世界の底流  
国連小島嶼国会議
2010年5月9日

 さる5月3〜7日、パリのUNESCO本部で、第5回グローバル海洋会議が開かれた。これに出席したのは、小島嶼途上国(SIDS)をはじめ多くの途上国であった。参加国数は80カ国、823人が出席した。
 この会議では、SIDSが、海洋の劣化に伴って、海面の上昇、さんご礁の死滅、漁業資源の減少などを経験している。これについて、先進国が、世界の海洋の保存にさらに努力するよう求めた。
 これについて、セイシェル諸島のRolph Payet大統領顧問は、「今、漁業、観光業、生物多様性などが崩壊の危機に晒されている」「このような事態に対して、先進国は関心を払おうとしていないで、これまでと同じようにビジネスに励み、温室効果ガスを排出し続けている。しかし、今あるデータは、憂うべき状態にあり、今すぐに行動に移らねばならない」と説明した。
 会議では、100カ国以上が、気温上昇を1.5度以下に収めるためにCO2の排出を削減すべきだと言っているが、先進国は2度で良いと言っている。会議では、主として海洋の生物多様性の維持、海洋資源の管理などが議論された。SIDSは、昨年のコペンハーゲンの気候変動サミットで、先進国に対してCO2をさらに大幅に減らすようにとした訴えを、ここでも強調した。海洋科学者たちは、このような削減が温度上昇を抑え、海洋の酸化を防ぐのに必須であると述べた。
 グリンピースの統計によると、これまで海洋は人間が排出したCO2の70%を吸収してきたため、海水の化学物質のバランスを崩し、酸化を増やしている、と言う。また、Payet氏は、「多くの人は海洋の酸化がもたらす影響について関心を持っていない。影響が明確になるには、孫の時代になるだろう」と語った。
 Payet氏のセイシュエル諸島は100の島々から成り、すでに海洋の温度の上昇により、海面上昇が始まっている。そのため住民の移転やその他社会問題が起っている。しかし、貧しい国はこれに対処するだけの資金と技術がない。
 42の島嶼途上国(オブザーバーを含む)は同盟(AOSIS)を結成している。彼らは、CO2の排出に関しては、世界のなかでたった0.3%に過ぎない。しかし、海面上昇という結果を引き受けている。
 国連では、100カ国以上が、気温上昇を1.5度以下に収めるためにCO2の排出を削減すべきだと言っているが、先進国は2度で良いと言っている。
AOSISの代表であるグレナダのLeon Charles氏は「我々は、強力な緩和活動を展開しなければならない。そのために、アドボカシイ活動を強め、また世論を動員しなければならない」と語った。
 SIDSが受ける被害は海面の上昇に限らない。淡水資源の枯渇も大きな問題である。昨年末以来、カリブ海諸国はきびしい旱魃に見舞われた。その結果、炊事、下水道、農業用の水が足りなくなった。これは観光業にも影響した。ホテルまでトラックで水をはこばなければ成らなかった。地下水の枯渇も問題である。より深く井戸を掘らねばならなくなった。
 以上の理由から、国連が資金を出し、セントルチアに本部を置く「水源地・沿岸部地域の統合管理プロジェクト(IWCSAM)」は、国連グローバル海洋会議の議題に海水問題に淡水問題を加えるべきだと主張している。たしかに両者には違いがある。海水に係りのある人びとと、淡水に係る人びととは異なっている。しかし、「我々は両者合わせて、ともに行動すべきだ」と「政府間グローバル水パートナーシップ」のAnia Grobicki事務局長は語った。彼女は、「淡水の枯渇で苦しんでいる人は10億人に上る。そのなかで島嶼途上国は最も影響を受けている」と言った。