世界の底流  
チェコ・ポーランドの米軍基地建設を放棄
2009年10月3日

 9月26日、オバマ政権は、チェコに予定していたレーダー基地とポーランドの迎撃ミサイル基地配備計画をキャンセルした、と発表した。
 世界のマスコミはこの決定を、オバマ政権が合理的な判断を下したものだと評価している。しかし、オバマ政権に計画中止を決定させたのは、現地のチェコとポーランドはもとより、米国内の粘り強い反対キャンペーンがあったことを忘れてはならない。
 実際、チェコとポーランドの人びとの多数派は、いかなる米軍の基地建設に反対であった。しかし、米国のマスコミを読んだだけでは、決して判らなかっただろう。例えば、「東欧は米国の戦略的重要性を失った」、「米国のミサイル配置を中止したのは、チェコ、ポーランドの裏切りだ」、さらに、「東欧はオバマに愛を持っていない」などという極端な表現も見られた。これらは、政府と人びとの意見を同一視するというこれまでのマスコミの失敗をくりかえした。
  チェコでは、これまで、大規模なデモが続き、それがチェコ国会のレーダー配備協定の批准を不可能にしてきた。反対派は、陳情、デモ行進、ハンスト、街頭芝居などあらゆる独創的な手段で訴えてきた。チェコのレーダー基地建設反対派は、自分の国の多くの政治家のみならず、世界中、とくに米国の世論に影響を与えた。そのなかで、チェコの闘いを支持する「平和と民主主義キャンペーン(CDP)」は、米国での署名運動、デモ、フォーラムを組織した。またCDPは『ニューヨークタイムズ』、『ザネーション』『ザプログレシブ』『ニューヨーク・レビューオブブックス』などへの広報活動を行なった。
 CDPの共同代表のJoanne Landyは、「オバマ政権がミサイル基地計画を中止したことについて、推測する以外にないが、多分、それはゲイツ国防長官が9月20日付けの『ニューヨークタイムズ』に語ったように、より有効な対ミサイル基地を配備するという近代化路線であるのかも知れない」と語った。
 オバマ政権の高官は、「これは軍事予算の無駄を省くものだ。今ある米軍基地の配備を取り替えるほうが、新たに配備するより安くあがる」と言った。あるいは、かつてチェコとポーランドに基地を置いていたロシアに対する融和政策かも知れない。オバマ政権はロシアがイランに対する制裁措置に参加してくれることを期待したのかも知れない。
しかし、オバマ政権がチェコとポーランドの人びとがミサイル基地の配備に反対していることを理由に挙げることは決してないだろう。
 9月20日、『ニューヨークタイムズ』紙のインタービュに対して「米国は、ヨーロッパのミサイル防衛は安全だ。米国は、2015年までに、最も脅威の高い地域に、これまで地上に配備していたSM3sに代わる、アップグレドしたSM−3迎撃ミサイルを海上に配備する用意がある」と語った。
 CPDはこのような軍拡計画が、イランの核の脅威に対する有効な手段であると認めていない。CPDが2007年にチェコのミサイル配備計画に反対する署名書に書いたように米国とその他核保有国は、核・通常兵器軍縮と予防戦争戦略の放棄こそが、危機を防止する手段であると考えている。
 今回のオバマ政権の措置に対して、チェコの「非暴力運動」と「No Bases Initiative」という2つの反対運動組織はともに「これで終わりということではない」と言っている。