世界の底流  
ギニアの軍事クーデターとアルミの多国籍企業
2009年1月18日


 2008年12月22日、西アフリカのギニアで、ランサナ・コンテ大統領の死去とともに、ムサ・ダディ・カマラ(Moussa Dadis Camara)大尉が率いる軍隊がクーデターを起こして、政権を握った。クーデター派は、国家民主・開発評議会という組織を名乗り、国営放送を通じて、「政府と議会を解散し、腐敗を一掃し、経済危機を解消する」とアナウンスした。
 故コンテ大統領は、アフリカ大陸の中で最も長く独裁権力を振るった人物であった。1984年4月、独立以来続いていたカリスマ的なセク・トーレ大統領の死去とともにクーデターで政権の座につき、以来24年にわたる軍事独裁を敷いてきた。ギニアはアフリカの中で、政権は最も腐敗し、人びとは最も貧しい。
 一方、ギニアは鉱物資源に恵まれた国である。アルミの原料であるボーキサイトは、世界一の輸出国である。また、豊富な鉄鉱石を埋蔵している。
 ギニアのボーキサイトを輸入しているのは、世界最大のアルミの多国籍企業たちである、それは、ロシア系のRusal、米系のAlcoa、英系鉱山多国籍企業Rio Tintoの3社である。
 コンテ大統領の末期には、Rio Tinto社が、60億ドルという巨額な鉄鉱石の鉱山開発プロジェクトの開発権をめぐって政権と揉めていた。コンテ政権は、Rio Tintoの開発権を半分に減らし、残りをイスラエルのダイアモンド取引業者Beny Steinmetzに与えようとしていた。
 ギニアのボーキサイト生産は、Compagnie des Bauxites de Guineeという鉱山会社が行なっている。これは、ギニア政府が49%、カナダ、米、フランスのアルミ会社のコンソーチアムが51%の株を持っている。多国籍企業側は、政府の持ち株をすべて引き渡すように圧力を掛けていた。
 クーデターの2日後、多国籍企業側は、「ギニアのボーキサイト生産に影響がない」と声明を発した。このことから、クーデターは、多国籍企業にとって、悪い存在ではないようだ。
 しかし、ギニアは、地図を見ると明らかなように、「くの字」型をしており、シエラレオンとリベリアを包み込んだ形になっている。両国とも最近内戦が終わったばかりの国である。もし、ギニアの政情が安定しない場合、そして、軍事独裁が続くならば、この地域の脆い民主主義と平和が脅かされるだろう。