世界の底流  
アフリカの肥沃な農地の争奪戦はじまる
2009年1月16日


 農産物価格が乱高下する中で、アフリカの肥沃な農地を投機目的で買い占めるという事態が発生している。食糧の高騰によって、エジプトやハイチで暴動が起こったことは、記憶に新しい。

1.韓国が130万ヘクタールの農地をマダガスカルで確保
 08年12月20日付けの英『ファイナンシャルタイムズ』紙は、韓国の大宇ロジスティックス社がマダガスカル130万ヘクタールの土地を確保したことを報じた。
 同社はマダガスカル政府と99年という長期契約で土地を借りた。130万ヘクタールといえば、ベルギーの国土の半分にあたる。ここで、韓国向けのとうもろこしとパームやし油を生産する計画である。
 この契約は、アフリカ最大の規模である。同様な契約が今後、続くことが予想される。国連の食糧農業機構(FAO)は、先進国による海外の農地獲得競争が、「新植民地主義」のはじまりである、と警告している。
 とくに、マダガスカルでの大宇ロジスティックが確保した土地が、マダガスカルの耕作地(約250万ヘクタール)の半分を占めていることに危機感を強めている。
 大宇ロジスティックは、『ファイナンシャルタイムズ』紙に対して「これから15年間、韓国から農業労働者を連れてきて、マダガスカルでとうもろこしを生産する予定である。これは韓国のとうもろこし輸入の半分にのぼるだろう」と語った。
 韓国は、とうもろこしの輸入国としては、世界第4位であり、大豆は世界の10大輸入国の1つである。
 大宇ロジスティックは、「マダガスカルでのとうもろこしとパームやし油の生産には、マダガスカルには1セントも払わないで済む」と語った。確かに、契約では、マダガスカルの農民を雇用することになっている。一方大宇側は「韓国から農業労働者を連れてくる」とも言っている。大宇の投資の目的は、「韓国の食糧安全保障の確保のため」であると大宇の支配人Hong Jong-wanは語った。
 08年5月に、マダガスカル政府と大宇との間に覚書が交わされた。この中には、130万ヘクタールのリース料は無料であった。7月に正式の契約書を交わした時点では、「リース費用に関しては、今後交渉する」と書いてあった。しかし、大宇側は「1セントも支払う意思はない」と言っている。なぜなら「この土地は、未耕作地であるから」だと言う。さらに大宇が「道路や灌漑、穀物倉庫などのインフラを整備する」と言う。
 しかし、マダガスカル駐在のヨーロッパの外交官たちは、そのような投資効果は、「実に僅かなものだ」と批判している。

2.アブダビがアフリカで農地を買う計画
 湾岸の産油国のアラブ首長国連邦の投資会社Al-Qudraホールディング社(アブダビ)は08年8月、アフリカとアジアで、09年第1四半期の終わりに、40万ヘクタールの農地を買う予定であると発表した。
 これに呼応するかのように、エチオピアのMeles Zenawi首相が、「中東の国に何十万もの農地を売る交渉を進めている」と語った。

3.09年1月11日付けの『ファイナンシャルタイムズ』紙は、元ウォール街の銀行家で、現在はバージン島に本社を置くJarch CapitalのPhilippe Heilberg社長が、元CIAと国務省の高官に支援されて、スーダン南部の悪名高い軍閥から広大な肥沃の土地を確保したことを報じた。
 Heilberg氏によれば、40万ヘクタールの土地のリース権を確保したのだと言う。
 軍閥の名は、Paulino Matipであり、彼の息子Gabrielが経営する会社の株の大半を買うという形式をとっている。Matipは、スーダン南部の長年の内戦では、スーダン政府と反乱軍の両方について闘った。2005年、和平協定以後は、スーダン南部自治区の軍の副司令官である。今回リースの対象となった土地はもっとも内陸部の孤立した地域である。
 HeilbergとGabriel Matipとのリース交渉は、食糧危機の中で、外国企業がアフリカの肥沃な農地の争奪戦を行なっていることのまさに典型的な例だと言えよう。