世界の底流  
ベルギーのビール戦争
2010年2月21日

 今年1月7日から、ベルギーでは、世界最大のビール醸造工場のAnheuser−Busch InBev(AB InBev)で、2週間にわたって、労働者のストと工業占拠があった。工場の労働者は工場への道路を閉鎖し、工場長や職場のマネージャーたちを監禁し、ビールを無料で配った。
 このストは会社が、2009年の第3四半期だけで15億5,000万ドルの利益を出しているにもかかわらず人員削減を通告したことに対する労働者側の反撃であった。週刊雑誌『Time』のインタービュにたいして、労組の指導者Roger Van Vlasselaer氏によれが、AB InBev社は株主のことばかり見ていて、社会的なコストを考えていない。同社には、労働者を解雇する理由は全くない」と語った。
 1月8日、RTBFラジオは、「ビール工場で働く労働者は10人ものマネージャーを人質にして工場の近くの会議室に閉じ込めている」と放送した。また1月8日、ビールの業界紙『Belga Newst』対して、ビール工場の労組の指導者の1人Marc Devenneは「我々は、会社の経営陣が現場に来て、首切りをやめることを要求しているだけだ」と語った。
 世界中でビール生産を独占しているAm InBev社は労働者の権利や製品の質より、利潤を挙げることにしか関心を持っていない。オランダのビール業界紙『Theo Vervloet』によると、ベルギー醸造者組合の会長が「AB InBev社が工場の拡大に熱心だが、肝心の品質には無頓着だ」と述べている。
 左翼のネット新聞『 Dissident Voice』によると、2004年、Don Monkerud社長が「ベルギーのInterbrewとブラジルのAmBevという世界第3位と第4位のビール会社が、合併して、AmBev社となったのだ」と語った。さらに、2008年、AmBev社は、バドワイザー、ステラなどのブランドで知られるAnheuser-Busch社を、520億ドルで買収した。
 その結果、Anheuser-Busch InBev社は世界のビール生産の25%を独占している。
 そして、AB InBev社は世界中で800人を解雇すると発表した。ベルギーでは、2,700人の労働者の中で299人が解雇されることになった。労組は、ベルギー国内には、「125ヵ所もの醸造工場があり、豊かなビール製造の歴史と文化をもっている」としてストを始めたのであった。
 労働者は同社の主な3工場の入口をビール瓶の木枠で壁をつくり、ビール、原料、ボトル、梱包用具などの搬送搬入を止めた。
 AB InBev社の広報担当者Karen Couckは、記者会見で、「倉庫はビールで一杯だが、搬出できない」と語った。実際、Stalla Artois、Hoegaarden、 Leffeなどのブランドはベルギー国内はもとより、フランス、オランダ、ルクセンブルグでも品薄になった。
 労働者の戦術は功を奏した。1月22日、会社は解雇を撤回した。