世界の底流  
米国、日本の「グローバル・エイズ基金」への拠金
2005年6月29日



1. 米下院小委員会が4億ドルをグローバル基金に拠出を決議

 ブッシュ大統領は、アフリカに対する援助を3倍に増やすと約束した。しかし、かれは非常に問題のあるプログラムへの拠出を増やしただけで、「グローバル・エイズ基金」に対しては、さる2月、増額を約束した。
 6月16日、Jim Kolbe議員を議長とする下院外務小委員会は、「グローバル基金」に4億ドルの拠出を決定した。この額はブッシュ大統領が議会に要請した3億ドルよりも多かったが、05年度分よりも3,500万ドル少ない。これまでの贈与分の残りを加えると、米国の2006年度の基金への拠金は9億3,000万ドルになる。
 この決議が「グローバル基金」に与える影響は大きい。なぜなら2006年度は、基金の需要は大きく増えることが予想されるからだ。
 グローバル・エイズ同盟のザイツ代表は「米国は公約を破った。基金の運営に大きな支障をきたすだろう。一方では、米国はエジプトに対して18億ドルの援助を行った。他方ではMDGsに対する支援を後退させている。」と非難した。
 とくにザンビア、エチオピアなどで、有効なエイズ政策が打ち出されているのに、基金の資金が不足している。また、ロシア、東欧、中国、インドなどエイズが急速に蔓延している国ぐにでも重大な影響を及ぼす。
 フランス、カナダ、オーストラリアなどが2006年度の基金への拠出を劇的に増やしたにもかかわらず、米国の減額は他の国に与える影響は大きいだろう。
 Richard Feachem基金事務局長は、TRIAGE、すなわち、直接エイズ患者の生命救済策も限定せざるを得ないと述べている。このことは、血液安全プログラム、ボランタリ・カウンセリングとテスト・プログラムといった包括的なエイズ対策を放棄せざるをえない。また、「Round Five」と呼ばれる追加の資金供与も困難となる。このことによって50万人のエイズ患者が治療を受けられなくなる。

 国別に、影響を受ける内容;

エチオピア これまで行ってきた血液安全プログラム、ボランタリ・カウンセリングとテスト・プログラム、母子感染防止プログラム、性の教育などが不可能になる
ザンビア 教会保健協会が信徒に対して行ってきたエイズ対策、ボランタリ・カウンセリングとテスト・プログラムなどが不可能になる。
ハイチ ボランタリ・カウンセリングとテスト・プログラムでは30万人が対象になってきた。
フィリピン リスク地域と見なされた都市4ヵ所にあるボランタリ・カウンセリングとテスト・プログラムが不可能になる。
タイ 若者を含むエイズ感染危険度の高い層に対する予防措置、あるいは学校、職場でのHIV/AIDS活動家支援などが不可能になる。
 また100万人のエイズ孤児支援の不可能になる。
 マラリア、結核などの対策も影響を受ける。  

2.「グローバル・エイズ同盟(GAA)」は日本政府に対して、国連エイズ基金に対する拠金をフランス並みに増やすことを要求した。

 小泉首相は、日本がアフリカへの援助を倍増すると公約した。しかし、彼はエイズ基金にたいする援助については言及しなかった。また谷垣財務相は「援助の有効性を高める」といっているが、GAAは「エイズ基金への拠出ことこそが最も有効性に高い部門である」と言っている。
6月19日、フランスは2006年度、2億7,300万ドルをエイズ基金に拠出すると発表した。日本は人口ではフランスの2倍であるにもかかわらず、2005年度にはたったの8,100万ドルの拠出にとどまっている。
 GAAが日本の拠金の増額にこだわるのは、米国政府が、「米国の拠金が全体の3分の1」ときまっているからであって、日本が増やせば、その分だけ米国の拠出金がふえることになる。
 日本を含めたG7政府が、「2010年までに、すべての人がHIV/AIDSの治療をうけることが出来るようにすることに合意している。