世界の底流  
米国の民主化とは?−ハイチの例
2006年2月6日


 2004年2月、米国はカリブ海で最も貧しい国ハイチで民主的に選出されたアリスティード政権を力ずくで転覆させ、Gerard Latortune暫定政権をでっちあげ、国連PKFを派兵した。以来、この2年間に暫定政権は4回も総選挙を延期してきた。
 しかし、ようやく今年2月から3月はじめにかけて総選挙が施行されることになった。予想では、アリスティードの同調者である元大統領のルネ・プラバルが大統領選では優勢である。
 一方、最近裁判所はアリスティードの友人であり投獄されているジェラード・ジャン・ジュスト神父に対する殺人容疑について「無罪」を宣告した。神父は昨年7月、ジャーナリストのジャック・ロシェ殺害容疑で逮捕されていた。神父は事件当時、マイアミにいたというアリバイが証明された。
 ハイチ当局は、ジュスト神父を逮捕した後、獄中にいることを理由に、LAVALAS(アリスティードの政党)が神父を大統領候補にすることを禁止した。
 ジュスト神父は、ロシェ殺人容疑が晴れたにもかかわらず、さらに武器隠匿の罪で投獄され続けている。
 アムネスティ・インターナショナルは、ジュスト神父を「良心の囚人」として、とくに最近神父が白血病であると診断されたため、早急な釈放を求める国際的キャンペーンを開始した。
 ハイチの貧しい地区では、暴力がエスカレートしている。貧しいソレイル地区では、国連PKFのヨルダン兵2人が殺された。この事件に関して、現地住民は国連軍が先に地区の病院に発砲した、と訴えた。実際には、この事件は、ハイチ財界と外国の投資家たちの圧力で、国連軍がソレイユ地区に対する武力攻撃を強めていたことから起こったものであったといえよう。 
 ハイチの総選挙で目立つことは、米国議会と国務省から8,000万ドルの資金を得て、NED(世界の底流05年1月25日付け「ウクライナの新大統領はMade in USA」を参照)が、“民主化”を口実にして、活動している点である。NEDは、ハイチの少数エリートと軍部と結びついたグループの活動を支援している。なかでも、彼らの利益を代表するマスコミ・ジャーナリストに資金を供与している。とくにNEDから資金を受けているハイチのジャーナリストは、これまで盛んにAP通信に記事を書いていた。しかし、カナダの独立ジャーナリストのアンソニイ・フェントンの暴露により、以後APはNED寄りのジャーナリストの記事を載せることを辞めた。
 国連、及び西側諸国は、ハイチのLatortue暫定政権が重大な人権侵害を行っており、大量虐殺、平和的な抗議運動に発砲したり、反政府派を強制収容所に入れたりしていることを知らない。Latortueは、暫定政権がハイチの人びとに支持されていないことを知っている。そのために、選挙を4回の延期してきたのだ。
 ハイチに年間5億8,400万ドルもつぎ込んで平和維持軍を派兵している国連のJuan Gabriel Valdes大使はこのことを知らない。
 06年1月24日付けの『ニューヨークタイムズ』紙では、Ginger Thompson記者が、「ハイチのバルデス国連大使やハイチ駐在の西側の大使たちは、国連の任務が失敗であったことを認めようとしない。しかし、すでにハイチのLatortue首相は選挙の結果がどうなるかを知っており、そのために選挙を延期してきた。プレバルが大統領に当選すれば、これまでの国連の努力は水泡と化すであろう」と書いている。
 プレバルはアリスティード大統領の第1期(1991〜軍事クーデタまで)の首相であった。そして彼は1996〜2001年の間大統領であった。
 一方、ブレバルの対抗馬は、Charles Henry Bakerである。Bakerは、金持ちの実業家で、米、仏、カナダがNGOをトンネルにして資金を出している「グループ184」を率いている。これはアリスティード政権を倒したとき、大きな役割を果たした。
 最近の世論調査では、プレバルが34%、Bakerは10%である。ハイチ時間で2月7日に予定される第1回投票で多数を取れなかった場合、1、2位間で第2回投票が行われることになっている。そこで、アリスティードを倒した褒美として得た権力の座を手離すまいとしてエリートと軍部が暴力沙汰を起こすだろうと言われている。
 マスメディアは暫定政権の手中にあるが、Radio Solidarite、Radio Melody FM、Radio Ginen、Tele-Ginenテレビなどの独立メディアが、全土的なプレバル支持の集会やデモを報じている。