世界の底流  
世銀の総裁交代をめぐって
2005年6月29日

 

1. 世銀総裁のお別れ会

 今年6月に世銀総裁は交代した。ブッシュ大統領によって、ネオコンのウォルフォビッツが新総裁に任命された。一般的に言って、これまでの世銀が医療と教育に力点を置いてきたのに対して、今後は成長を重視すると予想されている。
しかし、ウォルフォンセン前総裁の10年の任期中の功績をめぐって、ワシントンの市民社会の間では、ある種の対立が起こっている。
それは、ワシントンに本拠を置く一部のアドボカシイNGOが、ウォルフォンセンが市民社会との対話を重視したとして、5月26日、彼の功績を称える「お別れ会」を企画したことに始まった。
50 Years is Enough Networkが呼びかけて、これに反対するNGO署名を行った。

(1)この10年間、世銀は、環境を破壊するダムやパイプラインなどの巨大プロジェクトを進めてきた。
(2)国営企業ばかりでなく、水、教育、医療といった貧しい人びとにとって死活的な公共サービスの民営化、自由化、規制緩和を促進してきた。
(3)構造調整プログラムによる緊縮政策を押し付け、経済を停滞させた。失業が増え、国内産業の発展を妨害し、格差を増大させ、環境を破壊した。
(4)彼の市民社会との対話、パートナーシップについては、3大プロジェクトに失敗している。
その第1は、構造調整プログラムの現地でのインパクトのNGO/世銀の共同調査プロジェクト、第2は、巨大ダムの環境上のインパクトの調査、第3は、石油・鉱山開発プロジェクトの環境上のインパクト調査、であった。この3つとも、ウォルフェンソンが、世銀のスタッフの調査結果さえも信じようとせず、拒否したことによって、失敗に終わった。

2. バングをラデシュで世銀に外交特権

 バングラデシュ議会は、5月15日、議会に対して世銀に法的免除権を与える「2005年国際金融機関(修正)法案」を提出した。これは昨年政府10月31日、政府が議会に提出したもので、1972年の国際金融機関法令の修正である。この修正案は、世銀のスタッフは、どのような過ちを犯しても、バングラデシュ国内では起訴されないという外交特権を与えるという内容である。
 世銀にこのような外交特権を与えているという例は世界ではない。
 野党、NGOs、労組などは悪法だとして、こぞって反対している。すでに「世銀の免除法に反対する同盟」が設立された。

3. ニジェールでIMFが押し付けた付加価値税の導入に反対

 ニジェールでは、ミルク、砂糖、小麦粉などの日用食料品に19%の付加価値税(VAT)が導入された。これに対して、30の市民団体が「高い生活費に反対する連合」という幅広い運動体が設立された。ニジェールでは1,100万人の人口のうち60%が1日1ドル以下の貧困にある。
 3月末、政府は連合の指導者5人を2週間にわたって逮捕した。5人は4月6日に釈放されたとはいえ、国家に対する反逆罪の容疑は残っている。もし、裁判に掛けられて有罪となると、5人は10年の投獄となるだろう。
 付加価値税の導入は、政府の税収を高めるために、1月に政府がPRGFの融資を受けるためにIMFと交わしたLetter of Intentに沿ったものである。