世界の底流  
米・NATO軍のアフガニスタン大量増派
2009年10月4日


 去る9月半ば以来、米国のマスメディアは「米軍は、アフガニスタンに17,000人の米軍増派を行なったばかりなのに、さらにかつてない大量の増派を計画している」と報道した。
  米・NATO軍のStanley McChristal 司令官とMicael Mullen 参謀総長が、オバマ政権に対して10,000〜45,000人の増派を要求した、と報じられる。
 だが正確な増派の規模については、さまざまな報道がある。
 例えば、『Fox News』は米軍45,000人が増派される、と報じた。『ABC News』 は40,000人と言い、9月15日付けの『Christian Science Monitor』紙は45,000人と報じた。
 メディアがこぞって似たような増派数を報じているのは、国内世論を納得させるために、先走ってして、軍がわざとリークした、と考えられる。いずれにせよ、アフガニスタンの歴史上最大の外国軍隊の駐留になる。
 7年前、アフガニスタンに攻め込んだ時の米軍の数は5,000人であった。しかし、今年12月末までに68,000人になることが決まっている。その前に、さらに大量の増派計画が出てきた。
 45,000人が増派されると、米軍は113,000人になる。このほかに、NATOの下、「International Security Assistance Forces (ISAF)」が50カ国総計35,000人いる。したがって、アフガニスタン駐留軍のマクリスタル総司令官は148,000人の軍隊を率いていることになる。
 1989年2月16日付けの『ニューヨークタイムズ』紙は、20年前、旧ソ連軍がアフガニスタンを侵略した時、最高時、115,000人だったと、推測した。したがって、米・NATO軍約15万人の駐留は、アフガニスタンの歴史上、初めてのことになる。
 マスメディアは、このような歴史的分水嶺を問題にしないで、増派のニュースだけをリークした。誰がリークしたのか、なぜリークしたのか、などと面白半分に扱っている。
 英軍司令官をはじめとして、他のNATO軍は、すでにパキスタンに介入していることを問題にしている。なぜなら、パキスタンはアフガニスタンの人口の6倍もあり、さらに核兵器を持っている国なのだ。
 2009年9月12日、オランダの『Radio Netherlands 』はマクリスタル司令官の訪問に際して、「パキスタンのOperation Enduring Freedom 軍とアフガニスタンのNATO
のISAF軍を統合し、2つの司令の1つにすることを考えている」と放送した。
 米軍45,000人増派のニュースは、2009年9月15日、ミュレン参謀総長がAP通信に、初めて語ったのであった。その4日後の9月19日には、マクリスタル司令官が『ロイター通信』に増派の計画はあるが、「まだワシントンに正式に送っていない」と打ち消した。
 その2日後、『ワシントン・ポスト』紙は、66ページにのぼるマクリスタル司令官の評価報告書(ただし要約)をスッパ抜いた。それには、「戦争はアフガニスタンでエスカレートするだけでなく、パキスタン国内にも拡大するだろうし、挙句の果てには、イランをターゲットにしなければならない」と書いてあった。
? 多分これが、現地アフガニスタンの司令官たちの真の見解であり、オバマ大統領への要請なのであろう。

 評価報告書には、次にことが書かれてある

  1. アフガニスタンの反政府ゲリラは明確にパキスタンの支援を受けている。ゲリラの主だったリーダーはパキスタン国内におり、パキスタンの軍情報部(ISI)の支援を受けている。そして、アルカイダと関係を持っている。
  2. イラン政府軍の1部はタリバン戦士たちを訓練し、武器を供与している。このように当面、イランは差し迫った脅威ではないが、将来、脅威となる可能性がある。
  3. そして、アフガニスタンの反政府ゲリラの主要なグループは、Quetta Shura Taliban (OST)、 Haqqani Network(HQN)、 Hezb-e Islami Gulbuddin(HiG)の3つである。第3のHiGは、ゲリラ名をGulbuddin Hekmatyar と称し、Peshawar Seven Mujahideenの1つで、1978〜1992年、ソ連軍との戦いにCIAから何百万ものドルを受け取ってきたし、1985年には、レーガン大統領にホワイトハウスに招待されている。その時、レーガンはGulbuddin Hekmatyarを「アメリカ合衆国の創設者に比較できる」戦士であると、褒め称えた。
  4. 90年代当時のCIA長官は、今のゲーツ国防長官である。彼は、延べ27年間CIAに在籍した。彼が書いた本『From the Shadows 』のなかで、アフガニスタンでのCIAの秘密作戦は、冷戦を終了させた」と書いている。

 2005年7月8日、英国のRobin Cook外相が、『ガーディアン』紙に、「ビンラディンは西側の情報部の大いなる計算違いであった。80年代、CIAは、サウディアラビアの資金で持って、アラブ地域から戦士をリクルートして、対ソ・ジハード戦を行なわせた。当時のCIAのコンピュータに、ムジャヒディーンのデーターベースがあるが、アルカイダはその中の1グループとして登録されている。
 2009年9月19日付けの『ロサンゼルス・タイムズ』紙によれば、CIAは、スパイ、分析官、あるいは准軍隊として、700人の要員をアフガニスタンに配置している、と報じた。
実際、イラク戦争やベトナム戦争と同様に、アフガニスタンでも、軍の作戦の際、CIAが深く介入している。
 アフガニスタン戦争をめぐって、ホワイトハウスの中で、亀裂が生じている。2009年10月3日付けの『インターナショナル・ヘラルドトリビューン』紙は、バイデン副大統領が、マクリスタル司令官の増派要請に対して、異を唱えている、と報じた。マクリスタル司令官のエスカレーションに対して、バイデン副大統領は、米軍のアフガニスタン駐留は、縮小し、タリバンの掃討作戦ではなく、対象をアルカイダのリーダーの追跡に絞るという戦略に代えるべきだと言っている。このままでは、米軍・NATO軍の戦死者の数が増える一方だ、と言っている。2001年以来、米軍の戦死者の数は850人に上っている。
 このバイデン提案に対して、マクリスタル司令官は真っ向から反対した。