世界の底流  
ザルカウイとは誰か
2005年10月5日

1)はじめに 

  9.11直後、「オサマ・ビンラディンとは誰か」という論文を書いて、ビンラディンがCIAの申し子であることを暴露したカナダのトロント大学Michel Chossudovsky教授が、今年6月11日、彼が所長を勤めるグローバリゼーション調査センターのホームページに載せた論文を抄訳する。
  この論文は、イラクでのアルカイダ(基地の意味)のリーダーとされ、イラクの“テロ”事件の黒幕として米軍から2,500万ドルの賞金をかけられているアブ・ムサブ・アルザルカウイの真実を暴露している。すべて、これまで、公に発表された記事を検証して、組み立てていくのがChossudovsky教授のやり方だ。それは;
  「米国の情報機関の手法は、テロリスト組織を自ら創造し、一方ではそのテロ組織について警告を出す。そして、これらテロ組織を追跡するためと称して、何百万ドルものテロ狩りプログラムを作成する。
  反テロリズムと戦争プロパガンダは一体だ。まずマスメディアに偽情報を流す。そして、テロの警告は真実味を帯びなければならない。目指すところは、テロ組織がアメリカの敵にすることである。そしてアメリカの世論を戦争支持に固めることにある。
  まず、テロに対する戦争は「正義の戦争」だと宣伝する。この正義の戦争は、すべてを善か悪かに分ける。当然テロの指導者は悪である。ブッシュ政権に反対するインテリや反戦グループですらこの正義の戦争論を支持している。「あらゆる戦争に反対するが、国際テロにも反対だ」という。
 テロの脅威を訴えるには、生生しいイメージを売り込むことが必要だ。それゆえ、テロリストの顔を作る必要がある。したがって、イラクの「テロ・キャンペーン」に、ビンラディンのもう1つの幽霊であるアブ・ムサブ・アルザルカウイを創造したのだ。そして、その顔を毎日、ニュースに流す。
  以上がChossudovsky教授の分析方法である。

  ザルカウイはテロの黒幕として世界の世論に売り込まれた。その結果今日ではビンラディンは霞んでしまったようだ。米国務省はザルカウイに2,500万ドルの賞金をかけた。市場価値ではビンラディンと同額である。しかし皮肉なことに、FBIの容疑者リストには載っていない。

2)ザルカウイとアルカイダとの関係

  しばしば、ザルカウイはビンラディンの側近で、複数の国でテロ攻撃を行っていると描かれている。一方では、同じニュース・ソースからでているのだが、ザルカウイはアルカイダとまったく関係なく、独立しているとも書かれている。また、しばしば彼はビンラディンのリーダーシップに挑戦しているとさえ言われている。
  ザルカウイの名が世界のメディアに毎日登場するようになったのは2004年の初頭からである。
  ビンラディンはサウジの有力なビンラディン家の一員である。ビンラディン家は古くからブッシュ親子とビジネス関係を持っている。ビンラディン自身もソ連軍のアフガン侵略の際、CIAにリクルートされ、ムジャヒディーンとして闘った。つまり、ビンラディンには確固たるCIAとの関係やビンラディン家とブッシュ親子との関係を示す資料が多くある。これは米国の取っては都合がまことに悪い。
  CNNはザルカウイをアルカイダから独立した「一匹狼」だと評している。しかし、驚くことに、CNNは、この一匹狼を、イラクだけでなく、複数の国にあって、西ヨーロッパでも活動しているという。さらにザルカウイは米国本土でもテロ攻撃を準備しているといわれる。
  彼は同時にあちこちの場所にいることになっている。米国のナンバーワンの敵、変装が上手で、パスポートの偽造の名手になっている。この一匹狼は米国の情報機関のもっともお気に入りである。
  2003年2月18日の『ナショナル・レビュー』誌にはザルカウイはアルカイダの生物化学の技師と紹介した。

3)イラン・コネクション

  ザルカウイの名前が世に知られたのは、1999年12月、アンマンのラディソン・SASホテルでのミレニアムの祭りの爆弾未遂事件であった。そのときの彼の名はアハメド・ファヂル・アルカライリであった。
  2002年3月24日付けの『ニューヨーク・タイムズ』紙は、米CIAの高官が語ったところによると、2001年末、米軍のアフガン占領直後、ザルカウイはアフガニスタンからイランに逃げた。そこで、イランの保守派情報機関によって保護され、海外の米国人の暗殺の任務が与えられた、と報道している。イランでは97年に穏健な改革派ハタミ大統領が誕生しても、保守派が情報機関を支配していた。そして、2002年には、ザルカウイはアフガンの暫定政権の不安定化とパレスチナ人の武装蜂起を煽る役目を与えられた、という。そして2002年2月には、ザルカウイは、イスラエル領内で、爆弾テロを準備したと言われた。

