世界の底流  
アジア投資銀行設立に日米が反対
2005年8月15日


 さる5月18日、バンコクで開かれていた国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の年次総会において、「アジア投資銀行」の設立提案が出された。これは、米国と日本の猛反対に会い、採決を見送られた。
 ESCAPにはアジア太平洋地域の48カ国が加盟している国連の地域機関で、万国に本部を置く。ここで提案されたアジア投資銀行とは、これまで、世界銀行のアジア版であるアジア開発銀行に対するオルタナティブな開発資金の融資機関として国連によって提案されたものであった。
 アジア開発銀行は、1966に設立され、マニラに本部を置き、歴代の総裁は日本人である。年間、60億ドルのインフラ開発融資を行ってきた。このほか、ODAや民間投資でもって年間約440億ドルの資金がインフラ建設資金としてアジアに流れている。
 しかし、民間資金は、97年のアジア通貨危機以来、急減している。たとえば、97年には400億ドルであったのが、2003年には115億ドルであった。直接投資は、順調に伸びているのだが、インフラ建設投資は減っている。
これは、急成長を遂げているアジア地域において、インフラ建設は急務であることを示している。アジア投資銀行の設立を提案したKim Hak-SuESCAP所長は、「アジア開発銀行は、このアジアのインフラ建設の資金を賄うことができない。この地域には新しい開発融資の金融機関が必要である」と述べた。
 また今年のESCAPの議長を務めるカザフスタンのKassymshomart Tokaev外相 は、記者会見において、アジア投資銀行の構想は非常に興味のあるものである。私は反対するものが言うように、これはアジア開発銀行と重複するものではない、と思う」と語った。
アジア投資銀行の構想は、ヨーロッパの経験に基づいている。ヨーロッパには世銀系のヨーロッパ開発銀行と同時に、ヨーロッパ投資銀行がある。世銀系のアジア開発銀行は、加盟国の政府だけに融資しており、民間企業のプロジェクトには融資できない。また、大陸横断のハイウエイ、鉄道といった国境を越えた巨大なインフラ建設に、フルに融資することが難しい、という制約がある。一方、アジア投資銀行は、民間企業と共同のプロジェクトに融資することも出来る。
 アジア投資銀行が、将来予想される融資物件として想定されているのには、当面、アジア・ハイウエイ建設プロジェクト計画がある。これは日本からはじまって中央アジアのジョルジアにいたる14万キロのハイウエイであり、32のアジア諸国を貫くものである。一方アジア開発銀行は、その1部分であるベトナム、ミャンマー、タイ、中国を結ぶハイウエイ建設に対する融資に合意している。 
 アジア開発銀行は世銀と同様に、出資額が大きい国が大きな発言力を持っている。したがって、米国と日本が支配している。一方、国連が提案しているアジア投資銀行は、1国1票という国際民主主義に基づいている。
 ESCAPは、来年、インドネシアで開催される年次総会に向けて、このアジア投資銀行設立に対して、より多くの支持を集めていく。