世界の底流  
バンクーバーオリンピックに抗議するデモ

2010年2月19日

 2010年2月12日、「バンクーバー2010冬季オリンピック」の開幕式に60,000人の観衆が集まっている時、これに反対する市民5,000人が市内で抗議デモをした。これはバンクーバーの歴史の中では最大のデモであった。

 このデモを組織したのは「オリンピック抵抗ネットワーク2010歓迎委員会」であった。これには、多くの社会運動、市民組織が参加した。彼らはブリティッシュコロンビア州の全土から、そして、米国の北西部からやってきた。このデモのスローガンを見ると、参加者のそれぞれが何を要求しているか判る。
 スローガンの中で最も多く聞かれたのは、「2010 Homes, not2010Games」あるいは「Homes not Games」であった。これはバンクーバー市とブリティッシュコロンビア州が抱える社会問題の1つであるホームレス問題の危機を物語っている。これは、オリンピックの組織委員会とスポンサー企業が、オリンピックを準備するとき、「オリンピックの遺産」の1つとして、ホームレスのための快適な住居建設の公約を破ったことに抗議するものであった。
 もう1つの良く聞こえたスローガンは、「盗んだ伝来の土地でのオリンピックはいらない」であった。これは、カナダ連邦政府もブリティッシュコロンビア州もともにこれまで長い間、300を超える先住民族の土地と資源を奪ってきたことを指す。工場、観光、その他資本主義の施設が先住民の許可なしに、先祖代々の土地に建設されてきた。
 そのほかには、「反戦」のスローガンが聞かれた。オリンピックのために、バンクーバー市とその近郊には、重武装の警察と軍隊が配置された。バンクーバーに派兵された軍隊はアフガニスタンに配備されたカナダ軍(4,500人)より多かった。カナダ連邦政府は、治安対策費に10億ドルを使った。その使途の中には、精神障害者や麻薬中毒に関する非常事態時の電話サービスなどが含まれていた。
 国際オリンピック委員会(IOC)には、オリンピック前と期間中、軍事紛争を休戦するという伝統がある。昨年10月、オリンピックの開催国は「平和、友情、国際理解の理想」を推進するための国連決議が採択された。5項目からなる国連決議の第1項には、「加盟国は、第21回冬季オリンピックと第10回冬季パラリンピックの期間中は、国連憲章にもとづいて「オリンピック休戦を実施する」と書いてある。
 このような国連決議にもかかわらず、カナダとその同盟国はアフガニスタンでの戦闘を停止しなかった。事実、カナダとNATO加盟国は、2001年にアフガニスタン戦争が始まって以来の大規模な攻撃を展開した。バンクーバーオリンピックの「休戦」を執行するのはカナダのMichaelle Jean総督である。昨年9月、彼女はバンクーバーの市民に対して、「オリンピック休戦の伝統によれば、何が真の平和であるのかを考えさせるものである」「我々は平和と連帯の親善大使になるべきだ」と語った。これを反故にしたのであった。カナダ連邦政府は重大な過ちを犯した。