世界の底流  
UNCTADがLDCsの貿易支援策を発表
2005年8月27日


 05年7月のグレンイーグルスでのG8サミットでは、アフリカをはじめとする貧困国(LDCs)」の債務帳消し、ODAの増額、そして貿易支援が3大テーマであった。G8は債務帳消しとODA増額については具体的な目標値と達成の時期を設けた決議を行ったが、貿易については、一般的な市場開放を謳ったにとどまった。
 一方、8月、ジュネーブのWTOの一般理事会では、先進国はLDCsに対する市場開放を義務づけることに抵抗して、決議にいたらなかった。
 
 同じくジュネーブに本部を置く国連貿易開発会議(UNCTAD)は、LDCsに対する包括的な貿易政策についてのペーパーを発表した。それは「LDCsに対する貿易マーシャル計画」と呼ばれる。
 マーシャル計画とは、第2次世界大戦後に米国が戦争で破壊されたヨーロッパの復興のために行った大規模な援助計画であった。このときの教訓を学んで、先進国が、LDCsに対して、ドーハ開発ラウンドで約束した貿易支援と、国連ミレニアム開発ゴールの達成
を支援するための計画書である。

 UNCTADの計画書の中身は、3つの柱から構成される。

1) 第1の柱は、先進国がWTOにおいて、LDCsに対して、「義務づけた形で関税
なし、数量制限なし(DFQF)協定」を行うことである。つまり、先進国はLDCsからの輸入品に対して、完全に市場開放を行う、ということである。さらに先進国は、LDCsが先進国の市場に参入する際のさまざまな基準をクリアしなければならないときの障壁を克服できるように支援する、ことも含む。
 UNCTADの計算では、DFQF協定だけで、LDCsに80億ドルの利益をもたらし、さらに毎年、年間64億ドルの輸出増をもたらす。現在、LDCsの輸出額は世界貿易の0.68%に過ぎない。

2) 第2の柱は、サービス部門の自由化パケージである。これはLDCsの最優先分
野、とくに「人の移動」を可能にする対策が含まれる。これによって、LDCsは年間100〜200億ドルの利益が入る。

3)  第3の柱は、LDCsに対する10億ドルの「貿易援助基金」の創設である。この基金によって、LDCsは貿易改革を行う、貿易に必要なハード、ソフトなインフラと供給能力の整備を行う、そして、商品、製造、流通面での競争力を高めることが出来る。

 UNCTADによれば、現在LDCsの置かれている状況は、大戦後のヨーロッパに似ているという。そこで、同じようなマーシャル計画が考えられたのであった。それによると、年間、貿易を通じて625億ドルの追加の資金を必要としていることになる。「LDCsに対する貿易マーシャル計画」は、そのうちの多くの資金を調達できる。

 UNCTADの貿易マーシャル計画には、大きな誤りがある。それはほとんどのLDCsは限られた農産物、鉱産物という一次産品の生産と輸出に依存しており、これら一次産品の市場価格が非常に安いということである。70年代、UNCTADはこの一次産品の価格を高値安定させるために、「Common Fund(共通基金)」の創設を決議した。この基金は、当時すでに何十億ドルという単位が必要だとされていたが、先進国が拠出の公約を実行しなかったため、失敗に終わったことがあった。
 UNCTADは10億ドルという貿易援助基金の創設を提案しているが、なによりもまず、この一次産品の価格の低下を防ぐということに手をつけるべきである。