世界の底流  
エクアドルのクーデターの失敗

2010年12月5日
北沢洋子

 9.11以後、米国がスポンサーとなったクーデターは4回あった。
 その中で、成功したのは2回であった。第1は、2004年ハイチのクーデターであった。ここでは民主的に選挙で選ばれたアリスティド大統領を国外追放した。第2は2009年、ホンデュラスのセラヤ大統領を倒すクーデターであった。
 一方、2回のクーデターが失敗に終わった。第1は2002年ベネズエラのチャベス大統領に対してであり、第2は、今年9月30日のエクアドルのコレア大統領に対するクーデターであった。
 9.11以後、ブッシュ政権時代、2回のクーデター起っている。そして残りの2回のクーデターはオバマ政権になってからである。さらに、オバマの任期である2012年までにいくつか起ると考えられる。
 なぜなら、オバマ政権が、イラク戦争、アフガニスタン戦争ともに撤退の気配を見せていないこと、またパキスタン、イエメン、ソマリア、パレスチナ、レバノン、北朝鮮などに戦線を拡大していること、さらにCIAや特殊部隊が、少なくとも75カ国で、暗殺や無人機による攻撃を続けていることなど、これまでの記録を見ると、それは理解できる。
 今回9月30日のエクアドルのクーデターでは、コレア大統領は幸運にも生き延びることが出来た。
 コレア大統領は、警察の一部によって、キトの警察病院に閉じ込められた。これに対して、大統領派の精鋭部隊が、銃撃戦の後、無事に大統領を救出したのであった。
 コレア大統領が救出される前に、Freddy Martinez警察長官は、大統領に辞表を提出した。これは、これは9月30日のクーデターの責任を取ったものだといわれる。
 『アルジャジーラ』テレビは、「エクアドルに戒厳令」という見出しをつけて、「クーデター勢力は飛行場を閉鎖し、ハイウエイを通行止めにし、タイヤを燃やし、大統領を拉致した。さらに、軍事空港、議事堂、キト市内の道路などを封鎖した、これは、コレアが警官の給料を2倍に値上げしたにもかかわらず、給料値上げや待遇改善の法案を議会で通過させるためという口実であった」と報じた。
 米政府は、コレア大統領が、ベネズエラのチャベス大統領の「ボリバル・アメリカ同盟(ALBA)」に加入し、WTOとNAFTAに対抗する政策を提起していることに反対している。ALBA加盟国は米国の覇権、とくにそのネオリベラリズムに反対しているからである。
 コレアは、警察が催涙弾を発射したため、入院させられた。そして、この病院は警察やクーデターの支持者によって、包囲されたため、病院に閉じ込められた、というのがクーデターの真相である。
 ラテンアメリカに詳しいJames Petrasは、「エクアドルの精鋭部隊がクーデターを失敗させた。2008年、Jahlk内相が、「米政がエクアドル警察に対して工作をしている」と非難した。一方、Petras によれば、「コレアの緊縮政策に対する労働組合の正当な抗議運動があり、これを右派勢力が利用している。これがコレア派勢力を分裂させる原因になっている。また、米国の「民主主義のための国家基金(NED)や米対外援助庁などの資金を受けているNGOと先住民グループなどが、間接的にクーデターを支持した。NEDとは米議会から100%資金を受けており、CIAが表立って活動できない途上国、移行国などで公に活動している。