裁判にかけられ、死刑を宣告されたこともある。90年代、ギニアに帰国し、93年と98年、大統領選挙に立候補し、そのたび毎に投獄され、計20ヵ月間ギニアの刑務所で過した。
 独立以来はじめて民主的な選挙で選ばれたコンデ大統領は、「私は、和解の大統領になる」と言い、ライバルのディアロ候補についても「政府に迎え入れる用意がある」と語った。
 大統領選挙を監視をした「アフリカ連合(AU)」は「投票はきれいに、平和裏に実施された」と声明を出した。