世界の底流  
2011年世界社会フォーラムについての情報

2010年8月14日
北沢洋子

1.来年2011年に開かれる第10回「世界社会フォーラム」

1) 場所;セネガルの首都ダカール、海辺のダカール大学
2)日時;2011年2月6日〜11日
3)セネガル側の準備委員会;政治的ネットワーク、草の根組織、NGOなどによって幅広く組織されている。現在、セネガル大統領を開会式に招待することについて、議論している。
4)来年のWSFの中心的な議題;移住労働者

2.ダカールWSFにいたるまでのアフリカの活動

ダカールのWSFは、これまでのように、いきなりWSFが開かれるのではなく、事前にアフリカ大陸の各地で社会フォーラムで議論するテーマについて、国境を越えた議論を展開する。
セネガルの隣国マリの首都バマコに本拠を置く「マリ送還者協会(AME)」は、アフリカでも活発な活動で知られる。AMEはすでに、ダカールの準備委員会の移住労働者問題担当者とすでに協議に入っている。またドイツのハンブルグにある移民・難民の組織「Fluchtlingsrat」もダカールと連絡をとっている。

3.「バマコ〜ダカール・ツアー」

そもそも、このプロジェクトは、2010年1月、モロッコで開かれた「北アフリカ社会フォーラム」で提案された。2010年1月に第一回のツアーが実施された。ここで「アフリカ・ヨーロッパ・ネットワーク」も結成された。このネットワークは、主としてドイツ、それにオーストリア、オランダに住む移住労働者や難民で構成される。

来年のツアーは、WSF本会議の前、2011年1月25日〜2月2日間行なわれる。最終目的地はダカール沖のゴレ島である。17世紀から19世紀にいたる300年間の奴隷貿易時代、ここからアフリカ人が奴隷としてアメリカに送られた。ツアーはWSF終了後、再びバマコに引き返す。

このツアーはバマコのAMEが組織し、とくに西アフリカの団体に参加を呼びかける。
ツアーの政治的トピックは「移住労働者と難民の権利」である。しかし、一方では、移住や難民が起こる構造的な原因についても討論する。

バマコ〜ダカール間は、1400キロの距離である。鉄道が敷かれているが、民営化されてた上、貨車ばかりで、途中ほとんど停車しない。そのためバマコ〜ダカール間をバスで移動する。

「ツアー」という言葉が気にいらない人は「キャラバン」と呼んでいる。ともかく、途中、少なくとも5ヵ所でセミナーや集会を持つ。これは、大規模な非暴力のデモも含まれる。そしてドEUの共通移民対策「Fontex」 に対して、マリまたはダカールとドイツで同時抗議行動も企画されている。

バマコ〜ダカール・ツアーに加えて、カメルーンの移民組織「GRAMI−ACネットワーク」が ヤウンデ〜バマコ間のツアーやモロッコ〜モーリタニア〜バマコのツアーを企画している。

4.このほかの事前活動

フランス語圏の人びとによって、いくつかの事前行動が計画されている。それは「壁でなく橋を(Des Ponts Pas Des Murs)」、「ヨーロッパ・アフリカ人のマニフェスト」、「Migreurop」、持たざる者の国際組織「 No Vox International」、カメルーンの「GRAMCI― IC」などの活動である。

5.「No Border-Camp」

これは、9月27日〜10月3日、ブルッセルで開かれる。これは、フランスとドイツにいる移民労働者の活動をより活発にするだろう。

6.ダカールWSFの主なトピック

(1)EUの移住労働者問題
すでに述べたように、ハイライトは移住労働者と難民問題である。とくにEUのFrontex、Readmission協定、送還憲章、EUとアフリカのCamp-policiesなどについて議論される。
これまでのWSFのコンセンサスは、「Right to Stay」と「 Rght to Go 」である。
(2)ヨーロッパにおける難民、不法滞在者の状況。
これはキャンプ、収容所、警官の暴力、労働搾取など。
(3)農業問題。
とくにバマコ〜ダカール間では、落花生の巨大なプランテーションがある。これは、小農民の土地を取り上げ、その結果、移住労働者や難民が増えた原因である。 EUや米国政府の農産物輸出補助金がこれら小農民を破産に追いやった。WTOの農業協定や、巨大なアグリビジネス、スーパーマーケットなども小農民の衰退につながった。
また、GMO問題もある。昨年マリで大規模な綿花生産農民の抗議デモが起こった。
(4)気候変動。
これは、マリなどアフリカの国の農業に大きな被害をもたらしている。とくに水源の枯渇が深刻である。
(5)民営化。
公共運輸機関、国営工場などの民営化で多くの労働者が職や生計手段を失った。
アフリカの民営化は債務危機を口実にして強制された。その関係でIMFの構造調整プログラムを議題にする。
(6)漁業。
EUの大規模漁船団が西アフリカの海岸沿いに操業していることは、とくにセネガルの漁民にとって深刻である。
(7)マリでのウラン鉱山開発。

7.「移住労働者世界憲章」
この会議は、WSFの開催前に、ダカールの沖のゴレ島で開かれる。
www.cmmigrants.org/spip.php?article46