世界の底流  
戦闘的労働運動の時代がはじまるのか?
2007年1月10日


1. グローバルな戦闘的労組の誕生

 21世紀に入って、世界、とくに途上国の農民が、WTOに対するVia Campesinaのような国境を越えた戦闘的な反グローバリゼーションの運動が生まれているが、最近では、労働者についても同じような動きが出ている。

 1月2日付けの英紙『ガーディアン』は、英国最大の民間労組であるAMICUSが、ドイツの機械金属労組IG−Metallと米国の鉄鋼労組USW、国際機械工労組という2つの大規模労組との間に協定を結んだことを報じている。加入者が600万を超える英、米、ドイツの国際労組の誕生である。その目的は、会社側が、国境を越えて労組側に不利になるように画策することを封じるためであった。
 この国境を超えた労組の統合は、多国籍企業に対して労働側が統一戦線を組んで闘うための第1歩である。
 AMICUSのDerek Simpson書記長は、『ガーディアン』紙に対して、「我々が目指しているのは、国境を越えてグローバルな資本に対して闘うことができる強力な統一労組をつくることだ。今後10年間で、緩やかだが連合した多国籍な労組の連合ができるだろう。
 AMICUSは、英国内でも、来る5月に、全国運輸労組と合併して、200万の統一労組を誕生させることになっている。ドイツのIG-Metallの240万、米国のUSWの120万、国際機械労組の73万を合わせると、630万の国際労組となる。
 英国の労組は、これまで英国の労働保護法が弱体なことに付け込んで、多国籍企業が英国の労働者を犠牲にしてきたことに抗議してきた。たとえば、昨年4月には、フランス自動車のプジョー社が英国のコベントリー近くのライトン自動車工場を閉鎖して2,300人を解雇した。そして、労賃の安いスロバキアに工場を移した。
 同じことが、全国運輸労組について起こっている。TonyWoodley書記長によれば、1国内での労組という考え方は古いという。これまでにも、英国の運輸労組は、海外の労組と協力してきた。たとえば、北米のサービス労組SEIU(130万)と協力関係にあった。これはAMICUSのように統合というまでには至らなかったが、グローバルな資本に対する挑戦であった。

2. エジプトでのストの勝利

 エジプトでは、カイロから北東130キロのガゼルアルマハタにある国営Al-Mahata繊維会社の労働者2万人(その4分の1は女性労働者)が、民営化に反対してストを行い、これを撤回させた。これは、第3世界での民営化反対闘争の中で労働者の大規模なストによって勝利した数少ないケースである。
 エジプトにおいても、これまで封殺されてきた労働運動の中で、1988年以来始めてのストによる勝利であった。
 Al-Mahata社のストは、会社側が民営化は合理化のためだと言い、一方で、年末に200ポンド(35ドル)のボーナスを出すと約束した。これに対して、労働者は抗議して、5日間のストを宣言し、同時に数箇所の工場を占拠した。
 労働者は、またガゼルアルマハタ市内で、工場の腐敗と世銀が進める民営化に反対を訴えたデモをした。デモ隊は会社の会長の名前を書いた棺を担ぎ、その辞任と腐敗の調査を要求した。また約束されたボーナスの支払いも要求した。
 この大規模なデモに対して、いつも野蛮に弾圧するエジプトの警察は驚くばかりで、なすすべもなかった。エジプト政府は占拠された工場に軍隊を送ったが、工場の周りに配置されただけで、5日間、手を出さなかった。
 エジプトでは、このストはここ数年間になかったことで、規模も最大だった。新聞は「労働革命」という題をつけ、デモの様子を写真入で第1面に報道した。