世界の底流  
途上国はIMF・世銀・WTOから脱退し、新国際機関を創立せよ
2006年7月30日


 最近、IMF、世銀、WTOの改革についての提案がいくつか出てきたが、ここでは、英国のChristian Aidとベルギーのジュビリー組織CADTMの提案を紹介する。

1. Christian AidのIMF・世銀改革案

 最近、英国教会系のNGO Christian Aidが「Challenging Conditions」と題した報告書を発表した。それによると、IMF・世銀が改革を行い、また経済政策の条件強制を廃止するまで、英国政府は資金供与を停止しろ」というものであった。
 国際社会は、貧困の根絶を最大の課題とすべきだが、IMFと世銀は、自分自身の利益のため、先進国による支配のため、さらに両機関の協同により、MDGsの達成を困難にしている。
 IMF、世銀は、当事者に判断を委ねているとはいえ、「自由化」や「民営化」に見られるように経済政策の条件付けを強制している。したがって、途上国政府は、たとえ国民に不評判でも、IMF、世銀の政策を実施せざるを得ない。
 最も重要なことは、昨年、英政府が「ODAの供与に関しては、パートナー政府に政策上の条件を付けないこと」という宣言に違反している点である。英政府がIMF、世銀に対して、この点の改善を呼びかけたが、それはまったくIMF・世銀の政策を変えるにいたっていない。
そこで、Christian Aidは英政府に対して、以下のことを要求する。

(1)、英政府は、IMF、世銀に対する任意の拠出金の支出を停止すべきである。その資金は、経済条件を付随しないで有効に開発援助を行う多国間組織に拠出するか、あるいは、英国の債務帳消し資金に回すべきである。

(2)、英政府は、その援助金がIMF、世銀の条件に関連していないことを宣言すべきであり、また他の援助供与国に対しても、働きかけるべきである。

(3)、英政府はIMF、世銀の総合的な改革を推進すべきである。IMF、世銀は、条件を付けることをやめ、より正当な、より有効な多国間機関になるように努力すべきである。

2. CADTMの提案

 ベルギーのEric Toussaint CADTM代表は、途上国政府に対して、IMF、世銀、WTOなどのネオリベラリズムの国際機関から脱退することを呼びかけた。
 今日、途上国の保有外貨高は歴史上例を見ないほど増大している。全世界の外貨保有は2兆1000億ドルに中で、中国だけで9,250億ドルに上る。これは米国とEUの保有外貨を合わせたものより大きい。これは途上国が先進国に対して債権者になっていることを意味している。つまり、政治的意思さえあれば、途上国はG8とその支配下にある国際機関と手を切ることができるのだ。たとえば、彼らが途上国に強制している経済の自由化、日用品に対する補助金の廃止、民営化といった経済的条件は、先進国に利益をもたらすだけである。しかし、途上国政府が進んでこのような決断を下すことはない。南の市民の行動だけが、政府を動かすのである。

(1)、途上国政府は、IMF、世銀、WTOから脱退すべきである。その結果、これらの国際機関を解体することが出来る。そして、途上国の保有外貨の半分を投じて、基本的に人間が生きていくためのニーズを満たす、新しい国際機関を創設する。

(2)、南の市民は、非民主的な政府によって生み出された汚い債務が大部分である債務を何回も支払わせられてきた。途上国は団結して、その債務の不払いを宣言すべきである。

(3)、ロシアで開かれたG8サミットに対する抗議デモの弾圧を非難する。

(4)、G8はまったく不当な存在である。CADTMは、同時期にアフリカのマリのガオで開かれたピープルズ・フォーラムを支持し、G8のロジックと闘い続ける。そして、今秋9月」19〜20日、シンガポールで開催されるIMF・世銀の年次総会に向けて大動員をかける。