4)アラブの「紅はこべ」

  米国のネオコンに近い『ザ・ウィークリー・スタンダード』誌2004年5月24日号によれば、ザルカウイは、2004年5月11日、米国人ニコラス・バーグ誘拐殺人に関与していた、と報じた。くしくもこれは、5月6日に暴露されたアブグライブ刑務所での米軍の捕虜虐待事件を米議会が追求しようとしていた日と同じ日であった。
  バーグ殺害事件では、米CIAが殺害のビデオ・テープを手に入れたというが、CIAのアラビア語の専門家とCNNの専門家は、まったく違う分析をしている。CNNの専門家はザルカウイのアクセントではない、と言っている。
同誌は、さらにザルカウイが、同年3月11日のマドリッド駅爆破事件、同じ月にイラクでのシーア派モスク爆破事件、そして同年4月24日のバスラ港での石油施設に対する自爆テロにも関与したという。
  さらに、2004年4月28日、CNNはザルカウイがヨルダンでヨルダン暗殺と米国人観光客を殺害する陰謀に関与していたと放送した。逮捕された容疑者の中のアズミ・アル・ジャヨウスイがザルカウイから17万ドルを受け取り、その中から20トンの爆薬を購入したと白状したと、報じている。
  イラクでは、ザルカウイはシーア派とスンニー派の間の内戦を煽っているという。しかし、これは米国の情報機関の「Divide and Rule」政策に沿ったものではないか。これはイラク人の米軍にたいする抵抗運動を弱めるものだ。
  CIAは300億ドルの予算を使いながら、ザルカウイについては何もわかっていない。確かに1枚の写真はあるが、『Weekly Standard』誌2004年5月24日号によれば、背の高さも、体重もわからない、という。「ザルカウイはあまりにも秘密が多くて、彼と一緒に活動しているものですら、よく知らない、という。
  CIAが提供する偽情報を最もよく使っているのは、CNNである。テロ事件が発生すると、直ちに、「確認されていないが、この事件の黒幕はザルカウイ」、と報じる。その2〜3日後には、CNNは警察や軍の情報として、あたかもそれが事実であるかのように報道するのだ。また、CNNはイスラムのウエッブサイトや謎のビデオやテープを引用する。これら情報源についての確認は一切しない。

5)パウエルの国連安保理のスピーチ

   パウエル国務長官は、2003年2月5日、国連安保理で、イラクの大量破壊兵器の存在についての有名なスピーチのなかで、「アルカイダはCIAの創造物であり、ビンラディンとザルカウイはともにソ連軍のアフガン侵略と戦うためにCIAにリクルートされた」と語った。
  「イラクの保有する大量破壊兵器はテロリストの手に渡る可能性を否定できない。イラクとアルカイダのテロ・ネットワークとの関係は古典的なテロ組織と近代的な殺人方法との結合とも言える。イラクはザルカウイが率いる恐ろしいテロ・ネットワークを匿っている。ザルカウイは、ビンラディンの側近であり、アルカイダの幹部である、とパウエル長官は安保理でスピーチした。
  ザルカウイはパレスチナ出身のヨルダン人である。10年前にアフガニスタンで戦ったことがある。2000年に再びアフガニスタンに帰ってきたとき、テロ訓練キャンプを音連れている。かれは毒薬の専門家であり、そのキャンプは毒薬製造のキャンプであった。米軍がタリバンを追放したとき、ザルカウイはイラクに移動した。そこで、イラク東北部(クルド人地域)に毒薬と爆弾専門のテロリスト・キャンプを建設した。(しかし、ABCのリポートでは、米軍はここを占領したとき、大量破壊兵器を発見できなかった)この毒薬とはリシンであった。
  イラク東北部はフセイン政権の支配の及ばない地域であった。そこにはアンサー・アルイスラムという過激派のキャンプがあった。ここにはフセイン政権のスパイが送り込まれていて、ザルカウイの逃げ込み場所に手引きした。これは、サウジアラビアに潜入しようとしてアルカイダのメンバーを逮捕してことによって、この事実が判明した、とパウエル長官は安保理で証言した。
  それはアブ・アティヤと呼ばれる男でアフガンのザルカウイのテロ訓練キャンプを卒業し、2001年には、北アフリカの少なくとも9ヵ所の過激派と接触し、ヨーロッパでも毒薬と爆弾の製造を教えた、という。2002年以来、このネットワークはフランス、英国、スペイン、イタリアに存在することが判明している。そしてこのグローバル・ネットワークではこれまでに116人を逮捕している。この逮捕者からの証言でザルカウイの全貌がはっきりした、と語った。
  2003年2月9日付けの英紙『オブザーバー』は、このパウエル長官の証言を覆した。
米軍によってアンサー・アル・イスラムの基地を視察した同紙記者は、「そこにはパラフィンと食料油の匂いがした、そして、見つけたのは、刻んだトマトだけ。パウエルのいう軍事基地ではコックが残していった壁に立てかけたカラシニコフ銃が一丁だけあった。アンサーのスポークスマンであるモハメッド・ハサンは「われわれはイスラム教徒の一派に過ぎない。アスピリンももっていないのに、どうして毒薬や大量破壊兵器が作られるだろうか」と語った。
  『ニューズウィーク』誌2003年2月24日号では、明らかにCIAがリークしたと思われる記事が報道された。「2003年3月31日までに、59%の確率で米国本土内において大量破壊兵器による攻撃が起こる」とし、そこには、ザルカウイの写真が大きく載っていた。