世界の底流  
フランス領植民地で労働者のストに勝利
2009年4月25日


 フランスは、現在なお、カリブ海、インド洋、南太平洋の島嶼を「海外県」という形で植民地にしている。「海外県」という地位なので、フランス議会に議員を選出している。
 とくにカリブ海の島嶼は歴史的にアフリカから黒人を連行して、砂糖プランテーションで奴隷として働かした。したがって、現在、人口の大多数は黒人である。
植民地解放の思想的指導者であったフランツ・ファノンは、マルティニク島の出身である。
 現在、これらの島々で広範な社会運動の連合体が組織され、長期ゼネストに勝利している。
 これは、最後の植民地解放の兆しである。

1. グアドループの44日のゼネスト

 カリブ海の島グアドループでは、3月4日、44日間続いたゼネストに勝利した。このゼネストは、Liyannay Kont Pwofitasyon (LKP=労働、政治・社会・文化団体の広範なコレクティブ)によって組織された。そして、賃上げ、雇用確保、待遇改善などの要求を掲げて、44日間という長期のゼネストを行なった。
 3月4日、LKP、それにMEDEF(フランス経営者団体のグアドループ支部)、とフランス政府との3者間の協定書が成立した。これはLKPの「最初の勝利」であった。この協定は、ゼネスト中の2月16日、ポワンテアピートル郊外で、バリケードを超えて侵入した政府側の挑発者によって射殺された労組指導者Jacques Binoに因んで「Jacques Bino協定」と呼ばれる。
 しかし、経営者側の中の一部のMEDEFのメンバーは、協定書が成立する前に交渉のテーブルから退席した。そして、LKPと政府との間に締結された協定書の合法性にクレームをつけ始めた。
 3月13日、LKPが開催した集会で、Elie Domota代表は、協定書に署名したMEDEFのメンバーの長いリストを読み上げた。そして、協定書に署名したフランス政府の閣僚やグアドループの知事らが、今になって協定書の合法性を問題にすることを非難した。「労組員たちは、会社にたいして、協定書の遵守を要求することが出来る」と語った。
 協定書に署名を拒んだ会社では、労働者のストはまだ続いている。
 また、MEDEFは、協定書の解釈を捻じ曲げようとしている。協定書には、低賃金の労働者には200ユーロの賃上げとなっている。この賃上げは、3年間だけは、経営者、地方政府、フランス政府との間で負担する、その後は、100%経営者が負担することになっている。ところが、経営者は、「3年後には賃上げがなくなる」と解釈している。そんなことはどこにも書いていない。
 また、パリのフランス国会は、この協定書をめぐって議論している。その前文に「内発的な経済・社会発展を阻んでいるプランテーション経済を終わらせ、新しい経済秩序をうち建てる」という文言がある。この「新しい経済秩序」について議員の一部が異議を唱えている。
 さらに、Elie Domota自身が、「挑発を誘発し、暴力を持って署名を強要した」という容疑でフランス海外県の司法長官に起訴された。さらにDomotaが、労働組合の指導部に対して「異なった人種の人びとに対する差別、憎悪、暴力を唆した」ということで、法的な措置を取ると脅かされている。
 この非難の出所は、Domotaが協定書締結の翌日の3月5日に開かれた集会で行なった声明にあった。聴衆の中から「フランス政府やグアドループのエリート支配層(通称ベケ)がはたして最低賃金に200ユーロの賃上げを遵守するだろうか」という質問が出た。これに対して、Domotaは「彼らには、協定を遵守するか、グアドループを去るしかない。我々はこの点については、断固たる態度で臨む。ベケ一味に奴隷制度を2度と復活さない」と答えた。
 グアドループ政府の司法長官がDomotaを攻撃する理由は、彼が率いる「グアドループ労働総同盟(UGTG、1973年設立)」がゼネストのバックボーンであったことにある。とくにメディアは、LKPストライキ・コレクティブを暴徒扱いし、「フランス政府は、不法な協定の署名を暴徒によって強制された犠牲者である」と報道した。
 このマスメディアが言う「暴徒」とは、グアドループの黒人大多数を指す。ベケ一味は、彼らの政治基盤が今回のゼネストによって、崩れつつあることを悟ったのであった。
 Domotaに対する司法当局の攻撃が、協定を無効にしようとする陰謀だと、疑われる。
 フランス本国では、主要な労組が3月19日、連帯ストを行なった。

2. マルティニクの38日のゼネスト

 カリブ海のもう1つのフランス領植民地マルティニクでは、広範な労組、社会運動から成る「2月5日コレクティブ」がゼネストに勝利した。これはゼネストが始まった2月5日を記念して付けられた名前である。ゼネストは38日間続き、コレクティブが要求した項目のほとんどを獲得した。3月14日、協定の締結の日には、20,000人が町をデモ行進した。
 彼らは、協定の締結に際しては、自然に人びとが首都フォールドフランスの県庁前に集合した。彼らは口々に「Matinik Leve」と叫んだ。これはクレオール語で、「マルティニクは立ち上がった」という意味である。
 その前日、フォールドフランスで多くの人びとが「ベケ」に向けたスローガンを叫んだ。
 「ベケ」とは、グアドループと同様、裕福な白人植民地主義者と奴隷所有者の子孫であった。マルティニクのほとんどの住民は、砂糖プランテーションで働くためにアフリカから連行された元奴隷である。
 3月11日朝、47,000人の低賃金労働者には200ユーロの賃上げ、それより高い収入の労働者に対してはより安い賃上げを盛り込んだ協定書の草案が出た。労働者は3月1日に遡って、賃上げ額を支給される。
 ほとんどの企業家たちは、ゼネストが終わって、店が開かれて1ヵ月間、400品目について、20%の値下げをすることに同意していた。
 これら条件は、先に締結されたグアドループの協定書の内容と同じだ。「2月5日コレクティブ」の代表Michel Monrseは、AFP通信に対して「協定が実施されなければ、ゼネストを再開する容易がある」と語った。

3. レユニオンにストライキ運動が広がる

 レユニオンはインド洋のフランス領植民地の島嶼であり、海外県の地位にある。ここでは、労組中心のコレクティブがカリブ海の植民地と同様の闘争を行なった。
 レユニオンの人口は800,000人だが、35,000人に上る人びとが毎日、要求を掲げてデモ行進をした。しかし、カリブ海のように、完全な勝利を獲得できたわけではない。コレクティブと経営者代表、フランス政府との間の交渉が続いている。これまでのところ、低所得者向けの公的住宅の家賃が凍結になっただけに留まっている。
 3月5日、レユニオンの首都サンデニで開催された集会で、労組、政治団体、市民社会運動、コミュニティ組織のコレクティブである「COSPAR」のGilles Leperierは、「COSPARは純粋なコレクティブである。ここには代表者はいない。これは2月5日に結成された。これには45の団体が加盟している」とAFP通信に語った。
 Leperlierによれば、レユニオンの人口の52%は貧困以下の生活であり、失業率は24%に上る、と言う。COSPARが掲げる要求は62項目に亘る。グアドループやマルティニクで獲得した最低賃金に200ユーロの賃上げ、年金、日用品の20%値下げ、低所得者向けの住宅の建設、男女平等賃金、金持ちに増税などが含まれる。レユニオンでは、裕福な800家族が税金を全く納めていない。
 Leperlierは、「我々の戦いは、このような要求に留まらない。フランスの海外県では、エリートによる支配に挑戦する大きな社会・政治運動が始まっている。これは、海外県が自決権を獲得し、本国に依存している経済をやめるまで、続くだろう」と語った。